宗教法人と金融機関の意外な関係
近年、政治と宗教の関係に対する国民の関心が非常に高まり、厳しい目が向けられるようになりました。しかし、金融業界が宗教法人とどのように関わっているかについては、あまり取り上げられていない論点だと思います。宗教法人は意外にも債券マーケットとの関係があります。
私は長く債券マーケットで仕事をしてきました。業界ではよく知られていることなど解説したいと思います。
宗教法人とは
宗教法人は,教義をひろめ,儀式行事を行い,及び信者を教化育成することを主たる目的とする団体,つまり「宗教団体」が都道府県知事若しくは文部科学大臣の認証を経て法人格を取得したものです。
宗教法人のお金の流れ
宗教法人と金融機関の関係を理解するためには、宗教法人のお金の流れを理解するとわかりやすいかもしれません。
宗教法人の収入は、お布施や寄付、参拝料などがあります。また、不動産の維持管理や従業員の雇用などに費用がかかりますが、企業と違って将来的にお金を稼ぐことを狙って大きな設備投資をすることはあまりありません。つまり、宗教法人はお金をたくさん持っている一方で、借入れは少ないという特徴があります。
宗教法人の資産と負債
大きなお寺では建物の修繕などに大きな費用がかかる場合もありますが、基本的に負債が少ない一方で多くの資産を保有している傾向があります。最近では、宗教法人が信者に多額の寄付をさせたり、高額な本を売りつけたりする話もありますが、そうした宗教法人は集めたお金を潤沢に持っています。例えば、京都や奈良の有名なお寺などでは、仏教の宗派の本山のような位置づけになっており、大きなお金が入ってくるところもあります。
一方、田舎のお寺などでは多くのお金を持っているわけではありませんが、基本的に負債が少ない一方で資産を持っているという特徴は同じです。したがって、銀行からお金を借りるというよりは、持っているお金をどう運用するかという資産運用のニーズが高いという認識です。

証券会社との関係
銀行との付き合いももちろんありますが、昔から証券会社との付き合いがある宗教法人が多いです。
仏教などの宗教法人は利益を追求することとは最も遠い考え方だと思いますが、そのイメージとは違い、ハイリスクハイリターンの金融商品を提供する証券会社と意外にも取引が行われている状況です。これは、宗教法人の経営的側面からそうした状況になっていると言えます。
宗教法人と証券会社の歴史
昔から宗教法人は証券会社と取引の歴史が長いです。宗教法人は資産を潤沢に持っているため、証券会社からすると比較的リスクの高い運用商品を提案しても大丈夫と考えられる傾向があります。
証券会社の中で宗教法人はお得意様になっていると言われています。証券会社によっては、京都支店が宗教法人のお得意様が多いため、非常に重要な位置づけになっている会社もあるようです。
宗教法人と証券会社の噂①
京都の街自体は他の政令都市と比較して小さいですが、社内では京都支店の方が重要で、京都支店で成績を上げると出世しやすいという話も聞いたことがあります。
金融機関では有名な話ですが、由緒正しいお寺などは意外にも金融市場でのリスクテイカーだったりします。一方、今の世の中で話題になっている新興宗教や多額の寄付を集めている宗教法人についても、証券会社は積極的に営業を行っていると聞いたことがあります。証券会社の営業マンが宗教団体と取引をしていて、新任の挨拶に行くと謎の宗教行事や儀式に参加させられて大変だという話も聞いたことがあります。
宗教法人と証券会社の噂②
証券会社は日本に昔からあるお寺だけでなく、新興宗教にも積極的に営業を仕掛けているようです。宗教法人の資産運用について、債券の世界で証券会社を儲けさせる機会をたくさん提供しています。
私は債券市場で長らく仕事をしてきましたが、債券市場の関係者の間では意外と有名な話です。
宗教法人の資産運用
宗教法人は大きいところでは巨額の資金を有しており、学校や大学を運営している宗教法人も多く、事業規模はそれなりに大きく、運用資産は数百億円に上るところもあります。
そうした規模の資産を運用するためには、株式などのリスク資産で運用するわけにもいかないので、債券での運用が多くなります。実は、宗教法人は債券マーケットの参加者になっています。
債券マーケットの構造
債券マーケットはメガバンクや大手生保、大手資産運用会社などが取引の大半を占めていますが、地銀や信用金庫、地方のJAなど小規模の機関投資家もおり、さらにもっと小さい債券マーケットの参加者として宗教法人や学校法人などがいます。この宗教法人の存在は債券マーケットに与える影響はほとんどありませんが、証券会社にとっては非常においしいお客様です。
宗教法人と証券会社の取引
なぜなら、規模は小さいですが、大手の機関投資家と取引をするよりも、宗教法人と取引をする方が証券会社は儲けることができる場合があるからです。
債券の世界では、証券会社と投資家の間での相対取引で取引される価格もそれぞれ異なります。証券会社は機関投資家Aに100円で売った債券を、宗教法人Bには105円で売ることがあります。プロの機関投資家であるAは市場の状況から100円程度が妥当であると知っているため、証券会社はAには100円で売りますが、素人に毛が生えたような投資家である宗教法人Bには105円で売りつけることができます。
これが証券会社の債券ビジネスです。
こうした債券の取引で、宗教法人は証券会社にたくさんの収益機会を提供していると言われています。全ての宗教法人がそうとは言えませんが、多くの宗教法人が証券会社と深い付き合いがあることがわかります。様々な方法で集められた宗教法人のお金で、結果として証券会社が潤っているという状況があります。
宗教法人のコンプライアンス強化の必要性
宗教と政治の関係に比べれば社会的な重要性はそれほど高くない問題ですが、宗教法人のコンプライアンス、特に財務面においても強化されていくことが求められているかもしれません。
ご参考
世界中の金融当局者や政治家ともコネクションを築き、野心的に動いているのは間違いありません。自分たちにとって有利になるような法改正も含めて働きかけたりしているのは間違いないでしょう。
