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注意喚起、プライベートクレジット市場拡大問題


 アメリカのサブプライム自動車会社「トライカラー・ホールディングス」と、自動車部品メーカー「ファースト・ブランズ・グループ」が破綻したことをきっかけに、金融市場では「プライベートクレジット」と呼ばれる市場に対する不安が高まっています。この動きが金融システムを揺るがすような問題に発展し、リーマンショックのような事態を引き起こすのではないかという警戒感が広がっているのです。

 この記事ではこの「プライベートクレジット市場」とは何なのか、なぜ今問題となっているのか、そして日本の金融機関もこの問題と無縁ではないという点について、詳しく説明します。

プライベートクレジットとは何か

 まず、プライベートクレジットとは未上場企業への融資のことを指します。似た言葉で「プライベートエクイティ(PE)」というものがありますが、こちらは未上場企業の株式投資を意味します。
 未上場企業は開示される情報が少ないため、投資リスクが高くなります。
そのため投資家は高いリターンを求め、ハイリスク・ハイリターンの投資としてPEが発展してきました。
 プライベートクレジットも同様で、情報が少なくリスクが高いため、上場企業への融資よりも高い利回りが要求されます。

 このような投資を行うのが「プライベートクレジットファンド」や「プライベートエクイティファンド」です。こうしたファンドは「オルタナティブ資産」として位置づけられ、伝統的にはポートフォリオのごく一部に組み入れるのが一般的でした。

急拡大する市場規模

 では今、このプライベートクレジット市場がどれほどの規模になっているのでしょうか。

 現在、おおよそ2兆ドル、日本円にして300兆円を超える規模にまで拡大していると見られています。過去15年で市場は10倍以上に膨らんだとされており、世界的に巨大な投資分野のひとつとなりました。

 今年に入って資金流出が起き、市場規模はやや縮小しているものの、それでも2兆ドル規模が維持されています。アメリカをはじめヨーロッパでも、プライベートクレジットは中小企業を含む未上場企業の重要な資金調達手段となっており、ファンドを通じて証券化された形で世界中の投資家に販売されています。

プライベートクレジット市場拡大の背景

 では、なぜこれほどまでに市場が拡大してきたのか。その理由は大きく2つあります。

 1つ目は「投資家側の要因」です。
 2010年代以降、低金利の時代が長く続いたことで、投資家はより高い利回りを求めてリスク資産へと資金をシフトしていきました。2000年代にはあまり注目されなかったプライベートクレジット市場ですが、量的緩和による超低金利時代に入ると急速に脚光を浴びるようになりました。さらに2020年のコロナ禍で各国が大規模な金融緩和を実施し、アメリカの10年国債利回りが1%を下回る中、リスクを取らなければ資産を増やせないという状況が広がったことで、この市場への資金流入が一気に加速しました。

 2つ目は「金融機関側の要因」です。
 リーマンショック後の金融規制強化によって、銀行がリスクを取ることに消極的になったことが挙げられます。その結果、銀行ではなくファンドから融資を受けるケースが増え、プライベートクレジットが主要な資金調達手段の一つとなったのです。このような背景があって、市場は急拡大していきました。

ブーム化したリスク

 長年金融業界にいる人間であれば、こうしたプライベートクレジットが中小企業への融資であり、それなりのリスクを伴うことは理解しています。景気次第ではデフォルト(債務不履行)が起きることも珍しくありません。

 それにもかかわらず、2010年代以降の金融環境も相まって、プライベートクレジットは一種の「ブーム」となりました。業界全体が「やらないと置いていかれる」という雰囲気に包まれ、審査が甘くなり、リスクの高い案件にも資金が流れるようになっていったのです。その結果、わずか15年間で市場規模が10倍にまで膨らんだというわけです。
 このあたり、金融業界というのはいつも同じ過ちを繰り返すと感じざるを得ません。目先の収益に追われ、「とりあえずやってみよう」という姿勢が蔓延することで、必然的に質の悪い投資も増えていくのです。

金融当局もうまく対処できなかったり、機関投資家も回避できなかったりしてきたのがこれまでの歴史としてあります。
 多分これからも同じようなことが起こるでしょう。全てを予見して回避することは不可能だと思います。

金融危機の予見、歴史の教訓と個人の経験

トライカラーとファースト・ブランズ破綻の意味

 そうした環境の中で、リスクの高い企業も容易に資金調達ができる状態が続いてきました。今回のトライカラー・ホールディングスやファースト・ブランズ・グループの破綻は、まさにその構造が表面化したものといえるでしょう。

 私はこれを「氷山の一角」だと見ています。

 JPモルガンのジェームズ・ダイモンCEOも決算会見で「ゴキブリは1匹見つけたら、他にも必ずいる」と発言しています。つまり、今回の破綻の裏には、同様のリスクを抱える案件がまだ多数存在する可能性があるということです。

日本の金融機関への影響

 この問題は決して海外だけの話ではありません。日本の金融機関も、ここ数年「プライベートクレジットへの投資拡大」を中期経営計画などで繰り返し打ち出してきました。

 これは非常に危うい流れだと思います。

 さらに、日本の銀行や証券会社は自社で投資するだけでなく、富裕層向けにプライベートクレジットファンドを販売する動きも強めています。例えば、みずほフィナンシャルグループは昨年末に参入を発表し、今年5月からゴラブ・キャピタルというプライベートクレジットファンドと提携して販売を開始しました。

出所)みすほフィナンシャルグループ【2024/10/1】

 市場がすでに縮小し始め、問題が表面化している段階で顧客に販売するというのは、明らかにリスクを軽視した行動だからです。一体誰のためのビジネスなのか、そう思わざるを得ません。

今後も続くリスクと注意喚起

 今回の問題は氷山の一角に過ぎず、今後も同様のリスク案件が明るみに出てくる可能性があります。市場関係者の多くは以前からこうした事態を予想していましたが、それでも投資を止めなかった。この構造そのものが、金融業界の闇を象徴しているのです。この話題はニュースやマーケットで取り上げられる機会が増えるでしょう。
 プライベートクレジットという言葉を是非覚えておいていただきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考(注意喚起記事のまとめ)

■ 注意喚起、社債の個別銘柄への投資のリスク(2024/1/4)
■ 注意喚起、レバレッジ系のETFの現実とリスク(2024/8/31)
■ 注意喚起、証券マンを自宅に招くリスク(2024/11/11)

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