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技の久須美護、力の図師勲

「ぬいぐるみ役者」という言葉は、一般には必ずしも通用しない。
現代ではこの種の表現者を「スーツアクター」と称し、特撮作品に於いてはヒーロースーツや怪獣などの着ぐるみに身を収めて演技する俳優を意味する。
久須美護(現・欽一)と図師勲は、70年代の変身ブームの只中で躍動したスーツアクターである。
彼等が特別なのは、同時期に活動した数多のスーツアクターの一員に留まらず、屈指の名コンビとして鮮烈な軌跡を刻んだ点にある。

中学生の頃から親交のあった二人は、大学時代に久須美が図師を誘う形でスーツアクターのアルバイトに身を投じ、やがて劇団「野武士の会」に所属。
デパート催事を始めとした全国のステージショーを巡る日々を経て、映像の世界へと舞台を移した。
両者が最も多く共演し、その存在感を強く示したのが『流星人間ゾーン』(1973年)である。レギュラー且つ主役であるゾーンファイター(巨大)を久須美が務め、敵対する恐獣(怪獣)の大半を図師が担当したのだ。

巨大ファイター(右):久須美 ゲルデラー(左):図師
「週刊TVガイド」1973年5月25日号

久須美の特徴は、細身の体躯から繰り出される俊敏で流麗な動きにある。
動作の一つ一つに明確なキレがあり、全体に引き締まった印象を残す。
氏は最初『ウルトラファイト』(1970年)で怪獣役を多数担当した後、負傷した西条満の代役として『ミラーマン』(1971年)の主役ヒーローを演じる。
更に『レッドマン』(1972年)では主人公に起用され、初めて自身の専用スーツが誂えられた。これを以て彼は、ヒーローのスーツアクターとして、その威厳を揺るぎないものとしたのである(最も『レッドマン』撮影中、右肘を強打して骨折し、途中から代役と交代しているが、第136話での「分身の術」撮影時には再び久須美も登場した)。
そしてその身体は『流星人間ゾーン』のゾーンファイター(巨大)として結実し、『ウルトラマンレオ』(1974年)のアストラ役へと至る。

一方、図師の特徴は、内に猛力を秘めた華麗な挙動と、清冽な所作にある。
柔道経験の賜物か、特に受け身に於ける瞬発は圧倒的に美しい。
『ウルトラマンA』(1972年)が映像作品のデビューとなった氏は、第13~24話まで登場する複数の超獣役を担当。バラバ、カウラ、ブラックピジョン、アプラサール等が該当する。
その後『突撃! ヒューマン!!』(1972年)の怪獣役を務め、続く『流星人間ゾーン』では毎週異なる恐獣役の大半を演じた。
恐獣の中にはキングギドラも含まれ、ゾーンファミリーに味方するゴジラ役も、部分的にではあるが図師が務めている。部分的と言うのは、ゴジラ役として河合徹も出演していた為である。
ゴジラ登場回は第4話、第11話、第15話、第21話、第25話の計5回であり、その内訳には依然として多くの謎が残る。(クレジットに従えば)第4話のゴジラ役は河合徹で確実だろう。
いずれにせよ、図師が本作でゴジラを演じた経験は、後の『ゴジラ対メカゴジラ』(1974年)のゴジラ役抜擢に直結している。

第17話「GO!ファイター緊急発進」
ゾーンファイター(久須美)対バルガラス(図師)

『流星人間ゾーン』に加え、久須美と図師の対照的なコンビネーションを存分に味わう上で、『クレクレタコラ』(1973年)は格別に贅沢な例である。
本作では、久須美はビラゴンとイカリーの二役を、図師はデブラを演じた。
身軽で技巧的な所作を武器とする技タイプの久須美に対し、堂々たる躍動と鮮烈な存在感で迫る力タイプの図師。擬人化と称すればやや過言かもしれぬが、その配役の妙は実に見事である。

第191話「禁じられた遊びの巻」
協力してタコラとチョンボの墓を建てるビラゴンとデブラ