Z世代の解雇データに見る世代間のギャップ
最近、欧米ではZ世代と呼ばれる1990年代後半から2000年代前半に生まれた若者たちが次々と解雇されているという報道が見られます。「Z世代は使えないからすぐ首になる」などといった刺激的な見出しも増え、「社会はこのままで大丈夫なのか」、「若者が希望を失っているのではないか」といった議論が出ています。
この記事はその実態を丁寧に整理しつつ、なぜZ世代が不安を強めているのかという背景を改めて考えてみたいと思います。

Z世代と解雇データ
確かに最近の経済ニュースでは、解雇者のうち若手が占める割合が高いといった分析が目立ちます。しかし、それらは多くが調査会社や金融機関の独自レポートであり、必ずしも公的統計で裏付けられたものではありません。公的データを見ると状況は少し異なります。
Z世代の失業率
2025年7月時点でアメリカの失業率は全体で4.2%と、1年前とほとんど変わっていません。その中で25〜34歳(Z世代に重なる層)の失業率は4.8%から4.3%へとむしろ低下しています。一方、35〜44歳は3.2%から3.4%に上昇しており、「Z世代だけが解雇されて壊滅的な状況」という印象とは違います。
ただし、ドイツの保険会社アリアンツが出した調査では、「アメリカのZ世代の64%が来年までに解雇されることを懸念している」と回答しています。前年は55%でした。つまり実際に解雇されたというより「これから自分が解雇されるのではないか」という強い不安が広がっているのが現状だと言えます。

Z世代の不安
不安の背景にはいくつかの要因があります。第一に、この世代はスタートアップ企業やテック企業に多く就職しており、その業界で深刻な人員削減が起こっていることです。テック企業は2020年以降に急成長しましたが、インフレと金利上昇で資金繰りが厳しくなり、従業員の大量解雇を行っています。Z世代はそこに多く所属しているがゆえに、自分たちの未来に不安を抱えやすいのです。
Facebookなどを運営するメタもリストラを発表しています。同社CEOのザッカーバーグ氏は、新しい技術によって効率的に運用できるようになったため、多くの雇用はもう戻らないだろうと発言しています。
さらに、スタートアップ企業では即戦力やスピード感が重視されます。じっくり育てる余裕はなく、経営が苦しくなれば経験の浅い若手から切られていく傾向が強い。リーマンショックの時にも、50代の高給取りと並んで20代の若手も大量に解雇された経緯がありました。若い世代は会社にとって投資対象でありますが、景気が悪化すると真っ先にコスト削減の対象になってしまうのです。
リモートワーク世代特有の人間関係
もう一つの大きなポイントは、Z世代の多くがパンデミック以降に社会に出ており、社内の人間関係を構築する機会が極端に少なかった点です。
アメリカでは上司が解雇の最終決定権を持つことも多く、評価項目が曖昧な職種では「この人は一緒に働きやすいか」、「信頼できるか」といった対人印象が重視されます。上司に評価されるかどうかは、成果だけでなく社内の空気を読むかどうかも含まれます。Z世代はチャットでのやりとりには慣れていても、対面の雑談や根回しには慣れていません。結果として「コミュニケーション能力が足りない」と評価され、リストラ対象になりやすいという側面があります。
とある企業のアンケートによると、上司の主観的な評価によるよりも、AIに評価してほしいと答えた方の数が多いとのことです。社内政治の機会が減り、より効率的な業務ができることでしょう。
学生ローンと住宅ローン
Z世代の不安を語るうえで欠かせないのが借金の問題です。アメリカでは大学の学費が2000年代以降大きく上昇し、Z世代は多額の学生ローンを抱えて社会に出ています。さらに住宅価格も上昇しており、低金利時代にローンを組んだ上の世代と異なり、高い価格で家を買わざるを得ない状況にあります。「解雇されたらローンが払えない」、「人生が詰んでしまう」という恐怖心が非常に強いのです。
そのため、たとえ解雇されていなくても「もし首になったら終わりだ」という心理的ストレスが常にあり、不安感が数字としても表面化しているという構図です。
Z世代の魅力とコミュニケーションのギャップ
Z世代は「コミュニケーション能力が低い」と言われがちですが、実際には別の形の表現力を持っています。テキストや絵文字、短い動画によって自分の感情を効率よく伝える技術はむしろ高い。しかし、上司世代は対面コミュニケーションや根回し、電話文化に慣れているため「この世代は何を考えているのか分からない」となりがちです。職場環境が旧来的な形式のままなら、理解されず評価を落とすのは当然と言えば当然です。
この点が誤解を生み、さらに「Z世代は生意気で協調性がない」と見られてしまう悪循環を形成しています。
10年後の中心世代
Z世代の解雇問題は「実際に大量に解雇されている」というより、「リスクの高い業界に多く所属し」、「職場文化の変化に晒され」、「債務を背負い」、「人間関係が希薄である」ことから、他の世代より強い焦燥と不安を抱えているというのが実態です。これは単に若者の甘えという話ではなく、世代構造全体の問題として捉えるべきものだと思います。
リスクだらけの現代で社会に出たZ世代は、ある意味で最も過酷なスタート地点に立っているとも言えます。10年後にはこの世代が社会を支える存在になるわけで、今企業側や社会側がこのズレを放置したままでは世代間の分断が広がっていくばかりです。
世代間コミュニケーションのアップデートが必要
つまり「Z世代が首になって大変なことになっている」というよりは、「不安と負担がこの世代に非常に大きくのしかかっている」ということをまず理解する必要があります。雇用の安定、再教育の機会、世代間コミュニケーションのアップデートなど、解決には多方面のアプローチが必要でしょう。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ご参考
AIによる業務の自動化は、近年多くの金融機関で進められていますが、具体的な人員削減計画を公表したのは世界で初めてということで注目を集めています。
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