見出し画像

カンボジアのプリンスグループ事件の整理と影響


 カンボジアのプリンス銀行という比較的新しい銀行で、人々が預金を引き出そうと殺到し、いわゆる取り付け騒ぎのような事態になりました。銀行サービスの停止にまで発展したこの問題は、日本でも報道されているカンボジアにおける特殊詐欺に関わる事件と密接につながっています。
 この件に関連して2兆円以上のビットコインが押収されたとされており、まさに巨大な詐欺事件です。今回の事件は規模が非常に大きく、金融、マクロ経済、そして政治にまで影響を及ぼす可能性が出てきています。そこでこの記事では、このプリンスグループの問題について説明します。


出所)princeholdinggroup.com

米国が制裁を発表し取り付け騒ぎが発生

 そもそもなぜプリンス銀行に取り付け騒ぎが起きたのかというと、2025年10月14日に米国政府が大規模なオンライン詐欺に関わったとしてプリンス銀行を含むプリンスグループに対して制裁を発表したことがきっかけです。
 チェン氏という中国出身のカンボジア実業家が会長を務めるこのグループは、世界中の人々を標的に振り込め詐欺のような行為を行っていたとされています。プリンスグループは少なくとも10以上の詐欺拠点を運営し、そこへ強制的に連れてこられた移民などを働かせ、暗号資産を送らせるなどの詐欺行為を行っていたということです。

詐欺行為の強制

 詐欺拠点で働かされていた人々は監禁され、命令に従わない場合には暴行や拷問が行われていたとされています。数十万台のパソコンやスマートフォンを使い、数万以上の偽SNSアカウントを用いて詐欺を実行していたと報じられています。
 米国政府はプリンスグループが保有していた150億ドル以上の暗号資産を押収したと発表しており、その規模の大きさが分かります。近年、カンボジアだけでなくアジア各国でこうした詐欺拠点が摘発されるようになり、国際的な問題として注目を集めています。日本人が関与して逮捕されるケースも報道されており、すでに日本国内でも深刻な関心が寄せられている話題です。

欧米とアジアが次々制裁へ

 これらの動きの中で、アメリカがプリンスグループへの制裁を発表し、イギリス、香港、台湾も制裁に加わり、韓国も準備を進めていると報じられています。イギリスメディアでも10月半ば以降、この問題を積極的に取り上げています。
 イギリス政府はチェン氏が保有しているロンドン北部の21億円相当の高級住宅、さらに170億円相当のロンドンシティ内のオフィスビルやアパートなどを押収したと発表しました。香港にも不動産を保有しているとされ、複数の香港企業の株式を保有しているとも報道されています。また韓国にもプリンスグループの預金が97億円ほど残されているという報道もあります。

プリンスグループの表と裏

 このプリンスグループ、表向きは非常に健全な企業に見えていたという点が今回の事件をさらに複雑にしています。創業者チェン氏は2015年にグループを設立し、表向きは不動産業と銀行業を中心とする企業グループとして活動していました。首都プノンペンの大型ショッピングモールなどにも投資し、さらには多額の寄付や慈善事業にも積極的に取り組み、あたかも模範的な実業家のようなイメージを作り上げていました。

カンボジア王国首都プノンペン
出所)外務省

 しかし裏では、こうした詐欺拠点を運営して巨額の利益を得ていた可能性が指摘されています。

プリンスグループへの疑惑

 なぜこの企業がこれほど長期間にわたって犯罪行為を続けられたのかというと、政治家との癒着があったのではないかという疑いが持たれています。チェン氏は二人の首相の顧問を務めたとされており、政府からは公爵の称号まで与えられていました。
 中国人の若者がカンボジアに移住して10年ほどで公爵の称号を与えられるというのは異例で、相当深い関係があったことが伺えます。このため、国家ぐるみで犯罪組織を黙認してきたのではないかという疑念が強まっています。

国際社会による摘発で巨大組織の闇が露呈

 政治家まで巻き込んだ巨大な組織が犯罪で荒稼ぎしていた実態が、アメリカやイギリスによる制裁で一気に露わになったというわけです。チェン氏本人の経歴でさえ不明な部分が多く、どのような人脈を持ち、どのようにしてここまでの巨大グループを作り上げたのか、その詳細はまだ明らかになっていません。プリンスグループ以外の詐欺組織の幹部にも中国から移住してきた人が多いという報道もあり、中国犯罪組織との関係性も指摘されています。

アメリカと韓国にも影響

 アメリカでは多くの市民が詐欺被害に遭ったとされ、韓国では勧誘されてカンボジアに渡った学生が犯罪組織による拷問で死亡するという痛ましい事件も起きています。
 韓国政府は10月にカンボジアの一部地域に渡航禁止令を出し、国家情報院は最大2,000人以上の韓国人が特殊詐欺に関与している可能性があると発表しています。韓国も完全に無関係ではいられない深刻な状況です。

今後の見通しと私の考え

 アジアを拠点とした国際的な特殊詐欺が問題視される中、まさか大企業や銀行まで関わっていたとは、多くの人が想像していなかったでしょう。カンボジア国内では首相まで関わっていた可能性が指摘され、金融だけでなく政治的にも大問題となっています。プリンス銀行が今後通常営業を再開することは難しいでしょうし、銀行業界全体も混乱がしばらく続くと考えられます。
 国際社会からの厳しい目が集まる中、今後さらに新たな闇が暴かれていく可能性もあります。


ご参考

ただ一つ言えるのは、独裁政権の下で国民一人当たりのGDPが2,300ドル(世界161位)という貧困状態にある一方で、大統領の娘が10億ドル以上の資産を築いたという現実です。

メディアが報じないアフリカのブラックマネー

サイトマップ(目的別)はこちら

いいなと思ったら応援しよう!