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基礎控除の見直しに関する一考察(103万円の壁を通じて)

 「年収103万円の壁」の引き上げの議論はまだ続きそうですが、2025年3月4日、2025年度の予算案が衆議院予算委員会で可決しました。政府の当初予算案が修正されたのは29年ぶり、減額の修正は実に70年ぶりとのことです。日本国民の手取りが増えることを願うばかりです。

 この記事では、税金とは何か、所得控除や基礎控除の必要性、103万円の壁の問題点について説明します。個人的に、基礎控除の引き上げの話に対して、「財源がないからできない」と主張するのはとんでもないことだと考えています。その理由についても記載しています。ビギナーの方に向けた記事です。よろしくお願いいたします。

 大変お待たせしてしまいましたが、「103万円の壁と税収減」のテーマは、モハPチャンネルのチャンネル登録様が20万人を達成した記念に、noteでの特別企画として記事のリクエストをお受けした際にいただいたものです。ご質問・ご提案いただきありがとうございました。


税金とは何か

 税金とは何か、様々な考え方があると思いますが、社会全体の秩序を維持し、公正な経済活動を実現するための制度であることに疑いはないでしょう。
 下記は財務省の説明です。税は社会の会費であり、税の役割として「財源調達」、「所得の再分配」、「経済安定化」が期待されています。また、税の三原則として「公平の原則」、「中立の原則」、「簡素の原則」が掲げられています。

出所)財務省

 国は、憲法第二十五条に定められた生存権を保障するため、税制を通じて所得の再分配を行い、社会全体の公平を確保する役割を担っています。

第二十五条 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

日本国憲法

 しかし、税制度の設計が適切でない場合、一部の人々に対して過度な負担を強いることになり、結果として生存権が保障されないことになります。それを避けるための仕組みが所得控除です。

所得控除の必要性

 所得控除とは、納税者の経済的事情を考慮し、税負担の公平性を確保するために一定額を非課税とする仕組みです。所得税は、基本的に所得が高い人ほど高い税率が適用される「累進課税制度」によって成り立っています。
 しかし、すべての人が同様に生活費を必要とする以上、一定額を非課税とすることで税制の公平性を担保する必要があります。

所得税額を計算するうえで、社会政策上の要請によるもの、各納税者の個人的事情への考慮や最低生活費を保障するためのものなど、税負担面での調整を行う趣旨から設けられているものです。

国税庁【所得控除のあらまし】

 主な所得控除は以下のとおりです。

  • 基礎控除:すべての納税者に適用される最低限の非課税枠。

  • 扶養控除:扶養家族がいる場合に適用される控除。

  • 医療費控除:一定額以上の医療費の支払分を控除する制度。

  • 社会保険料控除:健康保険や年金の支払分を控除する制度。

 所得控除は単なる減税措置ではなく、税負担の公平性を確保し、生存権を保障することを目的とした重要な制度です。

基礎控除の必要性

 上記のうち基礎控除は、納税者の最低限の生活費を保障するために設けられた制度であり、税制の根幹を成す重要な仕組みです。すべての人が生活を維持するためには一定の支出が必要であり、この最低限の部分については課税しないという考え方に基づいています。

 しかし、日本の基礎控除は長年据え置かれてきたため、実質的な生活費の水準と乖離しています。国際的に見ても、日本の基礎控除は低い水準に留まり、特に低所得層にとっては税負担が重くなっています。

出所)時事通信(2024/12/21)

 また、基礎控除が十分でないと、103万円の壁のような不合理な就業調整が発生する原因となります。基礎控除は、物価の上昇や最低賃金の変動を考慮して引き上げられるべきであり、それによって税制の公平性を確保し、労働市場の健全な発展を促すことが可能になります。繰り返しになりますが、憲法第二十五条に定められた生存権を保障するため、国がその役割を担っています。

103万円の壁の問題点

 103万円は、基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計です。問題となる103万円の壁は、被扶養者の年収の境界線です。被扶養者の年収が103万円以内であれば扶養者は扶養控除を受けられますが、103万円を超えると扶養控除を受けられなくなります。その結果、世帯の手取り収入が減少する可能性があります。当然、それを防ぐために年収を103万円以内に抑えようする人もいます。この壁があることで、労働時間の制限、労働力の供給が歪められる事態を招いています。

 本来、税制は個人の経済的実態に即して設計されるべきですが、103万円の壁のような制度が存在することで、税負担を回避するために合理的でない労働調整が行われ、社会全体の生産性が低下するわけです。

 103万円の壁の問題は、基礎控除の不十分さが一因です。経済状況を踏まえ、基礎控除を引き上げることで、この問題を解消することが可能です。

「財源がないからできない」との主張

 こちらも繰り返しになりますが、日本の基礎控除は長年据え置かれてきたため、実質的な生活費の水準と大きく乖離しています。税制の公平性を確保し、労働市場の健全な発展を促すこと、憲法第二十五条に定められた生存権を保障するための役割を国が放棄してきた大問題と言えるでしょう。
 基礎控除の引き上げは、財源がある、財源がないの一つ前に議論して解決すべきことだと思います。「財源がないからできない」との主張は論点がずれている、誤魔化し、とんでもないことでしょう。

「財源がないからできない」への反論

 上記のとおり、基礎控除の引き上げの話に対して、「財源がないからできない」との主張は論点がずれていると考えているため、議論すらしたくないのが本音ですが、あえて反論したいと思います。こちらも財務省の資料です。

出所)財務省【一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移】
出所)財務省【普通国債残高の累増】

 国債を財源とすべきと主張したいわけではありません。国は、財源がないまま財政運営をしてきた実績があります。そもそも財源はどこにもないというのが私の考えです。日本国民の生存権を保障する話に、「財源がないからできない」と主張するのは納得できません。

希望

 税金の使い方ももう少し考えてほしいところですが、まずは、基礎控除の引き上げを通じて、日本国民がより自由に働くことのできる社会を実現してほしいと思います。


余談

 余談です。記事のリクエストをいただいて3カ月が経ちました。令和7年度の税制改正の大綱が出たら記事にしよう、令和7年度予算政府案が固まれば記事にしようとずるずるきてしまいました。日本国民の生存権を保障する話、迅速に対応いただきたいものです。

付録(令和7年度予算政府案)

出所)財務省

ご参考(前回のリクエスト記事)

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