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下落局面での機関投資家の戦略と日本特有の動き


 2025年3月10日、日本時間の夜に日経平均株価は大きく下落し、37,000円を割り込みました。欧米の株式市場も同様に軟調でした。アメリカ市場でも、依然として悪材料が続くとの見方が広がっていました。
 こうした市場環境の中で、機関投資家がどのような動きをしているのかについて解説します。

機関投資家の種類と戦略

 機関投資家と一口に言っても、さまざまな種類が存在し、ヘッジファンドの中にも多様な戦略があります。ソブリンウェルスファンドと呼ばれる政府系ファンド、銀行や生命保険会社、年金基金など、それぞれ異なる運用手法を持っています。これまでもさまざまな機関投資家の運用について解説してきました。

アクティブファンドは、TOPIXやS&P500といったベンチマークを上回ることを目指すファンドです。

株価急落時の機関投資家の投資行動

リスクパリティファンドというのは、すごく簡単に言うとポートフォリオのリスクを一定に保とうとする戦略をとります。

ボラティリティに着目したリスクヘッジトレード

 今回は、株式ファンドの運用を担当するファンドマネージャーの動きについて見ていきます。

ファンドマネージャーが今していること

 株式を運用するファンドマネージャーたちは、市場の下落局面で割安な銘柄を探すことに注力しています。市場全体が下落している中でも、本来の企業業績や成長性を考慮すると売られすぎている銘柄があるため、そうした銘柄の保有を増やし、次の上昇局面でのリターンを最大化しようとしています。こうした局面では、配当利回りの高い銘柄が選択されることもあります。

銘柄の入れ替え

 相場が再び上昇に転じることを見越し、何もしないのではなく、下落局面の中で少しでも割安な銘柄や値上がりが期待できる銘柄へ入れ替えることで、将来の利益を確保するというのが彼らの仕事です。銘柄の入れ替えは、企業分析を担当するアナリストと協力しながら進められます。
 特に、大きく相場が下落している時期には、次の上昇局面に向けての「仕込みの時期」となるため、ファンドマネージャーは多忙を極めます。このタイミングで適切な銘柄の入れ替えを行えるかどうかが、次の上昇相場での運用成績に大きく影響します。

下落局面で考えるべきこと

 個人投資家が機関投資家と同じことをするのは難しいかもしれませんが、下落局面で考えるべきことは共通しています。次の上昇局面で利益を得られそうな銘柄を見つけることが重要です。当然、景気動向や経済状況の変化に応じて選ぶべき銘柄も変わってくるでしょう。
 個人投資家の場合、機関投資家のようにアナリストのサポートを受けることは難しいですが、日頃から特定の銘柄をウォッチし、継続的に分析することで、適切な投資判断を行うことができます。

 皆様も、自分の仕事や趣味の領域では、自然とトレンドや動きを追い続けている、誰にも負けない強みのようなものがあると思います。仕事や趣味に関連することに興味を持ち、様々な視点で分析を続けることは非常に有益です。

情報収集の具体例と分析の方法、そして分析の実践

ポートフォリオ管理者の行動

 機関投資家の中には、株式ファンドを運用するファンドマネージャーの上位に、ポートフォリオ全体を管理する運用担当者が存在します。
 
彼らは、株式だけでなく債券やその他の資産も含め、全体の資産配分を決定する役割を担っています。こうした資産配分の管理を「アセットアロケーション」と呼びます。

 現在の市場環境では、多くの機関投資家がリスクを抑える方向に動いていると考えられます。例えば、昨年8月にはアメリカでリセッション懸念が急速に高まり、日経平均株価も過去最大の下落幅を記録しました。

2024年8月5日の日経平均株価の下落幅は、ブラックマンデーを超えて過去最大となりました。

ブラックマンデーの振り返り

 その際、多くの機関投資家が株式のリスクを抑えるために売却を進めました。通常、時間的余裕があれば、株のファンドマネージャーに株式の売却を指示するのですが、市場が急落した場合には、ゆっくりと対応する時間がないため、先物を売ってリスクを軽減するといった対策が取られることが一般的です。

今回の下落局面の対応

 しかし、今回の下落では、経済指標が急激に悪化したわけでもなく、金融危機につながるような材料が出ているわけでもありません。悪材料としては、トランプ政権時代の関税政策の影響や、割高だったハイテク株の調整などが挙げられますが、これらは以前から指摘されていたものであり、アメリカ経済全体が危機的状況に陥るほどのものではありません。
 そのため、昨年8月や2023年のシリコンバレー銀行破綻時のように、慌てて先物を売るような動きは見られず、値動きも比較的穏やかです。

日本の機関投資家特有の動き

 3月末に決算を迎える日本の機関投資家の中には、海外投資家とは異なる動きをしているところもあります。特に、債券の損失確定と株の利益確定を組み合わせた売買を行っている可能性があります。

債券投資の収益は全く変わりませんが、会計的な見栄えが大きく変わるため、こうした会計上の都合が企業の意思決定に影響を与えることがあります。

債券投資の収益と会計の解説(農林中央金庫の件)

 現在、多くの国内機関投資家は、国内債券で大きな含み損を抱えています。通常、債券は満期まで保有すれば損失は発生しませんが、保険の解約や預金流出などの理由で売却を余儀なくされた場合、含み損が実現損となります。そのため、機関投資家の中には、年度末までに債券を売却して損失を確定させ、その損失とバランスを取るために株の利益確定売りを行うところがあると考えられます。こうした動きが、日本株の軟調な推移の一因となっている可能性があります。

配当狙いの投資戦略

 個人投資家の中には、配当の権利確定前に株を買いたいと考える人も多いでしょう。一部の機関投資家も、キャピタルゲインよりもインカムゲイン(配当収入)を重視し、3月の権利確定日前に配当利回りの高い銘柄を購入することがあります。ただし、機関投資家の場合、投資額が大きいため、インカムゲイン目的でも3月後半に一気に買いを入れるのではなく、事前に分散して買い付けを行うのが一般的です。

 今後も、機関投資家の動向について注目したいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。


ご参考(機関投資家の記事のまとめ)

■ 生命保険会社の国内債権含み損の影響について(2024/8/12)
■ 世界最大の資産運用会社ブラックロックの話(2024/8/17)
■ 機関投資家の「騙し」について(2024/9/18)

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