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日米協調介入、ドル円相場を左右する米経済


 2026年7月30日から始まった為替介入ですが、日米による協調介入だったことが明らかになりました。日本の政府・日銀による単独介入よりも市場へのインパクトは非常に大きいため、今後の為替相場がどうなっていくのか、大変注目されています。

 ドル円は一時155円台まで下落しました。

 為替介入について、この記事では改めて状況をアップデートします。

日米協調介入、アメリカの思惑

 まず、7月30日までの動きを簡単に振り返ります。30日の日本時間夕方からドル円が一気に急落し、163円台から157円台まで円高が進みました。市場では、為替介入が行われた可能性が高いという情報が広がりました。その後、財務官が「アメリカから精神的な支援以上の支援をいただいている」と発言し、アメリカの後ろ盾の下で行われた介入であることが伝わりました。

 なぜアメリカが日本の為替介入を支援するのか。

 アメリカが日本を助けたいというよりも、アメリカの長期金利が歴史的な水準まで上昇する中で、米国債がこれ以上売られることを避けるために円安を止める必要があったのではないかということです。

1998年以来となる日米協調介入

 その後、今回の介入が日本単独ではなく、アメリカとの協調介入だったことが明らかになりました。

 ニューヨーク連銀を通じてユーロ売り・円買い介入を行ったとフィナンシャル・タイムズが報じ、8月3日には神田財務大臣が、日米両政府が協調して介入を行ったことを発表しました。これを受けて、ドル円は8月3日の午前中に一時155円台まで下落しました。
 アメリカから「精神的な支援を超える支援」を得ているという話は出ていましたが、実弾を使った協調介入まで行うというのは、意外だった方も多いのではないでしょうか。協調介入が実施されたのは1998年以来で、28年ぶりのことになります。1998年はアジア通貨危機が起こっていた時期です。
 それ以来となる協調介入を実施したということからも、今回の円安や日米の金利上昇について、アメリカ側も大きな問題だと認識していることがうかがえます。

アメリカが円高を望んだ理由

 では、なぜアメリカはそこまでして円高にしたいのでしょうか。これについては、米国債がさらに売られることを避けたいというのが大きな理由ではないかと私は見ています。
 
アメリカの30年国債利回りは、19年ぶりの高水準まで上昇してきています。アメリカ政府としては、これ以上の金利上昇は避けたいところでしょう。米国債の魅力が相対的に低下し、投資家による米国債売りが増えると、さらに金利が上昇する可能性があります。特に、これまで米国債に投資してきた日本の投資家が、相対的に割安になった日本国債へ資金を移すようになると、米国債には一段と売り圧力がかかる可能性があります。

 世界最大の米国債保有国は日本です。

 日本の米国債保有については、政府の外貨準備として保有している分に注目が集まることが多いですが、民間部門も大量に保有しており、むしろ民間投資家の方が機動的に売買を行います。しかも、多くの日本の機関投資家は、これまでの為替環境などから、為替ヘッジを行わずに米国債を保有しているケースが多くなっています。

日本国債への資金回帰を防ぎたいアメリカ

 日本の金利上昇と円安が同時に進むと、日本の投資家にとっては米国債よりも日本国債の方が割安に見えるようになります。一方、為替が円高に動けば、為替差益を期待して米国債を保有する魅力が相対的に高まり、日本国債へ資金を戻す動きは起こりにくくなります。もちろん、米国債売りが懸念されるのは日本の投資家だけではありません。ただ、日本の長期金利上昇と円安が続けば、その影響が米国債市場にも波及しやすくなります。その動きを止めることが、今回アメリカが協調介入に参加した大きな理由ではないでしょうか。
 一部では、日米による協調介入は今年1月から検討されていたとも報じられています。1月に何があったかと言いますと、日本で解散総選挙を行うという話が出たことで、財政悪化への懸念が強まり、日本の長期金利が大きく上昇しました。この時、日本の長期金利に引っ張られる形で、アメリカの長期金利も上昇しています。この頃から、日本の金利上昇がアメリカの長期金利にも影響する展開を、アメリカの財務長官も警戒していたものと見られます。

日本の債券市場ではツイストフラットが進行

 8月3日の取引開始時点で、日本の債券市場がどのように反応したかと言いますと、いわゆる「ツイストフラット」という動きになりました。2年債や5年債などの短い年限の金利が上昇する一方、20年債や30年債などの超長期金利は低下し、イールドカーブが平坦化する動きです。

 なぜこのような反応になったのか。

 アメリカが「これ以上の円安は困る」と明確な姿勢を示したことで、今後さらに円安が進むことを防ぐため、日銀が利上げのペースを早めるのではないかという見方が強まったためだと考えられます。高市政権も、これまで以上に日銀の利上げを容認するのではないかという観測が広がりました。日銀は直近の6月に利上げを行っています。これまでは半年に1回程度のペースで利上げを進めてきたことから、次回の利上げは早くても12月頃ではないかという見方が多くなっていました。
 しかし、今回の日米協調介入を受けて、それよりも早く利上げを進めなければいけないのではないかという見方が強まり、10月の利上げ観測が急速に高まりました。その結果、中短期の金利が大きく上昇したということです。

単独介入とは異なる大きな意味

 今後についてですが、日本が単独で介入を行った場合よりも、今回の日米協調介入が大きな意味を持つことは間違いありません。4月の介入でもそうでしたが、日本単独による介入では、円高に動いてもすぐに値を戻してしまい、効果が限定的でした。
 しかし、日米による協調介入となれば、市場への影響はより大きくなります。今後、ドル円の上値は重くなる可能性が高いでしょう。円キャリートレードが巻き戻される展開になれば、大きな円高圧力が発生する可能性があります。ただ、ファンダメンタルズを見ると、依然として円安要因が多い状況です。ファンダメンタルズが大きく変わらなければ、時間の経過とともに円キャリートレードが再び積み上がり、円安方向へ戻っていく可能性もあるでしょう。

今後の鍵を握るアメリカの雇用統計

 結局のところ、今後の為替相場はファンダメンタルズ次第ということになると思います。そういう意味で、今週末に発表されるアメリカの雇用統計は非常に重要です。
 仮に雇用統計が強く、これまでの景気拡大の流れが大きく崩れていないことが確認されれば、ファンダメンタルズ上は引き続き円安・ドル高になりやすい環境が続くことになります。そうなれば、時間をかけて円キャリートレードが再び積み上がり、円安トレンドへ戻っていく可能性があります。その場合、日銀の追加利上げに対する期待も、さらに高まりやすくなるでしょう。
 一方で、アメリカの雇用統計が悪い結果となれば、円キャリートレードを維持する材料が乏しくなります。現在、高水準に積み上がっている円売りポジションの解消が一気に進み、急激な円高に振れる可能性もあります。そうした意味で、今後についてはアメリカの景気動向が非常に重要です。それを確認する上で、今週末の雇用統計は大きな注目材料になると考えています。

 ここから為替相場がどのように動くかは、日本の政策だけではなく、アメリカ経済の状況によって大きく左右されるでしょう。また動きがありましたら、引き続き解説していきたいと思います。


ご参考

これまで続いてきた力強い雇用拡大に明らかな減速が見え始めたことも事実です。今後は、この減速が一時的なものなのか、それとも景気全体の転換点なのかを見極める必要があるでしょう。

7月2日発表の米雇用統計の詳細解説

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