行方しれず 第十三話 ドーマ④
こうこうとあかりのついた家に戻った。
ドーマがいなくなってから、誰もいない家が嫌で、家中の電気をつけて過ごしている。窓際の椅子には荷物を積み上げ一番うえに帽子を被せている。こうしておくと外から見ると、誰かいるように見えるからだ。
そして、起きている間はずっとラジオを流していた。
母がリビングに行くと、ドーマの好きだった曲が流れていた。
90年代のオルタナティブ・ロックだ。まるで子どもらしくない子だった。
ラジオにノイズが入った。
急に、家中の電気が消えた。
「きゃっ」
手探りでテーブルの上のスマホを探した。
「あ、あった」
手に触れた途端、落としてしまった。
しゃがんで探していると、玄関の方でコトリと音がした。
家鳴りのするような古い家ではない。
築浅の鉄筋コンクリートのマンションである。
スッスッスと何かが近づいてきた。
母のすぐ近くで止まった。すぐ近くに体温を感じる。
スマホが手に触れた。
急いで電源ボタンを押す。
暗闇が急に明るくなった。
その途端、何者かにスマホを振り落とされた。
母は息を殺した。
気配がする。
「ただいま」ドーマの声だ。
「ドーマ?」
頷く気配がした。
暗がりに眩しい光がついた。
色の白く整った顔のドーマがそこにいた。
「おかえり、ドーマ」
「ママ、ただいま」
ドーマに限りになく近い別のものの気配だった。
ドーマからスマホを受け取り、ブレーカーを見にいった。
スイッチをONにすると家中の明かりがついた。
「ドーマなの?」
「そうだよ、どうしたの。僕のこと忘れた?」
「まさか。どこ行ってたの」
「それはいえない。でも、無事に戻ってこれたよ、ママ」
「よかった。寝ても覚めてもドーマのことばかり考えていたわ。さ、お腹空いてるでしょう、何か作るわ」母はいそいそとキッチンに向かった。
「僕のいない間に、何か変わったことなかった?」
「ないわ」
ドーマはなんでも1人でしようとした。
「今日は疲れてるでしょう。早く寝たほうがいいわ」
ドーマは階段を降りて自分の部屋で寝た。
夫から、「ジュリがいない」とメールが入っていた。
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