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北陸発8番らーめんがSDGs融資を受けた理由


 この記事ではラーメン屋の解説をします。単にラーメンについて語るということではなく、金融の話を絡めて説明したいと思います。
 今回取り上げるのは、北陸地方のラーメンチェーン「8番らーめん」を展開する株式会社ハチバンです。

出所)hachiban.co.jp

 この会社が、SDGs(持続可能な開発目標)に関する取り組みを評価され、北陸銀行から特別な融資を受けることになったというニュースがありました。私は特にSDGs推進派というわけではないのですが、今回は金融という視点からこの話題を見ていきたいと思います。

出所)株式会社ハチバン【2025/8/29】

子どもの頃の記憶と8番らーめん

 北陸に縁のない方からすれば関心が薄い話題かもしれませんが、私にとっては少し特別な意味があります。
 子どもの頃、父親の仕事の関係でいくつかの地域を転々としていたのですが、最も古い記憶が北陸地方に住んでいた時のことです。私が住んでいたのは1980年代。当時、8番らーめんは勢いよく店舗を拡大していて、私の家の近くにも新しい店舗ができ、家族で食べに行った記憶があります。どんなラーメンを食べたかまでは覚えていませんが、大人になって北陸を訪れた際、8番らーめんの看板を見ると懐かしさを感じます。

出所)8番らーめん

 そうした思い出のあるお店が金融ニュースに登場したことで、私としてはちょっと嬉しい気持ちになりました。「地元企業にはぜひ頑張ってほしい」という思いもあり、今回この件を取り上げることにしました。

北陸銀行が実施した「ほくほくサステナブルファイナンス」

 今回のニュースの詳細ですが、北陸銀行と株式会社ハチバンが、「ほくほくサステナブルファイナンス契約」を締結したというものです。ここでいう「ほくほく」とは、北陸銀行と北海道銀行が2004年に経営統合して誕生した「ほくほくフィナンシャルグループ」のことを指します。

出所)ほくほくフィナンシャルグループ

 このグループが提供しているほくほくサステナブルファイナンスとは、SDGsの目標達成に向けて積極的に取り組む企業に対して、特別な融資を行う制度です。つまり、社会的・環境的価値の高い取り組みを行っている企業に対し、金融面から支援を行うという仕組みです。

8番らーめんが評価された取り組み

 では、8番らーめんはどんな取り組みが評価されたのでしょうか。北陸銀行のホームページではレポートが公開されています。正直「こんなの誰が読むんだ」と思う方もいるかもしれませんが、私は全部しっかり読みました。

出所)北陸銀行

 いろいろな項目がありましたが、私が特に興味深いと思った点をいくつか紹介します。

食品ロス削減への工夫

 まず一つ目は「食品ロス」に関する取り組みです。食品ロスとは、食べ物を捨ててしまうことを指します。飲食業界では、調理過程や仕入れの段階でどうしても廃棄が出てしまうため、これをゼロにするのは非常に難しいのが現実です。
 8番らーめんでは、まず食品ロスの発生自体を抑える工夫をしています。たとえば、主力メニューである「野菜らーめん」に使うキャベツの芯の部分。通常であれば廃棄されるこの部分を、餃子の具材として再利用するなどして、不要な廃棄を減らしています。また、再利用率についても2015年には約57%だったものが、現在では90%以上に向上しているとのことです。こうした地道な努力は非常に素晴らしいと思います。

野菜らーめんがもたらす健康

 次に面白かったのが、「美味しく健康的な食の提供」という観点からの評価です。外食産業は一般的に高糖質・高カロリーだと言われがちですが、8番らーめんは野菜を豊富に取れる「野菜らーめん」を主力メニューに据えてきました。この点が、健康的な食生活への貢献として高く評価されています。「野菜らーめんなんて他にもあるだろう」と思う方もいるかもしれませんが、こうした視点で丁寧に評価してレポートにまとめるあたりが、いかにもSDGsらしいと感じました。

出所)8番らーめん

フランチャイズ経営と地域社会への貢献

 さらに興味深かったのは、フランチャイズに関する部分です。8番らーめんには、複数店舗を経営するメガフランチャイズもありますが、一方で「1店舗1オーナー制」で家族経営を重視してきた点が評価されています。夫婦で一緒に働ける店舗運営を目指しており、地域の中小企業の繁栄にも貢献しているとされます。
 
地元の中小事業者にビジネスチャンスを提供し、地域経済を支える仕組みを作ってきたことが、北陸銀行からの評価につながったのです。

第三者評価と金融的な意味合いと狙い

 レポート後半には、第三者機関による評価も掲載されています。格付け会社JCR(日本格付研究所)のアナリストが、「環境省が定めたインパクトファイナンスの理念に沿った取り組みである」と評価しています。もちろん、このレポートは北陸銀行がJCRに依頼し、費用を支払って作成されたものです。

 では、なぜ銀行はこうした長大なレポートを作るのか。

 その理由の一つは、機関投資家へのアピールです。機関投資家の中でも、特に大手金融グループ傘下の投資会社は、「ESG(環境・社会・ガバナンス)」要素を投資判断に取り入れるよう求められています。そのため、第三者評価を受けている企業への投資はしやすくなる傾向があります。つまり、北陸銀行がこうした評価レポートを発表することで、8番らーめんへの信頼性が高まり、他の投資家からの支援や安定的な資金調達につながるわけです。金融面での信頼性を高め、地域企業の持続的な成長を支援するという好循環を作る狙いがあると見られます。

8番らーめんの海外展開と企業の姿勢

 8番らーめんは国内だけでなく海外にも展開しています。国内では123店舗を運営し、らーめん以外の飲食業態も手掛けています。一方、海外ではタイとベトナムを中心に172店舗を展開しています。
 タイでは1992年に1号店をオープンし、2006年には200店舗分の食材を供給できるセントラルキッチンを設立。2019年には物流を効率化するためのディストリビューションセンターも建設しました。ベトナムでも2019年に1号店を開設し、現在は3店舗を運営しています。こうした堅実で着実な展開も、地域に根ざしながら成長する企業の姿勢を感じさせます。

懐かしい味と金融が支える地域企業

 私が8番らーめんに最後に行ったのはもう30年以上前のことです。味の記憶はすっかり薄れていますが、もし機会があればもう一度食べに行ってみたいと思っています。
 懐かしい地元の企業が金融の仕組みを通じて新たな挑戦をしている話題に触れると、少し嬉しくなります。地域を支える企業が、金融機関と連携して持続的な成長を目指していく、そうした姿勢を応援したいという思いで、このテーマを取り上げました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。


ご参考

外国人観光客が多く訪れるラーメン屋では、日本人向けのメニューに加えて、外国人向けの高級メニューを設けて提供するといった話も聞きます。

ラーメン価格に見る日本の食文化の変化

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