あらためて、非常時における補助犬の受け入れを考える
近年、地震や火災など大きな災害が各地で発生しています。そうした非常時には、いかに速やかに避難所へ移動できるかが重要になります。視覚障がいのある人の多くは、日常の移動には慣れていますが、災害時の避難となると状況が一変し、戸惑いや困難が伴います。
こうした課題に対して、避難所への誘導を支援するアプリも登場しています。代表的なものに「耳で聴くハザードマップ」があります。スマートフォンアプリ “Uni-Voice Blind” を利用することで、水害リスクや最寄りの避難場所などを音声で確認することができます。
このサービスは自治体との契約により提供され、利用者の負担はありません。導入は各地で進み、千葉県では昨年から利用可能となり、茨城県でも導入が始まっています。東京都でも現在、試験的に導入されています。
また、このnoteでもご紹介してきた「あしらせ」にも、避難所への誘導機能が備わっています。私たちの会でも、こうした支援機器やサービスの情報を共有しながら、実際の利用につなげる取り組みを続けています。
さて、補助犬ユーザーも災害時には避難所へ向かう必要があります。誘導アプリによって避難が可能になったとしても、その先で補助犬とともに受け入れてもらえるかどうかは、非常に重要な問題です。
これまでにも、新潟県中越地震や東日本大震災の際に、盲導犬使用者が避難所で受け入れられたという話を聞いています。私自身も、各地の使用者や支援者の方々と情報交換をする中で、地域によって対応に差があることを実感しています。
ここで、補助犬について簡単に整理しておきます。
補助犬とは、「身体障害者補助犬法」に基づき訓練・認定された犬で、身体に障がいのある人の生活を支える存在です。
代表的なものが盲導犬で、段差や障害物を知らせ、安全に歩行できるよう誘導します。そのほかに、日常動作をサポートする介助犬、音を知らせる聴導犬があり、それぞれ異なる役割を担っています。
災害時には、さまざまな状況での避難が想定されます。静岡県浜松市の消防航空隊では、補助犬ユーザーを想定した訓練が行われ、その後、熊本県や佐賀県でも同様の取り組みが実施されています。
以下のリンク先は実際の様子を伝える動画です。是非視聴してみてください。
<駐機訓練>
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000109327.html
<実機訓練>
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000014.000109327.html
<隊員インタビュー>
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000109327.html
日頃からの備えと訓練の大切さを、こうした取り組みは教えてくれます。これらの訓練には、当会の活動にご理解とご協力をいただいている介助犬使用者の方も参加されており、実際の現場での課題や工夫が共有されています。私自身も、盲導犬とともに地域の防災訓練に参加してきました。ストレッチャーで搬送された際、盲導犬は寄り添うようにそばを歩き続けていました。そのとき、消防職員の方が『救急車にも当然一緒に乗せます』と自然に言ってくださったことが、今も印象に残っています。
また、日頃の講話活動や交流の中でも「災害時にはどうすればよいのか」という質問を受ける機会が増えています。関心の高まりを感じる一方で、具体的な受け入れ体制については、まだ十分とは言えない地域もあると感じています。
もし実際の災害時に、補助犬の同伴が認められないとしたら──私自身、補助犬を残して避難所に行くという選択は考えられません。人命救助が最優先であることは十分承知しています。それでも補助犬は、私たちにとってペットではなく、体の一部ともいえる存在です。
だからこそ、自治体での補助犬使用者の受け入れ方法について、具体的なマニュアルなどの整備が進むことを願っています。あわせて、避難所で補助犬を受け入れることについて、広く理解が進むことも大切です。
「ペットは避難所に入れないのに、なぜ補助犬は入れるのか」という疑問を持たれることもあります。その役割の違いに、ぜひ目を向けていただければ幸いです。
(2026年5月3日 会長 松井進)
