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ドイツとスペインと欧州経済の現状と今後


 欧州経済は現在、ドイツやフランスを中心に低成長が続いているという状況が広く知られています。ドイツ政府の経済諮問委員会は、2025年における同国の経済成長率を0%とする見通しを発表しました。こうした停滞の中、さらに注目を集めているのが、米国のトランプ政権がEUに対して50%の関税をかけると発言していることです。
 また、ドイツでは財政拡大による防衛力の強化やインフラ投資の実施が議論されていますが、これらの施策がどのように進行しているのか、依然として注目を集めています。この記事では、そうした欧州経済の現状を概観し、今後ユーロ経済を見通す上で重要なポイントについて説明します。

2025年第1四半期のユーロ圏経済成長率

 まず2025年第1四半期における経済成長率を振り返ってみましょう。ユーロ圏の実質GDP成長率は前期比で+0.4%となりました。国別に見ると、ドイツは+0.4%、フランスは+0.1%、イタリアは+0.3%、スペインは+0.6%という結果です。

 今年1年間の見通しとしては、IMFが4月14日までの情報をもとに発表した予測によると、ユーロ圏全体で+0.8%、ドイツは0.0%、フランスは+0.6%、イタリアは+0.4%、スペインは+2.5%とされています。

関税問題の影響とその時期

 トランプ政権によるEUへの50%関税の問題は、現時点において2025年7月9日まで施行が延期されているとされています。この話は、IMFの見通しが出された4月14日の時点ではまだ浮上していなかったため、仮に実施された場合、IMFの予測よりもさらに成長率が下方修正される可能性があるということになります。

トランプ政権の関税政策の影響で、少なくともこの程度は世界経済の成長率が落ち込みそうだという状況になってきているわけです。

世界経済見通し下方修正の整理と今後の心構え

ドイツ経済の現状と財政政策の行方

 ユーロ圏経済の約1/4を占めるドイツでは、第1四半期の成長率が+0.4%となり、2024年第4四半期の-0.2%から回復しました。この回復は、関税施行前の駆け込み需要によって輸出が急増したことが背景にあります。アメリカ側の輸入急増に伴う影響が、結果としてドイツのGDPを押し上げる形となりました。

 ただし、その財政政策についても不透明な点が多く残っています。5月6日に発足したメルツ政権は、5月20日に経済政策についての議会演説を行い、「欧州最強の軍隊を築く必要性」「サプライサイド改革による経済成長の促進」「インフラ投資の拡大」「EU統合の深化」「社会保障制度改革」などを柱とした政策方針を示しました。

 ドイツ連邦議会(下院)で5月6日、首相指名選挙が行われ、キリスト教民主同盟(CDU)党首のフリードリヒ・メルツ氏が2回目の投票で過半数を得て、新首相に選出された。

ジェトロ

 インフラ関連の予算法案は6月25日に発表され、7月には初回審議が行われる予定です。議会承認は9月以降と見られており、実際に企業活動へ影響を及ぼすのは秋以降になると予想されます。

防衛費と長期成長見通し

 ドイツの防衛費に関しても、長期的な方向性はまだ見通せていません。6月24日〜25日に開催予定のNATO首脳会談で、一定の方向性が示される可能性があります。ドイツの国防費は、2024年にGDP比2%を超え、30年ぶりの水準に達しました。さらに、メルツ政権の外務大臣は、2032年までにこの比率を3.5%に引き上げる可能性があると発言しています。2026年度以降の経済成長については、こうした国防費の議論がどのように進むかにも大きく左右されるでしょう。

スペイン経済と観光業

 欧州経済を見通す上で、もう1つ注目すべきポイントがスペイン経済の動向です。近年、ユーロ圏の主要国の中でも最も高い成長率を実現してきたのがスペインであり、2024年にはユーロ圏の成長率が+0.8%、ドイツが-0.4%と低迷する中、スペインは+3.1%という高成長を記録し、ユーロ経済の牽引役となっています。

 この好調の要因の一つが観光です。2024年にスペインを訪れた外国人観光客の数は過去最高を更新し、9,400万人に達しました。参考までに、同年に日本を訪れた観光客は3,700万人であり、国土面積がスペインの約1.3倍に相当する日本と比較しても、スペインの観光客数の多さが際立っています。

 特に、イギリスから訪れる観光客が多いです。これはイギリス国内が夏でも海水浴に適さないほど気温が低く、冬は雨が続く気候であるため、温暖で晴天の多いスペインに観光で訪れる人が多いという背景があります。

民泊とオーバーツーリズムの問題

 一方で、観光業の発展に伴う問題も顕在化しています。観光客の急増により、バルセロナなどの主要都市では民泊が急増し、住宅を購入して観光客向けの民泊ビジネスを行う人が増加。その結果、賃貸住宅が不足し、家賃が高騰するという事態が発生しました。市民の間では「家賃が高すぎて借りられない」、「アパートが次々と民泊向けに転用されていく」といった不満が高まっています。

 2024年には、オーバーツーリズムに反対する一部の市民や活動家によるデモが行われ、観光客に水鉄砲をかけながら街を歩くといった抗議活動も見られました。これを受け、バルセロナ市は民泊ライセンスの新規発行を停止し、既存のライセンス更新も行わない方針を打ち出しました。これにより、2028年までにバルセロナ市内の1万以上の正規民泊がなくなるとされています。

民泊規制の限界と今後の注目点

 しかし、この問題はそう簡単に解決されるものではありません。2025年の夏の観光シーズンを前に、再び民泊問題への関心が高まっており、スペイン政府は5月に、民泊仲介大手Airbnbに対して、違法な民泊6万6,000件が掲載されているとして削除を要請したと報じられています。
 市民の間ではこうした状況に対する懸念が高まっており、今年の夏もオーバーツーリズムに反対するデモが行われることは避けられないと見られています。仮にデモが拡大すれば、政府も違法民泊などへのより強力な対応を迫られることになるかもしれません。

観光業の転機と欧州経済の行方

 観光客の数を無制限に増やし続けることは不可能であり、経済が成長を続ける中で避けがたい資本主義の矛盾が現れているとも言えます。成長が順調であっても、それが永続することを前提にビジネスを展開すれば、いずれ限界に直面するでしょう。
 
スペインは現在、外国人観光客が1億人に迫るという過去に例を見ない局面に差し掛かっています。市民の不満が爆発し、観光客がスペインを訪れにくくなるような事態に発展すれば、観光業の成長が抑制される可能性があり、スペイン経済の成長にも陰りが差すかもしれません。今年の夏にかけて、こうした観光業の課題がどのように展開されていくのか、欧州経済を見ていく上での重要な注目点となりそうです。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

欧州各国が急速に防衛費の拡大へと動き始めました。背景には、アメリカの支援が今後期待できなくなる可能性が高まり、自国の安全保障を自ら考えなければならない状況に直面していることがあります。

EUの防衛費拡大を妨げるESG投資規制問題

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