月夜の晩に

 夜道を女の子が歩いています。女の子の目からは、涙が蜘蛛の糸を雨粒が伝うように次から次から流れています。時々月の光があたって、涙はきらきらと光ります。
 女の子は、つい最近友だちを病気で亡くしたのです。
 はじめは、毎日悲しくて、泣いてばかり、部屋から出ることさえできないくらいでした。お父さんがなぐさめても、お母さんがなぐさめても、悲しくてしかたありません。
 そのうちに、少しずつ外へは出られるようになりました。けれど、何かのひょうしに、「あぁ、このお菓子をあの子は好きだった。」「あぁ、この映画をいっしょに見た。」「あぁ、この海へいっしょに来た。」と思い出してしまい、心がちくちくと痛くなって、涙がぽろりとこぼれてしまうのです。
 心の中に、大きな暗い深い穴がぽっかりと空いてしまったみたいです。
 女の子はお月様を見るのが好きになりました。元気よく友達と遊んだり、おしゃべりしていた時は、明るいお日さまが大好きでしたけれど、今は青白いお月さまの光を見ていると、なぜかさみしい心が落ち着くのです。
 それでも、満月が、だんだん欠けてゆき、細い三日月となり、真っ暗な新月になると、女の子の心のさみしさも、まただんだんと増してゆくのです。大切な友達がいなくなってできた心の穴がだんだんと大きくなっていくような気がします。
 ふうっと女の子はため息をつきました。ひとりぼっちで、誰もいない夜道に息がしいんと吸い込まれていきます。また、涙がすうっとこぼれます。
 その時、「ここにいるよ」と聞きなれた友達の声が聞こえたような気がしました。あぁ、さみしすぎて、頭が変になってしまったと、女の子は思いました。家に帰らないと。お父さんとお母さんが心配する。
 女の子は家への道を急ぎます。
「ここにいるよ。」
また、友達の声がします。おばけかもしれない。でも、おばけでも会いたい。回りをみまわしましたが、誰もいません。
 家に帰らなくちゃ。
「ここにいるよ。」
また声がしました。
「どこ?どこにいるの?」
女の子は声に出して言ってみました。
 「見えないかもしれないけど、ここにいるよ。」
「おばけなの?おばけでもいいけど。」
女の子は聞きました。
 「おばけじゃないけど、ずっとここにいるよ。空のお月さまを見て。」
「お月さまにいるの?」女の子の頭はぐるぐるこんがらがっています。
「お月さまのうさぎになったわけじゃないよ。ふふふ」
友達の声は笑います。
「お月さまは、三日月になったり、新月になったりしてだんだん見えなくなるけれど、お月さまはなくなると思う?」
「なくならないわ。」
女の子は答えます。
「死んだ人も同じなの。見えなくなっても消えてなくなるわけじゃないのよ。」
友達の声は言いました。
「見えなくても、ちゃんといるから。泣かないで。」
 それはお月さまの声だったのでしょうか? それとも、本当に友達の声?
 けれども、それから女の子は友達がそばにいて、優しく見守ってくれるのを感じるようになりました。
 あの晩の夜道をお月さまがふんわりと照らしてくれて、女の子の涙を銀色のタオルで包んでくれたように。
 「ありがとう」

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