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ギャンブルと投資の違いとファイナンスの基礎


 先日、小学生の息子と話をしていたのですが、「最近ゲームセンターに行こうって言わなくなったよね」と聞いたところ、「いくらやってもお金がなくなるだけだから行くのをやめたんだ」と言っていました。どうやらやっとそのことに気づいたようです。
 これ自体は当たり前のことですが、意外とそのことに気づかない人たちもいるようです。そして、この点はファイナンスの入門部分を理解するうえで非常に重要なところでもあります。この記事では、ギャンブルと投資や金融ビジネスについて解説したいと思います。

ギャンブルの仕組みと期待値の意味

 日本のゲームセンターはだいたいメダルを購入し、そのメダルを賭けて遊ぶ形ですが、イギリスのゲームセンターでは本当のお金で賭け事をします。例えばイギリスのコインプッシャーは、本物のお金を使ってお金を取るゲームになっています。しかし、お金を使うか偽物のコインを使うかに関わらず、いくらやっても勝てないという点は同じです。

出所)pond5.com

 こうした話をすると「いくらやっても勝てないなんて、やってみないと分からないじゃないか」とおっしゃる方もいるかもしれません。確かに次の1回がどうなるかは分かりませんし、次の1回だけは勝てるかもしれません。しかし、そのようなゲームにおいて顧客側の期待値はマイナスになっているため、回数を重ねるほど結果は設定通りに収斂していきます。

 この「期待値」というのは、起こる確率とその時に得られる金額を掛け合わせたものを指します。もし顧客の期待値がプラスになるのであれば、店側の期待値がマイナスになっていることになり、そんな経営をしていたらすぐにそのゲームセンターは潰れてしまうでしょう。つまり店側の期待値はプラスになっていなければ成り立たず、顧客側の期待値がプラスの状態は通常ありえないのです。よって、回数を繰り返すほどマイナスの期待値に沿って結果がマイナスになっていくわけです。

期待値マイナスの賭けとファイナンスの入り口

 こうした賭けの期待値が分かっているにもかかわらず、期待値がマイナスの賭けに挑戦する人たちがいます。こうした人はファイナンスの世界に入門できていないと言えます。金融・ファイナンスという学問は、「将来どうなるか分からないけど、確率とその時得られるリターンは分かっている」ような場合に、最適な判断はどれかを考える学問です。そこに時間の概念や金利、リスクのない資産の存在などが加わり、その中でどの選択をすべきかを考えます。
 それでもなお期待値がマイナス、つまり確率論的にやるべきではない賭けをする人は、ファイナンスの世界の入り口にも立っていないと言えます。ファイナンスの世界ではこうした人たちを「リスクラバー」と呼びますが、要はギャンブラーだということです。私の息子はこうした「いくらやっても勝てない勝負」をやめたので、やっとファイナンスの世界の入り口に来たと言えます。

ギャンブルとパチンコ店の期待値構造

 日本のパチンコ店についても同じことが言えます。店舗側に利益が出る仕組みにはなっていますが、あまりに店舗側の期待値が高すぎると顧客は面白くなくなり、その店舗に顧客が来なくなってしまいます。ですからゲームセンターやパチンコ店は、同業他社と同じぐらいの勝率に設定する必要があり、ボロ儲けができるわけではありません。しかし一定の確率で利益を得られる仕組みにはなっています。結局、主催者側が儲かる仕組みです。

為替取引

 この話は為替取引の話をするときにもよく言われます。為替取引は基本的に「誰かが儲かれば誰かが損をする」世界、つまりゼロサムゲームと言われます。株や債券は配当や金利があるため状況が少し異なりますが、為替の世界はギャンブルに非常に近いです。さらに取引を仲介するブローカーに手数料を払うため、実際にはゼロサムではなく、市場参加者の利益の合計はマイナス、つまり期待値がマイナスの勝負になっています。

 そのため顧客は取引を重ねるほど、トレード戦略が不確かな場合はリターンがマイナスに向かいます。取引をすればするほどそうなるのです。

ブローカーのリスクヘッジ

 ブローカーは顧客との取引に応じてポジションを抱える場合もありますが、市場でそれを解消したり、ヘッジしたりしてリスクを抑え、利益を確定させます。ブローカーは一か八かの賭けをするのではなく、一定の確率で期待値がプラスになるようにリスクをヘッジしながら確実に儲けるのです。
 金融ブローカーとゲームセンターは、扱う商品は違いますが考え方は同じで、一定の確率で儲けが出る取引をたくさん行うことで利益を上げています。

債券ディーラーとブローカーの儲けの実態

 債券の世界でも、ディーラーとの取引を仲介するブローカーがいて、取引が多ければ多いほどブローカーは儲かります。ブローカーはギャンブルで言えば主催者側の立場にあり、ディーラーが儲かったと騒いでいても、実際はブローカーの方がより儲かっていることも多いのです。
 
ギャンブルの世界も同様で、儲かったと言っても主催者に踊らされていただけという場合が多いのが実情です。

金融ビジネスの主催者側として利益を得る仕組み

 こうしたことから、金融ビジネスにおいてもギャンブルの主催者側のような立場の人たちが、より安定的に利益を得ています。多くの金融業者がどうやってギャンブルでいう主催者側になるかを考えており、分かりやすい例では証券取引所が主催者側の立場ですし、証券会社もなるべく主催者側になろうとしています。資産運用会社も同様です。

ブラックロックの例

 ブラックロックという会社は2000年代にETFという商品を提供し、業界ナンバーワンの会社になりました。この会社の登場で誰でも簡単にいつでも大量にファンドを売買できるようになりました。機関投資家はETFを利用して瞬時にリスクを取りたいところを取れるようになりましたし、債券のETFでは現物の債券との交換まで可能で、個別銘柄の細かい取引はブラックロックに任せられるようになりました。ETFの普及で取引がこれまで以上に活発化し、結果としてブラックロックは10兆円以上の資産を預かる運用会社になりました。

 しかし彼らは自らリスクを取っているわけではなく、リスクを取りたい市場参加者にその機会を提供しているだけであり、自分たちは一定の確率で着実に儲けることができる、ギャンブルで言えば主催者側の立ち位置にいます。

ファイナンスの基礎

 こうした発想の全ての原点は、「負けると分かっている取引をしない」ことにあります。全てはそこから始まっています。これが金融ビジネス、ファイナンスの基礎です。金融のプロはみな理解しており、ヘッジファンドのマネージャーたちでさえ、むやみにリスクを取っているわけではありません。
 こうした視点で考えると、為替で無謀な取引を繰り返す人たちがなぜ市場の養分にしかなっていないのかが理解できるのではないでしょうか。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考

世界中の金融当局者や政治家ともコネクションを築き、野心的に動いているのは間違いありません。自分たちにとって有利になるような法改正も含めて働きかけたりしているのは間違いないでしょう。

世界最大の資産運用会社ブラックロックの話

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