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財政破綻したスリランカに見る高債務国の実情


 中国のいわゆる「借金漬け外交」によって、アフリカやアジアの多くの国々が持続不可能な債務を抱えているという話は、近年よく耳にするようになりました。スリランカもまさにそうした国のひとつです。スリランカが2022年に財政破綻に陥ったというニュースは、多くの方が記憶しているのではないでしょうか。

 ただ、その後スリランカがどうなったのか、債務再編で合意したという報道までは耳にしていても、その後の実情についてはあまり知られていないかもしれません。私は緊縮財政を推奨する立場ではありませんが、破綻した国がどのような道を歩んでいるのかを見ていくと、非常に厳しい現実、そして資本主義経済の限界のようなものも見えてきます。この記事では、財政破綻したスリランカの「その後」と、高債務国の実情についてお話ししたいと思います。

融資のピークは2016年
 2023年時点ですでに、中国からアフリカ諸国への新規融資は激減していました。実際、「借金漬け外交」という言葉が盛んに使われていたのは2010年代で、データ上も最も多く新規融資が行われたのは2016年です。

中国借金漬け外交とアフリカ諸国の不安定化

内戦後に中国が進出したスリランカ経済


 インド洋に浮かぶスリランカは、北海道よりもやや小さい面積に約2,000万人が暮らす国です。その地理的な位置から古くから海上交通の要衝とされ、大航海時代にはポルトガル、オランダ、そしてイギリスといった列強の植民地支配を受けてきました。第二次世界大戦後に独立を果たしましたが、1980年代から20年以上にわたる内戦が続き、国の発展は大きく遅れることになります。内戦の背景には、シンハラ人とタミル人という二つの民族の対立がありました。

スリランカ民主社会主義共和国首都スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ
出所)外務省

 内戦終結後、スリランカ政府は復興とインフラ整備に力を注ぐようになります。その過程で中国が大きな存在感を示し始めました。2012年までは、日本がアジア開発銀行を除く最大の支援国でしたが、同年以降は中国が日本を上回る支援を行うようになります。アジア開発銀行自体も日本が最大の出資国であるため、実質的に日本がスリランカ支援の中心でしたが、2010年代以降は中国による対スリランカ債務の拡大が目立つようになっていきました。

「借金漬け外交」と呼ばれたスリランカの苦境

 スリランカの対中債務が国際的に問題視されるようになったのは2017年のことです。スリランカ南部のハンバントタ港について、同国政府が中国企業に対して99年間の運営権をリースする契約を結んだことが発端でした。インフラ事業のために高金利で資金を借り入れ、返済が困難になると港湾の運営権を譲渡するという形で、中国が実質的な支配を強めたのです。
 この出来事以降、中国がインフラ融資を通じて影響力を拡大する「債務の罠外交」、「借金漬け外交」という批判がアメリカなどから高まりました。スリランカはその典型例として、国際的に注目を浴びることになります。

財政破綻と混乱の始まり

 スリランカ経済の崩壊は、コロナ禍とウクライナ戦争が直接的な引き金となりました。観光収入の激減、輸入エネルギー価格の高騰によりインフレが進行し、2022年9月には前年比73.7%という異常な物価上昇率を記録しました。慢性的な貿易赤字構造の中で外貨流出が止まらず、通貨安とインフレが進行。政府は同年にデフォルトを宣言し、反政府デモが起き、大統領が国外逃亡して辞任に追い込まれました。

略史:2022年5月
対外債務の支払いができずに史上初のデフォルトに陥る。マヒンダ・ラージャパクサ首相辞職。ウィクラマシンハ首相就任。

外務省

IMF支援と債務再編の経緯

 2022年3月、スリランカは国際通貨基金(IMF)との協議を開始し、同年9月に4年間で総額29億ドルの支援プログラムに合意しました。このプログラムでは、税制改革や金融緩和の段階的廃止、中央銀行の独立性強化、財政透明化、公的資金管理の改善などが条件とされました。

 一方で債務再編交渉は難航しました。

 再建国の上位には中国、日本、インドが並んでいましたが、中国とインドはいずれもパリクラブ(フランス財務省主導の債務再編協議体)に加盟していないため、調整は難航。2023年5月にようやく初会合が開かれ、2024年6月に最終合意に達しました。結果として約100億ドルの債務軽減が決まりましたが、ここに至るまで2年近くを要しました。内訳は中国輸出入銀行が42億ドル、パリクラブおよびインドが参加した再建グループが52億ドルでした。IMF支援と併せて、ようやくスリランカは危機的状況を脱したかに見えました。

経済回復と国民生活

 経済成長率は2022年がマイナス7.4%、2023年がマイナス2.3%と続きましたが、2024年にはプラス5.0%へと転じました。とはいえ、これは統計上の回復であり、実際の国民生活は依然として厳しい状況です。IMFの要請に基づく増税と歳出削減により、付加価値税(VAT)は2022年の8%から18%へと引き上げられ、所得控除の廃止や法人税の増税も行われました。さらに、インフラ開発計画は凍結され、公務員のリストラも進められています。
 医療や教育などの社会分野への支出も削減され、2025年の政府予算では医療分野がGDPの1.5%にとどまり、利払い費の5分の1という異常な状況です。こうした緊縮財政の結果、格差の拡大が深刻化しています。

債務再編の現実と高債務国の苦悩

 スリランカに限らず、多くのアジア・アフリカ諸国が高債務の罠に苦しんでいます。債務の一部が帳消しになっても、すべてが免除されるわけではありません。結局は国民からの徴税によって返済するしかなく、その負担は中間層や貧困層に集中します。富裕層は影響を受けにくいため、格差がますます広がるのです。
 2025年に国連貿易開発会議(UNCTAD)が発表した報告によれば、2024年の発展途上国の利払い総額は9,210億ドル(約140兆円)に達し、世界人口の約半数が教育費や医療費よりも利払いに多くの資金を費やしているとされます。これは、資本主義経済の構造的な限界を象徴する事例といえるでしょう。

資本主義の限界と今後の課題

 財政拡張政策を無制限に進めた結果、破綻後には厳しい緊縮政策が待ち受けています。富の再分配という本来の政府の役割は機能せず、結果的に格差は拡大。弱者にしわ寄せが集中する構造が、現代の資本主義経済の限界として浮き彫りになっています。
 
発展途上国の債務問題は、今後さらに深刻化していくことが予想されます。私たちはこの現実を他人事としてではなく、世界経済全体の課題として向き合っていく必要があるでしょう。


ご参考

 アフリカ諸国はこの10年以上、中国からの資金でインフラ開発を進めてきました。その過程で、中国企業との取引が増え、貿易でも中国が主要な相手国となりました。

中国借金漬け外交の深化とケニアの状況の整理

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