【みやま市】時空を超える低山ハイク。女山(ぞやま)の「神籠石」と防人たちの記憶に触れて。

福岡県みやま市にある「女山(ぞやま)」。
「女山」と書いて、読み方は「ぞやま」。 実はこれ、かつてこの山が神聖な場所として「御山(おんやま)」と崇められていた名残だといわれています。
「御山(おんやま)」が長い年月をかけて転じ、いまの「ぞやま」という不思議な響きになったという説。この山が単なる遊び場ではなく、古来より特別な敬意を払われてきた証でもあります。
標高200mに満たない低山ながら、ここはかつて日本の運命を左右した国防の最前線だったと想像します。今日は3本のレンズを携え、駐車場に降り立った瞬間から始まった1400年の時を刻む旅を記録します。
1. 駐車場で出会った冬の結晶。足元の小さな物語
車を停め、外に出るとピンと張り詰めた冷たい空気に包まれました。 ふと足元を見ると、名もなき雑草が白く縁取られています。今日最初の被写体は、駐車場横に降りた霜でした。


Lens: EF100mm F2.8L Macro IS USM 100mmマクロで覗くと、肉眼では見えないほど繊細な氷の結晶が、葉の輪郭を美しく際立たせていました。冬の山歩きの始まりを告げる、静かで力強いプロローグです。
2. 静寂の先へ。幻想的な「竹林」のトンネル
登山道に入り、まず迎えてくれたのは女山名物の美しい竹林。ここはRF16mm F2.8 STMにレンズを交換します。








Lens: RF16mm F2.8 STM 超広角ならではのパースで、天高く伸びる竹の迫力を。空を覆う緑の屋根が、一気に日常から歴史の深淵へと引き込んでくれます。
3. 山道を彩る、見頃の「サザンカ」
竹林を抜けると、冬の山を鮮やかに彩るサザンカが出迎えてくれました。再びEF100mmの出番です。






Lens: EF100mm F2.8L Macro IS USM 駐車場で撮った霜の白さとは対照的な、生命感あふれるピンク。中望遠のボケ味が、その色彩をより一層際立たせてくれました。


4. 「白村江」の衝撃。石が語る国防のミステリー
女山の真の姿は、山中に点在する巨大な「石」たちが教えてくれます。ここは機動力のあるRF28mm F2.8 STMで切り取っていきます。
古代豪族が眠る「山内古墳群」
まずは6世紀後半の山内(やまうち)古墳群。

Lens: RF28mm F2.8 STM 自然石を積み上げた石室。パンケーキレンズの自然な画角は、当時の人々が感じていたであろう「祈りの空間」の距離感をそのまま写し取ってくれます。
国難に立ち向かった「女山神籠石」
しかし、そのわずか100年後、山の役割は劇的に変わります。 663年、日本・百済連合軍が唐・新羅連合軍に大敗した「白村江(はくすきえ)の戦い」。未曾有の危機に直面した朝廷は、九州各地に巨大な防衛網を築きました。
(注意:女山神籠石の石塁や城跡の公式記録が残っておらず、不明の城跡です。)

Lens: RF28mm F2.8 STM この整然と並ぶ女山神籠石は、まさにその遺構。大宰府を守る「水城」や「大野城(四王寺山)」、「基肄城(基山)」と同時期に整備された、一連の国防ネットワークの一部と考えられています。
5. 防人(さきもり)たちの視線を追って
かつてここには、遠い東国から徴兵された兵士「防人」たちが詰めていたと想像しています。 有明海を睨み、異常があれば「のろし」を上げる。彼らが見たであろう水平線をRF28mmのレンズでのぞくと、1300年前の緊張感がファインダー越しに伝わってくるようでした。

登山を終えて
駐車場で見つけた小さな霜の結晶から始まり、白村江の戦いという壮大な歴史まで。 レンズを通して見る女山は、歩くほどに当時の人々の熱量と、静かな時の流れが交差する、唯一無二の場所でした。
6. エピローグ。ひっそりと香る「蝋梅」
無事に下山し、駐車場のわきで気品のある香りにふと足が止まりました。 そこには、ひっそりと咲く蝋梅(ロウバイ)の花が。

Lens: EF100mm F2.8L Macro IS USM 鼻をくすぐる、気品のある甘い香り。 霜に始まり、戦いの歴史を辿った一日の終わりに、この優しい香りは何よりのご褒美でした。

使用機材メモ:
RF16mm F2.8 STM:竹林の圧倒的なスケール感を。
RF28mm F2.8 STM:古墳や神籠石の質感を、目で見たままに。
EF100mm F2.8L マクロ IS USM:足元の霜、冬の花
