ナイジェリア経済の現状と食糧危機
ナイジェリアはアフリカでは経済規模の大きな国ですが、BRICSではなく西側と行動を共にすることを選んだ国です。BRICSの厳しい面について取り上げることが多いですが、西側を選んだナイジェリアもまた苦しんでいます。どちらが正しい、どちらが常に優位という簡単なものではありません。新興国、特にアフリカの国々は経済状況が非常に脆弱で、どこも苦しいというのが現状です。

ナイジェリアの経済規模と社会構造
ナイジェリアの経済について簡単に振り返りますと、人口は2億人を超えており、アフリカ大陸で最も多くの人口を抱えています。2023年の世界GDPランキングでは42位で、香港と同じくらいの経済規模です。
1人当たりのGDPは2022年時点で2,184ドルで、3,000ドル以下が貧困とされる基準からしても貧しい人たちが多いことが分かります。ただし、富裕層もそれなりにいて、非常に格差の大きな社会になっています。
原油依存と政治的混乱
ナイジェリアは産油国として影響力を持っていることはよく知られています。国家歳入の7割、輸出の8割が原油に依存しており、原油依存からの脱却が課題となっています。
元々イギリスの植民地だったナイジェリアは1960年に独立しましたが、1966年から1993年までに7回のクーデターがあり、何度も内戦が起こりました。1990年代は軍事政権が統治していた期間も長く、こうした政治的な混乱によって経済どころではなかったと言えます。石油プラントが破壊されることも何度も起こりました。
食糧危機の歴史と現状
ナイジェリアの食糧危機は今に始まった話ではなく、度々起こっています。ここ10年ほどでは、2016年にナイジェリアの北東部で400万人以上が深刻な食料不足に直面し、5歳未満の子供40万人以上が重度の栄養不足の状態にあるとして国際社会からの支援が行われました。この時は北東部で2000年代から続くイスラム過激派、特にボコ・ハラムとの戦いの中で家を追われた人たちが多く、食糧危機が注目されるようになったのが2016年から2017年頃のことです。
ナイジェリア テロ・誘拐情勢
(1)ナイジェリアでは、ボコ・ハラムや「ISIL西アフリカ州(ISWAP)」等のイスラム過激派組織、並びにビアフラ共和国独立を目指す「ビアフラ先住民(IPOB)」、南部における石油利権の公平分配を唱える「ナイジャーデルタアベンジャーズ(NDA)」及びイスラム教シーア派団体とされる「イスラム運動ナイジェリア(IMN)」等の反政府武装組織の活動がみられます。
(2)このほか、武装集団による身代金目的の誘拐事件が全国各地に広がりをみせているほか、武装フラニ族遊牧民と農耕民との衝突を始めとする、民族間・宗教間の対立事件や、治安機関に対する爆発物を用いた襲撃事件等、凶悪犯罪が各地で発生しています。
新型コロナウイルスと干ばつの影響
その後も状況は良くならず、2021年から2022年にかけてさらに悪化しました。2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、世界が混乱していた時期にナイジェリアではコレラの大流行も起こっていました。それから干ばつなどの影響もあり、食料不足がさらに深刻になりました。
ボコ・ハラムの活動は近年も続いており、2022年には刑務所が襲撃されて800人以上の囚人が逃げたり、学校が襲撃されて数百人単位で子供が拉致される事件が毎年起こっています。
物価高騰とティヌブ大統領の政策
これまでは深刻な食料不足が起こっていたのはボコ・ハラムなどの活動が活発な北東部の地域が中心でしたが、現在は全土で物価の高騰が起こっています。
2023年に大統領に就任したティヌブ大統領の政策で為替相場を事実上変動相場制に移行しました。これによって通貨ナイラが急落し、輸入物価が高騰する形で国内の物価上昇率が跳ね上がるという状況が起こりました。新政権は通貨安を受け入れることで物価上昇にはなるものの、海外からの投資を取り込み、海外からのお金でインフラ整備などを進めようとしましたが、あまりにもインフレがひどい状況になり、政府への不信感が高まっています。
エネルギー補助金の廃止とインフレの影響
同時にエネルギーの補助金などをなくしており、ティヌブ大統領が就任してからガソリン代も電気代も3倍になっています。食料品の価格は1年前に比べて40%上がっており、米、豆、パンといった主食が贅沢品になってしまったと言われています。直近の7月のナイジェリアの消費者物価指数は前年同月比+33.4%となり、1月以降ずっと30%台と高水準で推移しています。
通貨政策の限界と治安の問題
ティヌブ大統領の政策を見て思うのは、為替政策だけで国を良くすることはできないということです。通貨安にしても、海外に売れるものがなければ輸出は伸びませんし、治安が悪く紛争が続く地域には海外投資家からの投資もなかなか入りません。観光客も来ないでしょう。通貨政策だけで全てがうまくいくほど単純な話ではありません。
ナイジェリアは原油依存の強い国ですが、パイプラインが破壊されて原油が盗まれることもよくあります。頼みの原油の輸出でさえ、こうした犯罪の影響を受ける状況です。通貨政策だけを変えたところでうまくいくはずがありません。
抗議行動と政府への不満
こうした状況を受けて8月に入ってからナイジェリア国内では抗議行動が発生し、デモ隊と警官隊の衝突で少なくとも20人以上が亡くなっています。エネルギー補助金の復活も財政的に難しい面があり、現在のインフレを短期間で鎮静化させるのは難しいでしょう。ナイジェリアの食料問題とそれに対する抗議活動で、ナイジェリア全体が不安定な状況がしばらく続くかもしれません。
まだクーデターになるような話は出ていませんが、政府への不満は高まっています。
ご参考
イギリスは医療崩壊やエネルギー問題など、さまざまな問題を抱えていますが、それらに対応する財源が不足しており、増税が行われる可能性が高いとされています。労働党政権ではその可能性がより高まるとだろう考えられていました。
