メディアが報じない日銀の情報管理とリーク記事
2024年7月31日、日本銀行(日銀)は0.25%の追加利上げを決定しました。しかし、その前日の日本時間深夜に、日銀が0.25%の利上げを検討しているというリーク記事が一部のメディアから出ました。このニュースに注目している多くの日本の方々は、またかと感じ、夜中に違和感を覚えたのではないでしょうか。
植田日銀総裁就任以来のリーク記事
植田日銀総裁の就任以来、一部のメディアからリーク記事が出ることが度々あります。なぜ一部のメディアだけに事前に情報を流すのかという問題が指摘されています。昔は普通だったかもしれませんが、記者が為替などで利益を得ることができるため、倫理的には問題があります。
2024年7月31日に日銀が利上げを行いましたが、7月30日までの予想では今回は利上げしないという見方が多かった中、前日の深夜にNHKが0.25%の利上げを検討していると報道しました。
前日の深夜に0.25%への利上げ検討というリーク記事が出ていて、7月30日のニューヨーク時間に大きく円高が進んでいたため、0.25%までの利上げは一部織り込まれていました。そのため、この発表自体はそこまでインパクトはなかったと思います。
植田総裁の政策変更とリーク記事の関係
植田総裁の就任以来、政策を変更する場合に事前にリーク記事が出ることが何度もありました。今回もこの記事が出たことで、マーケットは利上げを織り込む展開となり、為替市場では大きく円高ドル安になりました。黒田日銀総裁の時は、政策変更を行う場合でもマーケットを驚かせるスタンスだったため、事前に織り込ませることはほとんどありませんでした。
リーク記事の意図とその真偽
植田総裁の方針として、なるべくマーケットにサプライズを与えないようにするため、政策変更の前にリーク記事が出ることが多くなっています。この問題について、事前に政策変更をマーケットに織り込ませたいという意図があるのではないかという見方が多いですが、本当にそうなのかは分かりません。わざと漏らしたわけではなく、どこかから漏れているのではないかという見方もあります。
黒田日銀総裁時代のリークとその調査
2016年、黒田日銀総裁の時代にマイナス金利を検討している時に、政策決定前にそれが報道されたことがあります。この時は日銀も問題意識を持ち、なぜ漏れたのかを調査しましたが、原因は分かりませんでした。組織的に漏らしているわけではなく、漏れてしまったのか、その辺りは定かではありません。
メディアと金融機関の関係
私は日銀の内部の人間ではないので、どういう風に情報が漏れているのか、その仕組みは分かりません。しかし、日本の金融機関で仕事をした経験から言うと、メディアとは密接な関係になっているのではないかと思います。メディアと企業、官僚も村社会のような関係になっています。
広報担当者と記者の懇親会
金融機関の場合、広報担当の部署があり、同じ業界の広報担当者とメディアの担当記者が集まって懇親会をしたり、公式な集まりもありますが、それとは別に銀座で飲んでいることもあります。
私が以前勤めていた金融機関の広報担当者は、週に5回ぐらい記者と飲んでおり、私も呼ばれて参加したことがあります。
情報のリークとその決定方法
企業側が記事にして欲しい話があると、村社会の輪を乱さないように、前回はA新聞にリークしたから今回はB新聞にするというように、村の中でどこから情報を出すか決めているようです。コロナパンデミック後もそのような飲み会が続いているかは分かりませんが、今でもメディアと企業、官僚は密接な関係にあるのは間違いないでしょう。
日銀の情報管理の見直しの必要性
今回、日銀がそういう形でリークしたかは分かりませんが、毎回別のメディアからリーク記事が出ていることを見ると、やはり村社会があるのではないかと思います。こういうメディアとの密接な関係も含めて、日銀は情報管理の見直しを行う時期が来ているのかもしれません。植田日銀総裁になってから、日銀の情報管理が注目されるようになり、今の時代に大丈夫かという問題が出てきています。
リークの問題とその影響
わざとリークしているのか、漏れてしまっているのか、どちらにしても問題です。世界の主要な中央銀行で政策決定の内容が事前に漏れるのは日本だけです。FRB、ECB、バンクオブイングランドでそのようなことが起こることはありません。
日本の金融関係者の反応
このようなことが日本で起こっていて、金融関係者は違和感を持っている人もいるでしょうが、あまり何も言いません。この問題を指摘しているのは一部のインフルエンサーと野党議員、海外メディアぐらいです。なぜ日本の金融関係者が何も言わないのかというと、金融村で最も力のある財務省がこのリークに関わっているかもしれないから、口を出さない方がいいという話だと思います。
もちろん、メディアは情報をもらっている側なので、メディアも何も言いません。情報管理の甘い中央銀行だと、海外投資家から低く評価される可能性もあり、日本の金融市場の信頼性にも関わる問題です。もう少し指摘する人が出てきてもいいのではないかと思います。
インサイダー取引と倫理的問題
こうした政策決定の重要な情報が事前にリークしたり漏れたりしていることについて、インサイダー取引にならないのかという質問もよく受けます。結論を言うと、インサイダー取引にはなりません。しかし、倫理的には問題があります。
インサイダー取引とは、上場会社の関係者等が、その職務や地位により知り得た、投資者の投資判断に重大な影響を与える未公表の会社情報を利用して、自社株等を売買することで、自己の利益を図ろうとするものです。
日銀の情報漏洩とインサイダー取引
インサイダー取引とは、上場企業の未公開の内部情報を利用して投資判断を行い、利益を得ようとする行為です。日銀は上場企業ですので、日銀自身の業績に影響を与えるような情報をメディアの記者に漏らし、その記者が日銀の株を売買したらインサイダー取引になります。しかし、日銀が利上げをするという情報を記者に漏らし、その記者が為替やその他の日本株を取引してもインサイダー取引にはなりません。
インサイダー取引にはなりませんが、倫理的にはやってはいけない行為です。機関投資家の場合、こうした倫理違反を防ぐための規定を設けているところがほとんどです。公開されていない情報を元に取引してはいけませんし、外部に漏らすこともやってはいけません。
今後の展望
すでに海外投資家や国民からも不信感が生じていると思いますが、これ以上問題が大きくなる前に、日銀は情報管理の見直しを行うべきです。経済大国の中央銀行がYouTuberに情報管理が甘いと言われていたらおしまいです。金融関係者もメディアもこの件をほとんど指摘しませんが、私は引き続き取り上げていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考
