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サイゼリヤの経営を巡る様々な意見


 日本でおなじみのイタリアンファミリーレストラン、サイゼリヤ。このサイゼリヤの経営については、様々な意見があります。国内で1,000店舗以上展開している、かなりの規模の会社ではありますが、利益はそれほど大きくはありません。低価格路線、「薄利多売」の商売をやっていることから、経営の視点や株主目線で見ると「ダメではないか」と言われることもよくあります。

 このサイゼリヤについては、アナリストの間でもよく話題になります。この記事では、このサイゼリヤの経営について、私自身の考え方をお伝えしたいと思います。

はじめに

 最初に申し上げておきますが、個別企業、特に株価について解説したいわけではありません。今回お伝えする内容も、「株価が上がる」、「下がる」といったものではなく、あくまで企業経営について一緒に考えていくためのものです。サイゼリヤの株を購入することを推奨する意図も全くありません。投資判断はご自身の判断に基づいて行っていただければと思います。

サイゼリヤの経営理念と世の中のトレンド

 結論から言いますと、サイゼリヤのような会社は世界的にもあまり多くないですし、日本でも決して多数派ではないと思います。ただ、こういう会社があってもいいのではないかと、私は考えています。

 最近は少ない資本で高い利益率を目指すがあまり、高価格なサービスにばかり力を入れる企業が増えてきています。もちろん、経営者として効率よく、利益率の高いビジネスを目指していくことは大事だと思っています。しかし、今の世の中、そればかりになってしまい、不裕層向けの高価格帯のサービスや、外国人観光客向けの高額商品ばかりが目立つようになっています。

サイゼリヤの哲学

 「利益を上げること」はもちろん重要なことですが、その流れが全面的に正しいかと言うと、そうでもないと私は感じています。サイゼリヤのように、儲けるためだけではなく、「顧客に安くて美味しい食べ物を届けよう」という哲学を持って経営している会社には、リスペクトの気持ちを持っています。
 
「ありか、なしか」で言えば、私は「全然あり」だと考えています。サイゼリヤを応援する立場です。

サイゼリヤのビジネスモデルの特徴

 サイゼリヤの看板メニューと言えば、「ミラノ風ドリア」です。1999年までは480円で提供していましたが、その後、290円に値下げしました。価格の安さで大変人気を集めました。現在でも300円と、ほとんど値上げされていません。

出所)サイゼリヤ

 他のメニューについても、物価上昇が続く中でも値上げをせず、徹底した低価格路線を貫いて勝負しています。安さを実現するため、メニューを厳選してコストを抑えているとされています。

低価格の実現

 また、低価格を実現するために、自社で食材を生産したり、業務のマニュアル化によって人件費を抑える努力もしています。結果として、スカイラークグループのガストや、ゼンショーグループのココスなどと比べても、はるかに安い価格で食事を提供できているのは、多くの人が知るところでしょう。
 こうして、サイゼリヤは「低価格路線のファミレス」としてしっかり顧客に認識されていると言えます。

経営上の課題

 しかしながら、こうした低価格路線ゆえに、経営面では「物足りない」、「弱い」と批判されることも多いです。
 サイゼリヤの国内事業では、2024年8月期の売上が1,464億円に達しましたが、営業利益は27億円でした。その前の2023年8月期には15億円の営業損失を出していたため、改善はしていますが、それでも非常に利益率が低いと言えます。

薄利多売のビジネスモデル

 薄利多売のビジネスモデルでは、環境が悪化するとすぐ赤字に転落してしまう弱さが指摘されています。例えば、ミラノ風ドリアが300円で、もし原価が100円だとすると、100万個売っても粗利は2億円にしかなりません。2,500万個売っても粗利は50億円程度。このことからも、「いかに大量に売らなければ利益にならないか」がよく分かります。

薄利多売のビジネスモデルと投資家

 こうしたビジネスモデルを、投資家は嫌う傾向があります。株式投資家というのは、少ない資本でより効率的に利益を稼ぐ企業を好むからです。そのため、薄利であまり儲からないサイゼリヤの経営に対しては、厳しい視線が向けられることが多いです。

 私の知り合いのアナリストたちも、サイゼリヤについて「全然値上げしない」、「利益率が低い」といった点を非常に厳しく見ている人が多いです。アナリストの間では、サイゼリヤを好ましく思わない人が多いのではないでしょうか。そういう意味では、サイゼリヤは欧米型の利益至上主義に反する経営をしている会社だと言えるかもしれません。

誰のための経営か

 そもそも、企業経営というのは「誰目線でやるか」がサイゼリヤに限らずしばしば議論になります。企業にはさまざまなステークホルダー(利害関係者)がいて、誰を重視するかは企業によって異なります。

 利益を配当や自社株買いという形でどんどん還元していく会社は、債権投資家よりも株主を重視している会社ということになります。一方、企業が儲かったときにそれを内部留保に回してくれるほうが、債権投資家にとってはありがたいです。つまり、ステークホルダーそれぞれが求めるものは違うわけです。

 ソフトバンクグループなどは、負債を大量に抱えた結果、債権投資家に嫌われ、債券を個人向けにしか発行できなくなったという例もあります。

株主重視のトレンド

 このように、株主重視の会社、債権投資家重視の会社、顧客重視の会社など、さまざまなスタンスがありますが、最近は株主重視の会社が非常に多くなっています。これは欧米中心の利益主義の結果とも言えるでしょう。

サイゼリヤの株主優待廃止

 サイゼリヤは株主よりも顧客を最優先に考える経営をしています。昨年、サイゼリヤは株主優待を廃止することを決定しました。サイゼリヤの株主優待はサイゼリヤの食事券で、これを楽しみに株を保有していた個人投資家も多かったと見られています。
 最近は、NISAなどで個人投資家が増えていることから、株主優待を導入・拡充して安定株主を取り込もうとする企業が多い中で、サイゼリヤは逆行して優待を廃止しました。
 サイゼリヤはその理由を「株主の公平性を重視する」と説明しています。株主優待は日本に特有の利益還元方法で、海外の機関投資家にとっては食事券など使い道がなく、現金化に手間もコストもかかるため歓迎されません。
 
もともとサイゼリヤは顧客重視の経営をしており、株主を軽視していると受け取られかねない経営スタイルでもあったので、一定の機関投資家への配慮として株主優待廃止を決めたのかもしれません。

サイゼリヤの経営スタイルをどう捉えるか

 このように、株主にも一定の配慮をしながらも、基本は顧客重視の経営を貫くサイゼリヤ。世の中が利益市場主義、株主重視ばかりになっている中で、こうした企業が存在するのも、日本の良さの一つではないかと思います。
 単にお金を儲けるだけではなく、それ以上の何かを提供する。私は、サイゼリヤの経営は素晴らしいものだと感じています。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

希望
 皆が一緒に同じものを、楽しく食べられる社会が続いてほしいと思います。

ラーメン価格に見る日本の食文化の変化

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