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フォルクスワーゲンの工場閉鎖と独経済への影響


 2024年9月2日、ドイツの自動車大手フォルクスワーゲンがドイツ国内の複数の工場の閉鎖を検討していると報じられました。この件について、ドイツ経済に与える影響を解説します。

歴史的な決定

 9月2日のロンドン時間のお昼頃、フォルクスワーゲンがドイツ国内の工場を閉鎖することを検討していると複数のドイツメディアが報じました。製造業の国ドイツにおいて、これは極めて大きな出来事です。フォルクスワーゲンがドイツ国内で工場を閉鎖するのは、1937年の創業以来87年の歴史の中で初めてのことです。

ドイツ国内の主要工場

 フォルクスワーゲンが国内でどれぐらい工場を有しているのかを簡単に紹介します。
 ドイツ国内で最も大きな工場はウォルフスブルクにある本社工場で、ゴルフ、ティグアン、トゥアレグなどを製造しており、約7万人が働いています。続いて2番目に大きいのがカッセルにある工場で、電気自動車の運転システムやトランスミッションの製造を行っており、1万5,500人が働いています。3番目はハノーファーの工場で、商業用の自動車を製造しており、1万4,200人が従事しています。4番目がツヴィッカウにある工場で、アウディQ4 e-tronなどを製造しており、1万350人が働いています。この他、合計で10の工場がドイツ国内にあり、これらの工場で働いている人の数の合計は13万7000人に上ります。

閉鎖の影響と背景

 すべての工場を閉鎖するという話ではないと思いますが、どこまで閉鎖するのかはまだ全く分からない状況です。
 フォルクスワーゲンがこのような決定をするということは、他の自動車メーカーも後追いで同じことをする可能性があります。フォルクスワーゲンに関しても、すべてを内製化しているわけではないので、国内の取引先にも大きな影響を与えることになります。フォルクスワーゲンが解雇する人数以上に失業者が増えることが予想されます。

競争激化とコスト削減

 では、なぜフォルクスワーゲンは工場を閉鎖することにしたのでしょうか。それは、中国の電気自動車メーカーとの競争が激しくなっており、コスト削減をするためだとされています。フォルクスワーゲンは元々、電気自動車の開発・販売を積極的に行ってきた会社ですが、最近は販売が伸び悩んでいます。欧州でも中国国内でも、中国メーカーに押されている状況です。さらに、中国ではフォルクスワーゲンはエンジン車のシェアまでBYDなどの電気自動車メーカーに奪われており、非常に苦戦を強いられています。

中国製EVの台頭とEUの対応

 最近、中国製の安価なEVがどんどん欧州に入ってきており、EUで販売される電気自動車の52%が中国製になっていると言われています。これを受けて、EUは中国で生産された電気自動車に対して、2024年7月5日から17.4%から37.6%の追加関税を課すことを決定しました。中国で補助金などを受けて安価に製造された自動車が、安い値段で欧州に販売され市場シェアを奪っていくのに対抗するための措置です。
 これにより、中国メーカーの車だけでなく、BMW、ルノー、テスラなどが中国で生産した電気自動車についても欧州で関税の対象になります。

フォルクスワーゲンの判断

 今回のフォルクスワーゲンの工場閉鎖の検討報道については、中国で生産された電気自動車に関税が課されることになっても、もはやドイツ国内で製造していてはコスト面で対抗できないと判断したものと見られます。

ドイツ経済への影響

 フォルクスワーゲンの工場閉鎖がドイツ経済に与える影響については、まだ具体的な数値は出ていませんが、ドイツの製造業は厳しい状況にあります。9月2日に発表されたドイツの製造業PMIは42.4で、小幅に予想を上回りましたが、依然として低空飛行を続けています。
 PMIという経済指標は、企業の購買担当者に景況感をヒアリングして数値化したもので、景況感が改善していると答えた人の数が多いと50を上回り、悪化したと答えた人が多いと50を下回る結果になります。ドイツの製造業PMIは2022年半ばからずっと50を下回っています。今年に入って45ぐらいまで回復する場面もありましたが、また下がってきています。

エネルギー問題とインフレ

 製造業が上向かないのは、2022年のウクライナ戦争が起こってから、ドイツではエネルギー問題が欧州の中でも最悪の状況にあり、インフレ率が長らく高い状況が続いているためです。ドイツ国内経済は低迷し、製造業もコスト高の影響を受けています。
 中国経済の低迷の影響も大きいと言えます。その結果、ドイツの経済成長率は長らく低迷し、2024年4-6月期は前期比-0.1%に沈んでいます。ウクライナ戦争が始まって以降、ずっとゼロを挟んでプラスとマイナスを行き来しており、長らく景気の低迷が続いています。

ドイツ経済の構造的問題

 今回、ドイツ経済において影響力の大きいフォルクスワーゲンが工場を閉鎖すると、マイナスの影響は大きなものになる可能性があります。
 
ドイツ経済は元々製造業の比重が大きな構造になっていますが、これは通貨ユーロを導入したことで維持してきたと言えます。経済の成熟した国では通貨が高くなり、製造業はなかなか難しくなっていくのが一般的ですが、ドイツは共通通貨ユーロを使って製造業を維持してきました。
 エネルギーに関しては、ロシア産の安価なガスに依存することでコストを抑制してきましたが、2022年頃からこの歯車が大きく狂い始めました。インフレで国内経済は打撃を受け、製造業もコスト高の影響を大きく受けました。さらに、力を入れてきたEVへのシフトにおいて中国メーカーが台頭し、ドイツの自動車メーカーは苦戦を強いられています。

国内政治の影響

 国内ではウクライナ戦争の影響や移民問題などを受け、EUに懐疑的な勢力が台頭しています。9月1日、ドイツ国内ではザクセン州とテューリンゲン州で選挙が行われ、テューリンゲン州では極右とされるAfDが第1党になり、ザクセン州でもAfDが第2党になるなど支持を伸ばしています。ドイツでは2025年に国政の総選挙が行われる予定で、このままだと与党は大ピンチといった状況です。

ドイツでも移民反対を掲げるAfDという政党が支持を伸ばしています。おそらく今回の事件で、ますますAfDが勢いづく可能性があります。

メディアが報じない移民問題

今後の展望

 フォルクスワーゲンの工場閉鎖については、実際にどの程度工場が閉鎖されるのかなど詳細な情報が出てきましたら、また影響を詳しく解説していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

ドイツの企業が中国に持っている工場で生産した自動車などをアメリカに輸出する機会が減るため、中国への関税もドイツにマイナスの影響を与えます。さらに、関税の引き上げにより中国経済が落ち込むと、ドイツの輸出も減少すると予想されます。

トランプ氏が勝利した場合のドイツ経済

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