政治と経済とインフレとセンチメントの関係
都議会議員選挙が終わって、次は参議院議員選挙が控えていますが、自民・公明はここでも苦戦を強いられるだろうということで、世界からも注目が集まっています。市場関係者に話を聞くと、「自公は苦戦するかもしれないけど、過半数割れまではいかないだろう」という見方がメインシナリオになっているようです。
しかし、私はもう少し厳しめに見ています。
この記事では、政治と経済、そしてインフレの関係から日本の政治について解説します。
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インフレの政治的影響
経済と政治の関係を考えるうえで、私は今の主流の予測が「インフレをやや軽視しているのではないか」と感じています。日本はGDPの成長率、つまりインフレを除いた実質成長率で見ると、2021年が+2.7%、2022年が+0.9%、2023年が+1.4%、2024年は+0.1%と、決して高成長とは言えませんが、少なくともマイナス成長にはなっていません。

一方で、ドイツなど欧州ではマイナス成長の国もありますから、それに比べると日本の状況は「まあマシではないか」と見ることもできます。
もちろん、物価上昇に賃金上昇が追いついていないなど、決して素晴らしい状況ではありませんが、少なくとも数字だけを見るとそこまで悪くはない。しかし、ここで私は「国民の不満が過小評価されているのではないか」と見ています。
実質成長よりも消費者心理
私の見方を端的に言えば、インフレが進行してくると、たとえ実質GDP成長率がプラスであっても、国民や一般消費者の心理、つまりセンチメントは悪化しやすくなるということです。
これは日本に限らず、世界的にも同様の傾向があります。経済指標には、消費者や市場参加者の心理状態を数値化した「ソフトデータ」と、実際の経済活動の結果を示す「ハードデータ」とがありますが、近年はこの2つに乖離が見られるケースが増えています。
つまり、消費者のセンチメントは悪化しているのに、実際の消費活動自体はそこまで落ち込んでいないという現象です。
インフレの消費者心理に与える影響
この現象が起こる一因と考えられているのがインフレです。インフレ率が高くなると、人々は早めに買っておこうという心理が働き、それなりに消費が続くことになります。加えて、賃金が多少なりとも上がることも一因でしょう。
一方で、買い物のたびに「また値上がりしている」と感じることが、消費者の心理にじわじわと悪影響を与えていきます。つまり、消費はしているのに満足感が得られず、不満だけが溜まっていく。この結果、センチメントは悪化していきます。
もちろん、こうしたセンチメントの悪化には、地政学的リスクや関税の問題など、他にも要因はありますが、インフレも大きな要素の一つになっています。
インフレと政治
このように、実質GDP成長率がそこまで悪くなくても、インフレによって消費者の心理が悪化することによって、政治的には非常に厳しい状況になることがあるわけです。これはアメリカの2022年の中間選挙の時にも見られましたし、2024年の大統領選挙に向けても、インフレ抑制が最重要テーマとして議論されてきました。
また、2023年のトルコ大統領選挙で苦戦を強いられたエルドアン大統領のケースも同様です。トルコはGDP自体はマイナスになっていなかったのですが、非常に高いインフレ率の中で消費者心理が悪化し、それが政権への不満に直結しました。
何も起こらなければ緩やかなリラ安が続き、エルドアン大統領による発言や政治的な混乱が起これば、そこから一段とリラが売られる。そうした相場展開が今後も続いていくのではないかと私は見ています。
日本のセンチメント
では、日本の消費者心理はどうなのかというと、「消費者態度指数」という指標があります。これは50を上回ると消費意欲が旺盛、50未満であれば意欲が減退していることを示すものです。
日本ではリーマンショック以降、この指標が50を上回ったことはありません。その上で、2024年12月から5ヶ月連続でこの指数は下落し、5月にはようやく6ヶ月ぶりに上昇に転じたものの、現在の水準は32.8にとどまっています。依然として消費者の消費意欲は非常に低調であり、右肩下がりの傾向が続いています。
この他にも「景気ウォッチャー調査」など、センチメントを表す各種指標も同様に低迷しており、こうしたデータを見る限り、消費者の不満はかなり溜まってきているように見えます。
日本の物価高と世界の比較
そして、物価上昇率です。日本の2025年5月の消費者物価指数は、前年比で+3.7%となっています。実はこの水準、世界的に見てもかなり高いです。
アメリカは2.4%、
ユーロ圏は1.9%、
イギリスは3.4%、
オーストラリアは2.1%、
カナダは1.7%
と、いずれも日本より低い数字です。つまり、今の日本は先進国の中でもダントツで物価上昇率が高い国となっているのです。
主食価格の高騰が与えるインパクト
特に、消費者心理を大きく悪化させるのが主食の価格です。だからこそ、日本では長らくコメの価格をコントロールしてきましたし、世界的にも小麦価格をコントロールしている国は多くあります。しかし、そのコメの価格が現在、高騰しています。2025年5月の消費者物価指数で見ると、日本のコメの価格は前年比で+101.7%と、驚異的な上昇を記録しています。
日本では米の価格が全国平均で5kgあたり4,200円程度となっており、ヨーロッパの感覚からすると非常に高価な主食です。こうした背景もあり、GDPの数字以上に、米の価格は日本人にとって大きな意味を持つと言えるでしょう。
いくら穏やかでデモをあまり起こさない日本人とはいえ、ここまで来ると政治不信が高まらないと考える方が、むしろ楽観的すぎるのではないでしょうか。
日本政治の現状と今後
経済的な側面から見ると、日本の政治状況に対する国民の不満は、市場参加者が考えている以上に大きくなってきていると、私は見ています。すでに大きな政治的転換が起こってもおかしくないような環境に入っているのではないかというのが、私の認識です。
もちろん、実際の選挙でどうなるかは、与党から票が流れた先に受け皿があるのかどうかなど、政治的な要素も大きく関係しますので、その予測は専門家に委ねたいと思いますが、経済の現状を見た限りでは、政治的地殻変動が起こっても全く不思議ではない状況です。
この先、世界的にも日本の政治情勢に対する注目はますます高まっていくでしょう。
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