『ヴィスコンティ=プルースト シナリオ「失われた時を求めて」』(大條成昭 訳/筑摩書房/1984年)

ルキノ・ヴィスコンティの幻の映画「失われた時を求めて」の、スーゾ・チェッキ・ダミーコとヴィスコンティによるシナリオ。
ダミーコ=ヴィスコンティは驚くほど原作に忠実にこのシナリオを書いている。
まるで、プルースト自身がシナリオを書いたかのようだ。
シナリオは、いきなり原作第二篇「花咲く乙女たち」のバルベック海岸から書きはじめている。
ということで、残念ながらジルベルトとの交情や「スワンの恋」のエピソードは割愛されてしまっている。/


ダミーコは「まえがき」に書いている。

【「私の終生の仕事(ライフ・ワーク)になるだろう」ヴィスコンティは、私との会話をしめくくる時、そう言うのがつねでした。(略)
今回、この脚本を公表することは、或る意味で、ヴィスコンティの予言が、具体化されたことを意味します。『失われた時を求めて』は、ルキノ・ヴィスコンティのライフ・ワークなのです。】/


◯シーン・72A:

【オリアーヌ・ド・ゲルマント「ねえ、シャルル。私たち、つまり、バザンと私は、春にイタリアとシチリアに旅行しようと思ってますの。あなたもごいっしょにどう?(以下略)】/


◯シーン・72B:

【オリアーヌ・ド・ゲルマント(略)「ところで、イタリアにいっしょに来て下さるかどうかのご返事を、まだうかがってないわね」 
スワン「奥様、どうも行けそうにありません」 

─中略─

ゲルマント公爵「出掛けるぞ。オリアーヌ!馬車の用意が出来た」 

オリアーヌ・ド・ゲルマント「ええ、あと、ひとことだけ。イタリアにおいでになれない理由は?」(略) 

スワン「それは奥様、私は、もう永くないのです。医者に診て貰ったところでは、病が重く、すぐお迎えが来るかも知れないし、そうでなくとも、三カ月か四カ月の命です」(略)

公爵夫人はスワンの言葉に胸をつかれている。しかし、彼女を待っている社交のつとめは、果たさねばならないことを自覚している。 

オリアーヌ・ド・ゲルマント「なにをおっしゃるの。そんなご冗談を!」 

スワン「これは(略)冗談ではありません。(以下略)」 

オリアーヌ・ド・ゲルマント「そのことは、またお話ししましょう。あなたのおっしゃった事は、信じられないわ。私をびっくりさせたりなすって‥‥‥」】/


◯シーン・90  パリのマルセルのアパルトマン。室内。昼。冬。:

【マルセル「僕の文学作品の材料は、すべて過ぎ去った僕の人生だ。それは移り気な快楽、怠惰、やさしさ、苦しみのなかから生まれ、僕のなかに貯えられてきたものだ。それがどういう運命を辿り、どのように生き続けて行くかを、僕は見抜くことは出来ないが、植物の成長に必要な、あらゆる養分を貯えた種子のようなものだと言うことは出来る。植物が育ってしまえば、僕は一粒の種のように死ぬだろう。芸術は、人生のひとつの延長に過ぎないのだから」】/


蛇足ですが、ヴィスコンティは予定配役を考えていたようです。
マルセル:アラン・ドロン/
モレル:ヘルムート・バーガー/
オリアーヌ・ド・ゲルマント:シルヴァーナ・マンガーノ/
シャルリュス男爵:マーロン・ブランドまたはローレンス・オリヴィエ/
アルベルチーヌ:シャルロット・ランプリング/


思い切り背伸びして、僕もやってみました。
よろしかったら、みなさんもどうぞ!/

マルセル:ショーン・エヴァンス(『刑事モース〜オックスフォード事件簿〜』)/
スワン:ジャン=ルイ・バロー(『天井桟敷の人々』)/
スワン夫人(オデット):カトリーヌ・ドヌーヴ
モレル:ジェラール・フィリップ(『赤と黒』)/
オリアーヌ・ド・ゲルマント:サスキア・リーヴス(橋の上の貴婦人)/
シャルリュス男爵:ロビー・コルトレーン(『心理探偵フィッツ』)/
アルベルチーヌ:エマニュエル・ベアール(『愛と宿命の泉』。本当は、ドラマ「フロスト警部」シリーズで教え子の高校生と恋に落ちる女教師役を演じた女優をあげたかったのですが、調べても名前が出てこないので。)

活躍した時代などもバラバラで恐縮ですが、どうか全盛期の彼らの姿をあてはめてみて下さい。

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