英国でマンジャロ利用拡大、痩せ薬と社会変化
糖尿病治療薬であるマンジャロという薬を、痩せるために使う人が増えています。安全面でどうなのか、無許可で販売する人がいたりして、日本でも問題になっていると聞きます。
実はイギリスでは、日本以上にマンジャロを使う人たちが増えています。
そして、マンジャロをはじめとした痩せ薬を使う人が増えた結果、消費行動にも変化が見られているといった話も出てきています。この記事では、イギリスにおけるマンジャロの利用と消費行動の変化のついて説明します。
マンジャロの使用を肯定する意図はない
最初に申し上げておきますが、私は今回の話でマンジャロの使用を肯定しようとか、使用を促そうとか、そうした意図は全くありません。私自身、なるべく薬なんて飲まない方が健康的だと思っています。もちろん、そうしたものは使ったことがありませんし、普段から運動と食生活によって健康的な体づくりをしているつもりです。

ただ、これは薬のため、医療行為として医師が処方することに関して、私は医師ではありませんから否定するつもりもありません。
そして、医療を巡る状況は日本とイギリスで全然違います。イギリスの状況と日本の状況を、そのまま比較できるものでもありません。あくまでイギリスではこのような状況になっていますよということで、理解していただければと思います。
マンジャロとはどのような薬なのか
マンジャロというのは糖尿病の治療薬で、食欲を抑え、満腹感を長く持続させることで、血糖改善効果と体重減少効果をもたらすものだとされています。週に1回程度、注射によって投与する薬です。

このマンジャロが肥満症および減量薬として承認されたのが、2024年のことです。
イギリスでは200万人以上が使用
これらの薬は急速に利用者が増加し、現在では200万人以上が使用しているということです。NHSから無料で提供されたものを使っている人は、まだ数十万人にとどまっています。
英国の国民保健サービスはNational Health Service、通称NHSと呼ばれています。
多くの人たちは、自費で購入しているということです。もともと、この薬が承認された時点で、340万人以上が使用条件に該当するとされていました。まだ使いたくても使えていない人たちが、たくさんいるというわけです。お金のある人たちは自分で購入していますが、自費で購入できない人たちは順番待ちになっているという状況です。
日本とは問題の捉えられ方が異なる
イギリスでは、これらの痩せ薬を使う人が増えて大丈夫なのかと心配されているというよりも、まだ使いたい人たちに十分届けられていないという点に注目が集まっている格好です。この背景には、もともと糖尿病患者や糖尿病予備軍があまりにも多く、しかも国民医療制度の医療資源が足りていないという状況があります。
イギリスの肥満率は、日本よりもはるかに高くなっています。

WHOの基準で見ると、日本が4.9%であるのに対し、イギリスでは28.7%にも達しています。肥満率を見る時にはいろいろな基準があるので、数値もそれぞれ異なります。ただ、国際比較をする時には同じ基準で比較する必要があり、このWHOの基準が使われることがあります。イギリスはアメリカほどではありませんが、それでも非常に肥満が多い国だということが分かります。
NHSの医療待機者は700万人超
つまり、イギリスには糖尿病の予備軍がものすごくたくさんいるわけです。しかし、イギリスでは病院にかかりたくても待機している人たちが700万人を超えています。イギリスには国民医療制度であるNHSがあり、基本的には無料で医療行為を受けることができます。かつてイギリスが高福祉国家と言われていた要因でもあります。
ただ、今ではNHSのサービスが不十分となり、多くの人が必要な医療を受けられない状況になっています。年齢や病気の進行度合いによっても待機期間は変わってきますので、若者ほど医療を受けられないといったこともよく言われます。この医療待機者を減らさなければいけないというのが、社会的な課題となっています。
国家として肥満と糖尿病を減らす
そこで、糖尿病患者を減らそう、そして糖尿病予備軍を減らさなければいけないということになっている。イギリス政府は、マンジャロなどの痩せ薬を普及させることで、肥満と糖尿病を減らすことに国家として取り組んでいます。この辺りは、日本と置かれている状況が全く違うと言えます。
痩せ薬の販売を許可して、購入したい人は自分で買ってください。
NHSも提供していきますが、財源には限りがありますので、NHSから提供できる分は限られますよという状況です。まだこれらの痩せ薬の普及は途上という感じですが、すでに200万人以上の人が利用するようになってきました。そして、その中で消費者の行動に変化が生じてきていると言われるようになっています。
痩せ薬を使う世帯では食料品支出が減少
BBCなどが報じたところによりますと、イギリスの調査会社が1万世帯以上を対象に調査を行いました。痩せ薬を使用している人が1人以上いる世帯と、使用している人がいない世帯を比較したところ、使用している世帯では過去1年間に418ポンド、食料品に対する支出が減少したということです。これを国民全体に当てはめると、7億8,000万ポンドという計算になるということです。
痩せ薬を使用している世帯では、チョコレートやお菓子の消費が減った一方で、果物や高タンパク食品の消費が増えたとされています。この結果は、満腹感が継続することで、退屈しのぎになんとなく食べることが減ったことを示していると見られています。また、アルコールの摂取量も減ったということです。
一方で、ガム、マウスウォッシュ、白髪染めの売上が増えたということです。これは薬の副作用として、口臭や脱毛といった問題が起こり、それに対処するためだと見られています。チーズ、バター、卵、炭酸飲料の消費は減少し、ヨーグルトの消費は増えたということです。そして、服用を開始した世帯では、外食の回数も減ったということです。また、別の研究では、ファストフード店やコーヒーショップでの消費が減少したとしています。
現在の利用者は比較的裕福な層
ただ、まだイギリスでは、必要な人たち全員に薬が行き渡っているわけではありません。自費で購入している人たちが多くなっています。現在服用している人たちは、比較的裕福な層であり、健康への意識が高い人たちである可能性があります。このデータが、すべての国民にそのまま当てはまるわけではないでしょう。ただ、痩せ薬が普及してくると、こうした変化が起こる可能性があるということです。
パブ業界への影響が広がる可能性
最近はイギリスでも、お酒を飲む人が減っているということで、ビールの売上が伸びないとか、パブの経営が厳しいといった話がよく言われてきました。
イギリスのパブ閉店と同じ傾向やな https://t.co/8SdwML0YZF
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) July 13, 2026
一つは、若者のアルコール離れが影響していると言われています。この痩せ薬が普及してくると、さらにアルコールの消費量が減少し、パブなどの売上が減ってしまうかもしれません。コロナ禍以降、パブの閉店が高水準になっています。
これはパブの売上が減っていることだけではありません。家賃や光熱費の高騰、それからフィッシュ・アンド・チップスの材料費の高騰なども関係しています。そうした中で、引き続き老舗のパブがどんどん数を減らしています。痩せ薬の普及が進めば、こうした流れがさらに加速するかもしれません。
使用後のリバウンド
一度痩せ薬による治療を開始した後に、それをやめた場合、いわゆるリバウンドのようなことが起こるケースも多いそうです。治療を始める前よりも、さらに多くの食べ物を摂取してしまう場合があるということです。治療をやめた途端、突然スイッチが入るように飢えを感じるようになり、何でも食べたくなってしまったという利用者の声も報道されています。そのため、一部の専門家からは、この治療薬は一度使い始めると、ずっとやめられなくなるのではないかといった指摘もされています。
マンジャロが普及しても、あまり明るい未来が待っていないような気がするのは私だけではないでしょう。暴飲暴食をしたり、太りやすい食事ばかりをして肥満になり、それを無理やり薬でコントロールする。それで本当に健康になれるのかと言われると、難しいのではないでしょうか。
日本の食育の重要性
そういう意味では、日本では小さい頃から学校給食などを通じて、食に関する知識や、バランスの良い食事を選択する力を身につける食育が行われています。このことは、非常に重要なことだと改めて感じます。
ご参考
富裕層に対する増税で富裕層が国外に大量流出し、これも景気にマイナスの影響を与えることになりました。そういう意味では、財政的な余裕がない中で、お金のかかる政策を急ぎすぎたというのもあるかもしれません。
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