SpaceXのIPO、未知への挑戦を支える金融の役割
SpaceXのIPOについて、6月12日にも上場するということで、大変注目している方も多いと思います。今回のSpaceXの上場は、後々歴史的に見ても重要な出来事になるかもしれない、そんなビッグイベントになる可能性があります。この記事では、もっと大きな視点、人類の未知への挑戦と金融について解説したいと思います。
SpaceXが目指す壮大な計画
SpaceXが上場しますが、この会社が再利用可能なロケットを飛ばしています。主力ロケットであるファルコン9などは、高い信頼性と再利用技術を武器に、世界の商業衛星打ち上げ市場で圧倒的なシェアを誇っています。
ただ、SpaceXがやっているのはそれだけではありません。
スターリンクというインターネットサービス、については、そして将来構想としては、次世代の大型ロケット「スターシップ」によって、月面着陸や火星移住なども目指しているとしています。非常にロマンのある話ですが、そこで重要になってくるのが金融です。

大きなリスクのある事業を行おうとすれば、当然お金がかかります。その資金を調達することができなければ、どれだけ壮大な計画であっても成功させることはできません。今回のIPOも、将来的にSpaceXの壮大な計画を実行できるかどうかにおいて、非常に重要になってくる可能性があります。
大航海時代を支えた株式会社という仕組み
人間の歴史を振り返ると、未知への挑戦の中で金融が大きく関わってきました。15世紀半ばから17世紀半ばにかけての大航海時代、ヨーロッパの国々は新航路や新大陸の発見を求めて、大規模な探検や航海を行いました。アメリカ大陸が発見されるなど、社会の大きな転換期だったわけですが、この時も金融の役割は非常に重要でした。当時は船で航海するわけですが、悪天候の影響を受けたり、海賊に襲われたり、進路に迷ったりすることもありました。全く新しい未開の地を開拓するというのは、非常にリスクの高いものでした。成功すれば大きな利益を上げることができましたが、リスクが大きすぎて、一人でそのリスクを背負って航海に出るのはなかなか難しいものでした。
そこで登場したのが、株式会社という仕組みです。
広く一般から資金を調達して株券を発行し、出資者は有限責任を負うという仕組みが出来上がりました。初めての株式会社として設立されたオランダの東インド会社は、1602年に設立されたとされています。この株式会社という仕組みが開発されなければ、その後の大航海時代における発見や世界的な貿易も、もっと遅れていた可能性があります。そして、こうした金融技術を背景とした優位性もあって、この時代はオランダが競争優位な立場に立ちました。
産業革命とロンドンの資本家
金融との関係が非常に重要だったもう一つの歴史的な出来事として、産業革命もあります。産業革命というのは、18世紀から19世紀にかけてイギリスで起こった、石炭の利用によるエネルギー革命のことです。
なぜこの時代にイギリスだけが産業革命を成し遂げることができたのかについては、いくつかの要因があります。一つは、イギリスでは石炭がたくさん取れて、エネルギーの調達が容易だったことです。それから、いわゆる三角貿易によって、原料の供給地と製品を売りさばく市場を持っていて、どんどん貿易を拡大していきたいというニーズがあったことです。そして、三角貿易で得た利益が蓄積され、多くの資本家が生まれ、そうした資本家たちから大量の資金を調達することが可能だったことです。
もちろん、産業革命の要因は他にもたくさんあると思いますが、主要な要因を挙げるとすると、こうしたところになります。やはり資金調達ができたということは非常に重要だったと見られています。当時イギリスが大英帝国として世界の覇権を握るに至った背景には、ロンドンのシティの資本家の存在が大きかったというわけです。
技術の進歩には金融が必要になる
このように、人類がこれまで行ってきた未知への挑戦や新しい技術の開発においては、十分な資金を調達できるかどうかという意味で、金融が果たした役割は非常に大きかったのです。
1825年当時、多くの人が蒸気機関車が社会を変えるとは予想していませんでした。これは、新しいテクノロジーが受け入れられるには時間がかかることを示しています。AIや宇宙開発、暗号資産といった現代の革新技術も、その本当の力が社会に理解され、広く浸透するまでには時間を要するのかもしれません。
そうした意味で、今、宇宙で月や火星への計画を持っているSpaceXにおいても、その資金が十分に調達できるかどうかは非常に重要です。今回のIPOは、後々歴史的な出来事として語られる可能性もある、そうしたビッグイベントだと言えるでしょう。

SpaceXだけではない大型IPO
今回、SpaceXは企業価値が2兆ドル以上で、IPOに際して750億ドルから800億ドル、日本円で12兆円から13兆円を調達し、新たな株式を発行するとしています。
そしてSpaceXだけではなく、アンソロピックは6月1日に上場申請をして、秋にも上場を視野に入れているとされています。さらにOpenAIも6月8日に上場申請したと報道されていて、こちらも秋頃に上場かと言われています。これらの企業も、IPOに際して新たに株式を売り出すことになります。投資家はこれらの株式を購入するために資金を作る必要がありますので、現在保有している株式の一部を売る投資家も出てくるでしょう。すでに6月5日から8日にかけて株式市場が下落しましたが、大型IPOを控えた換金売りが、そうした下落の一つの要因になったと見られています。
秋に向けては、換金売りが市場の重石になる状況が続いていくことになるでしょう。このあたりは一般的にもよく言われていることですが、懸念と注目はそこだけではないと私は思っています。
アメリカだからこそ可能な巨大資金調達
これら3社の時価総額は、合計で640兆円を超える規模になる可能性があると見られています。このような巨大な新興テクノロジー企業が現れ、そうした会社がIPOを行って巨額の資金を調達するというのは、現状アメリカでしかできないことでしょう。仮に中国の企業が同じようなことをやろうとしても、市場からこれだけの規模の資金を調達することは難しいでしょう。
新しい技術の開発と金融基盤は切っても切り離せない関係にある。今回のIPOが無事に実施されれば、テクノロジーを支える金融という意味でも、やはりアメリカにかなうものはないということが改めて示される形になるでしょう。アメリカ離れやドル離れという言葉もよく聞かれますし、実際にアメリカのプレゼンスが低下しているのは間違いありません。ただ、先端テクノロジーとそれを支える金融基盤という点では、なんだかんだ言っても、まだアメリカにかなう国はないのです。
IPOが失敗した場合のリスクも
ただし、今回のIPOがこけてしまうと、その前提が狂ってくる可能性があります。例えばSpaceXが上場後に株価が暴落してしまうと、OpenAIやアンソロピックも危ないのではないかという見方が広がるかもしれません。そうなれば、それらの株式の売り出しに十分な需要が集まらなくなる可能性があります。
結果として、これまで想定していたほどテクノロジー企業が資金調達できないということになり、計画していたプロジェクトが遅れていくことになります。金融基盤が追いつかないために、技術開発にブレーキがかかるというわけです。そうした可能性もないわけではありません。
そのため、今回のIPOは単に株価が上がった下がったという話だけではありません。アメリカの技術的・金融的優位性が試されているという意味で、世界経済、そして政治面においても非常に重要だと言えるでしょう。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
ご参考
相場を見ていく上で、下げ相場の中でどこまで下がるのか、いつ頃まで下げが続くのかを予想するよりも、上げ相場の中でいつまで上がるか、どこまで上がるかを予想する方が難しいものです。まだこの相場は続くかもしれません。
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