インド経済の強みと弱みとインド株反発要因
2024年10月から下落が続いていたインド株ですが、2025年4月7日以降、安値から10%以上急反発する動きが出ています。アメリカ市場が混乱する中で、インドを見直す動きもあります。一方で、インドについては新たな問題も出てきました。パキスタンとの緊張が高まってきています。この記事では、インドの情報のアップデートをしたいと思います。
インド株下落要因の振り返り
まず、インド株が2025年10月以降冴えない動きになっていた背景には、政権が資産バブルを警戒してキャピタルゲイン税を導入したことや、インドの成長率が緩やかに下がってきていること、そして、世界最大の人口を抱えながらも、多くの人たちが経済成長の恩恵を受けられていない現状、さらに世界最大の民主主義国家を運営するモディ政権が難しい立場に立たされていることなどがありました。
インドの主要株価指数であるNifty 50は、2月も下落し、5ヵ月連続の下落となりました。これは1996年以来、約29年ぶりのことです。昨年9月のピークからの下落率は15%に達し、この期間のパフォーマンスは世界最悪となっています。
SENSEX指数の動き
インドの主要株価指数であるSENSEX指数ですが、2024年9月末に8万5,978ポイントまで上昇した後、2025年4月7日には7万1,449ポイントまで約17%下落しました。
しかし、そこから反発し、4月24日には一時8万ポイントを回復、4月7日の安値から約2週間で12%程度の上昇幅となっています。

インド株反発要因
これは、アメリカのマーケットが不安定化し、米国離れが意識される展開の中、日本や欧州にお金が流れてきていることと同様です。加えて、インド株は割高感が解消されてきていたため、成長市場に投資をしたい資金の一部がインドに向かったと見られています。
インド経済の強みと弱み
さらに、貿易戦争の中で、インドは比較的影響が少ないと見られていることも関係しています。インドという国は「世界の工場」になっていないためです。安い労働力がたくさんあるにもかかわらず、昔の中国や東南アジアの国々のように、世界の製造業が工場をたくさん建設して「世界の工場」になるという道を歩んでこなかったのです。
なぜかと言うと、インフラの整備が遅れていたり、民族・宗教的な対立があったり、外資を排除するような動きがあったりして、インドに進出するのが容易ではなかったためです。一部、スズキが成功した例などはありますが、インドは今でも世界の工場にはなっていません。どちらかというと、内需主導の経済構造になっています。
インド経済の難しさでもありますが、アメリカから関税をかけられても、輸出メインの国に比べると影響が少ないということで、貿易戦争の中ではこのディフェンシブ性が評価されているわけです。
投資判断の引き上げと成長見通し
こうした状況を受けて、大手金融機関のUBSがインド株の投資判断を「アンダーウェイト」から「ニュートラル」に引き上げるなど、インド株を見直す動きが増えてきています。
インド
インドは、2025年が+6.5%から+6.2%に、2026年が+6.5%から+6.3%にやや修正されています。アメリカとの貿易関係がある程度ある中で、関税の影響は受けつつも、依然として主要国・新興国の中では最も高い成長率を維持する見通しです。
カシミール地方でのテロとインド政府の対応
そうしたインドですが、新たな問題が起きています。2025年4月22日、カシミール地方で観光客に武装勢力が発砲し、26人が死亡するという事件が発生しました。このカシミール地方は、インド・パキスタン・中国が領有権を主張している地域で、これまでにも衝突が起こってきました。
●4月22日、インド北部ジャンム・カシミール準州のパハルガム近郊で、外国人観光客を含む民間人26名が死亡するテロ事案が発生し、パキスタンを拠点とするイスラム過激派ラシュカレ・タイバの分派組織である抵抗戦線が関与したと報じられています。
●この事案を受け、インド政府はインド・パキスタン国境検問所の即時封鎖等の措置を講じており、印パ両国間の動向についても注視が必要です。
●引き続き、ジャンム・カシミール準州の危険レベル3以上の地域への渡航は止めてください。
今回のテロ事件発生後、「ザ・レジスタンス・フロント(TRF)」(日本のメディアでは「カシミール抵抗勢力」などと呼ばれています)が、犯行声明を出したとされています。この組織は、カシミール地方のインドからの独立を目指して活動している武装勢力です。アルジャジーラなどによれば、イスラム過激派組織「ラシュカレ・タイバ」から分化して、2019年頃にできた新しい組織だとされています。インドのカシミール警察は、今回の事件に「ラシュカレ・タイバ」が関わっているとし、その責任はパキスタンにあるとしています。
モディ政権は4月22日、サウジアラビアを訪問中でしたが、予定をキャンセルして急遽帰国し、記者会見で「犯行グループとその支援者を地の果てまで追い詰める」と述べました。
インドとパキスタンの対立激化
今回の事件を受け、インド政府は、同地域におけるパキスタンとの国境閉鎖、パキスタン国民へのビザ発給停止、さらにインダス川の水資源配分に関する条約の停止などを発表しています。
これに対してパキスタン側は、「インダス川の水資源配分に関する条約は60年前に締結され、この地域の安定にとって非常に重要なものであり、水の供給を停止したり転用するようなことがあれば、戦争とみなす」と強く反発しています。さらにパキスタンは、インドが所有または運行している航空会社の空域を閉鎖し、インドとの貿易を全面的に停止しました。
懸賞金
イギリスのメディアなどによると、カシミール警察は今回の事件に関与した人物を洗い出すため、同地域で1,500人を拘束して尋問しているとの報道も出ています。また、事件に関与した人物に関する情報提供者には、最大200万ルピー(約2万3,000ドル)の懸賞金を支払うと発表しています。
カシミール地方は一人当たりGDPが年間3,000ドル以下の地域のでため、2万3,000ドルというのは非常に大きな金額です。情報を提供すると武装勢力から狙われる可能性もあり、実際に情報が集まるかは分かりませんが、インド政府が本気であることはよくわかります。
緊張の影響とマーケットの見通し
マーケットは今のところ、この件について比較的楽観的に見ているようです。2015年から2019年にかけても、この地域でテロが起こり、数十人程度が死亡する事件が何度もありました。2019年にはインドが48年ぶりにパキスタンを空爆するという事態にもなりましたが、全面戦争には至りませんでした。今回もおそらく、株式市場などへの影響は一時的なものになるのではないでしょうか。
むしろ今後、貿易戦争の中でインドのディフェンシブ的な要素がより意識されていくかもしれません。
先週の動画で解説しましたが、金融市場に与える影響は限定的と見られますhttps://t.co/1o99f3RuRw
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) April 30, 2025
ご参考
食品価格の重要性
インドのように一人当たりGDPが3,000ドル以下の国では、人口の多くが消費において食品に依存しています。そのため、食品の価格動向は全体的な消費者物価に大きな影響を及ぼします。
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