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第57号(2025年9月19日)産地偽装ドローンの闇、そしてデジタル民生技術による新たな市街戦(2025年7月期)

 みなさんこんにちは。今号も次号に引き続き2025年7月期の話題を中心にご紹介します。次号は9月26日予定です。


プーチン大統領を守る秘密のFPVドローン

概要
Defence Blog に2025年7月28日掲載(記事本文)
原題 "Putin’s guards seen with new anti-drone weapon"

要旨
 
サンクトペテルブルク訪問時、プーチン大統領の警護部隊員が新型の対UAV用FPVドローンを携行しているのが目撃された。要員は機体を人目から隠そうとしたが、機体の大型フレームと特徴的なX字型レイアウトのため、秘匿は難しかったとされる。

プーチンのSPが保持していた要撃ドローン

 大型のX字型四発フレームにTV/熱画像の二系統シーカーを備え、低視程や夜間でも目標捕捉が可能とされる。運用は隊員が初期照準を付け、ロック後は自律追尾で迎撃する方式で、通信は標準周波数ではなく専用の指揮・テレメトリ回線を使用し、EW/SIGINTによる操作者位置の暴露を避ける設計という。
 FSOの公式確認はないが、都市部での小型無人機脅威の高まりを受け、近接警護に短距離・携行型迎撃手段を導入し始めた可能性を示す。ウクライナのロシア本土深部へのFPV攻撃を背景に、クレムリンが国内のドローン脅威を即時かつ現実的と見なしている表れといえる。

同じ要撃ドローンの画像

コメント
 ドローンと要人警護というと2018年に発生したベネズエラ・マドゥロ大統領の暗殺未遂事件を思い出すが、ドローンによる暗殺というのは決して夢物語ではない。その時と比べるとドローンの性能は更に向上しており、FPVドローンが戦場を飛び交うようになっている。以上のことから考えると、ドローンによる暗殺を警戒するのは当然であろう。
 今回は迎撃用のFPVドローンを携行しており、ドローンをドローンで迎撃するというアイデアは悪くない。大きさ等の違いはあるものの、第32号で取り上げたように、ウクライナはロシア軍の偵察ドローンをドローンで迎撃している。しかし運用を考えた時に迎撃ドローンを携帯した要員が下に待機する必要があるのだろうか?見通し線や通信のことを考えると、高所に配置する方が理にかなっているように思われる。もしかしたら能力をみせることで暗殺を抑止しようとしたのかもしれないが・・・(以上、NK)

 確かに数は少ないが、ロシア側もウクライナの対空ドローン戦術を模倣したと思われる戦果映像がいくつか公開されており、こうした対空ドローンが実働レベルであってもおかしくはない。
 他方でこれを要人警護に使う意義については疑問符が残る。両軍の戦術は中型以上の固定翼の偵察ドローンや自爆ドローンを標的としたものでFPVを撃墜した例はない。将来的に可能になるかもしれないが、現時点では数mを超える上に機動性の低い固定翼ドローンに体当たりすると違い、数十cmしかない上に機動性に富むFPVに自爆の体当たりするのは不可能に近いと思えてしまう。
 しかしながらプーチンを固定翼ドローンが遠路襲うとは考えにくいし、それは都市外周で対処すべきものであろう。どちらかといえば暗殺者はFPVを使う公算が高いと考えると果たして意味があるのか?そもそも弾頭には爆発物が積載されており、それを護衛対象の周辺で振り回すことの方が弊害が大きいと思えてしまう。
 しかしそれでもな本報は、それだけプーチン政権がドローンの脅威に神経質になっていることを示している。また機体の外装が3Dプリンタで作られているように見えることも興味深い。(以上、部谷直亮)

名前を変えたDJIドローンが米国市場に侵入中?

概要
DroneXLに2025年7月22日掲載(記事本文)
原題 "SkyRover X1 Drone Exposed: Security Experts Uncover Direct Links to DJI Infrastructure"

要旨
 セキュリティ研究者ケビン・フィニステールらがSkyRover X1のスマホアプリを逆解析し、DJI FlySafeへの参照URLや“AASKY”ドメインなどDJIインフラ直結のコードを確認した。SkyRover X1はDJI Mini4 Proに酷似していることで話題になっていた。

SkyRover X1 出典 Amazon
DJI mini 4 Pro 出典 Amazon

 協力者のコンラッド・イトゥルベもDJI系ソフトで見られるsecneo方式のパッキング類似を指摘し、X1は実質的にDJI Mini 4 Proのリブランド(OEM切替)との見立てを示した。アプリのUIもDJI Flyアプリに酷似している。機体仕様も250g未満、前後・下面の障害物検知、1/1.3型センサーの4K/60p、伝送約15km、ActiveTrackやウェイポイント等の知能機能とMini 4 Proに酷似している。
 背景には米国での中国製ドローン規制強化があり、2025年国防権限法(NDAA)における中国製ドローンへのレビューを求めており、その結果として発売禁止の可能性が示唆されている。加えてDJI製ドローンの店頭在庫も逼迫しており、DJI派生製品がブランドを変えて流通する動きが見られる。総じて、X1はDJI由来である可能性が高く、米国の規制回避やデータ接続の透明性が課題となる。

コメント
 
技術的な背景はケビン氏と関係浅からぬ量産型カスタム師のコーナーに任せるとして、DJIがアメリカ市場に拘り、ここまでする理由を考察したい。
筆者はSkyRoverX1の実物を手にしてはいないが画像を見る限り、黄色いDJI Mavic Mini4そのものだ。
 外観の黄色も着色ではなく色のついた原料を使い射出成形するなどDJI社の生産工程に入り込んで生産されているのは確実だ。単にOEMといえばそれまでだが、パテント管理に極めて煩いDJI社がOEM生産を引き受けるには相当の理由があるのではないだろうか。
 例えば、表向きアメリカ市場での販路を断たれる事への回避策と思わせつつアメリカ国内でDJIの機体の使用を継続する事を狙っているようにも見える。これは本Noteで紹介してきた中国人留学生によるアメリカ国内の軍施設への不審ドローン侵入事件で逮捕された例を見ても、DJIのドローンが使用していた事を考えると不自然ではない。
 揶揄されようとも強引にDJIのOEMブランドの販路を確保しておけばスパイ活動の為のツールが現地調達可能であることに変わりはないのだ。この動きをアメリカ政府が見過ごすわけはなくどのような対応をするか見物だろう。
 一方でDJIが当たり前に流通しDJIの定めたレギュレーションを当然の如く遵守する日本では中国のAutelRoboticsによるOEM品と思われる謎のドローンを国産と称して流通する動きを見かける。また防衛省自衛隊に出入りする業者の中にもAutelRoboticsのドローンを扱っている業者を確認している。
 日本はDJIやAUTELなど中国製ドローンのアクティベーション、アップデート、機体制御などに起因する同社サーバとの通信による情報流出のリスク以外にも視野を広げ、国やメーカーの真意を見定める事が急務だろう。
(現代戦研究会技術顧問/平田知義)

メキシコ麻薬カルテルがウクライナの前線でFPVドローンを学習

概要
The Warzoneに2025年7月30日掲載(記事本文
原題 ”Cartel Members Fought In Ukraine To Learn FPV Drone Skills: Report”

要旨
 ウクライナで効果を上げるFPV攻撃ドローンの戦術を学ぶ目的で、メキシコの麻薬カルテル構成員がウクライナ国際軍団に志願している疑いが浮上した。
 メキシコ国家情報センター(CNI)がウクライナ保安庁(SBU)に対して国際軍団に参加しているメキシコ人義勇兵の一部がFPVドローンの運用について知識を持ち帰るために参加している警告したという。警告を受けSBUと軍情報総局(GUR)がスペイン語話者義勇兵やGUR配下のFPVドローン部隊を捜査している。また当局はコロンビア革命軍(FARC)が関与している可能性も調査中という。
 メキシコではこの数ヶ月間の内に、麻薬カルテル同士の抗争でFPVドローンを互いに使用していることが確認された。FPVドローンは現在、メキシコ中西部沿岸部のハリスコ・ヌエバ・ジェネラシオン(CJNG)とシナロア・カルテルとの間の戦争で使用されている。
 ラテンアメリカ問題、麻薬取引/組織犯罪を専門とするステファノ・リトンデール氏は2025年3月頃、ナヤリット州の町イクストラン・デル・リオの近くで比較的無傷のFPVドローンが発見されたと指摘し、CJNGがシナロアのカルテル派閥であるマイト・フラコに対してFPVドローンを使用した攻撃に失敗したというものだと説明した。
 その後FPVドローンによる攻撃動画が観察されている。「CJNGは間違いなく機能を近代化しており、このFPVの使用は重要な第一歩だ」とリトンデール氏は指摘する。能力を向上させたカルテルは装甲車に対する攻撃や、窓から突入させる暗殺任務に投入するかもしれない。SBUは「ウクライナがFPV戦術の拡散源になり得る」と懸念している。

メキシコの麻薬カルテルが使ったとされるFPVドローン

コメント
 以前第25号で取り上げたように、麻薬カルテルは以前からドローンを運用していた。そんな彼らがFPVドローンをウクライナの前線に人を送って学習しているかもしれないという疑惑の記事である。
 この戦術の拡散はもはや止められない問題かもしれない。もちろん記事で指摘されているように、直接的に教訓を得た可能性がある。しかしミャンマーでの事例があるように、公開された動画から間接的に学んだ可能性は否定できない。後者だとするとウクライナのような記録化された戦争が、パンドラの箱を開けたようなものである。いずれにせよFPVドローンを用いた戦術の拡散は不可逆なものだと認識すべきだ。
 また記事内で、コロンビア革命軍(FARC)の要員も参加している可能性も指摘されているが、これもまた興味深い。次号以降で取り上げるが、コロンビアでヘリコプターがドローンで撃墜されたとのことだ。(以上、NK)

君は21世紀のスマートシティでの戦いを生き延びることができるのか?

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