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日米金利差以外の円安進行の要因について


 1986年以来37年ぶりに161円台まで円安ドル高が進んでいます。円が紙屑 になるのではないか、そんなことまで言われ始めています。今何が起こって いるのか、そしてこれから為替相場をどういう風に見ていけばいいのか、円相場について解説をしたいと思います。

日米の金利差について

 まず、現在の状況を理解するために、日米の金利差がどのように影響しているかを理解することが重要です。金利が高い通貨で運用した方が有利になるため、金利が上がるとその通貨は相対的に強くなる傾向があります。この原則に基づいて、短期的な為替相場の動きは2国間の金利差の動きと高い相関関係を持っています。

 国際金融論でよく言われる為替の決定要因として、金利差、物価上昇率の差、国際収支というのがよく用いられます。
 金利差については、日米の金利差が拡大したからドルが強くなった(円が弱くなった)とよく言われるものです。この3つの中で金利差が一番短期的な動きの説明するのに適しています。

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日米の金利差の推移について

 しかし、2024年3月末のドル円は151.35でしたが、7月2日時点では161.44まで円安ドル高が進んでいます。この間、日米の金利差はどうだったのでしょうか。
 通常、金利差の動きと最も連動性が高いのは2年の金利差です。これは2年債が短期金利との連動性つまり中央銀行の政策金利との連動性が高いことと関係しています。
 ●2024年3月末のアメリカの2年金利は4.66%で、日本の2年金利は0.19%でした。その差は4.43%でした。
 ●7月2日時点では、アメリカの2年金利は4.74%で、日本の2年金利は0.37%でした。その差は4.37%です。
 ●金利差は4.37%に縮小しています。
 これらのデータから、金利差で言えば円高になっていてもおかしくない状況です。なぜ円安ドル高になっているのでしょうか。

円キャリートレード

 その一つの答えは、「円キャリートレード」という現象です。キャリートレードとは、金利の低い通貨でお金を借りて金利の高い通貨で運用し、その金利差を稼ぐ戦略のことを指します。金利差が広がってきてそれが安定している時によく行われる取引戦略です。円のキャリートレードが増えてくると円を売ってドルを買うことになるので、円安が加速する一つの要因になります。

円キャリートレードの現状

 円キャリートレードの状況を確認するためには、米商品先物取引委員会(CFTC)が公表している通貨先物のポジションが参考になります。これはIMM通貨先物ポジションと呼ばれています。このデータは世界中の取引を網羅しているわけではありませんが、概ね傾向を掴むことができます。
 IMM通貨先物ポジションの状況について、円売りと円買いをネットしたポジションが17万4,000枚の売り越しになっています。2007年に18万枚まで売り越しの額が膨らんだ時期があり、これが円キャリートレードの全盛期と言われている時期ですが、今それにかなり近い水準になってきています。

国際収支の構造変化

 円キャリートレード以外にも、日本の国際収支の構造変化が円安要因となっています。例えば、貿易収支が赤字になったり、証券投資などの所得収支が海外に再投資されることで円高にならないという現象があります。

デジタル赤字の拡大

 また、デジタル赤字も円安要因となっています。デジタル赤字とは、デジタル関連サービスを提供する海外の会社にお金を払うことによる赤字のことを指します。
 このデジタル赤字は年々大きくなっており、2017年頃まで2.5兆円程度だったものが、2023年には5.6兆円の赤字になっています。GoogleやAmazon、Microsoftなどのアメリカの会社に払うお金が毎年増えているため、このデジタル赤字は今後も拡大していくと見られています。

円安の進行とその影響

 上記のような構造的な円安要因が合わさって、現在の円安が起こっているわけです。ただし、これらの構造要因はあくまで非常に長期的な期間において為替相場に影響を及ぼすものであるため、短期的には円キャリートレードのような投機的な動きが大きく、早く影響を及ぼします。そのため、足元の急激な円安の進行は、投機的な動きが止まらない限り続く可能性があります。

円安の将来予測

 では、この円キャリートレードを始めとした投機的な動きはどうなったら止まるのでしょうか。また、どこまで行ったら円安は落ち着くでしょうか。
 これらの問いに明確な答えを出すのは難しいです。なぜなら、これらの動きはファンダメンタルズを反映したものではないため、どこが適正水準か、どこまで円安になれば動きが変わるかということは非常に不透明で、予想するのは極めて難しいからです。

円の将来予測

 しかし、今後ポジションを急激に解消するような事態が発生すると今度は円高にも大きく動きやすくなります。急激な円安の後に急激な円高が来る可能性もあるということです。非常に不安定な状況、神経質な展開になりそうです。
 7月31日に行われる日銀金融政策決定会合で月間国債買入れ額を3兆円ほど減らすだろうと見られていますが、3兆円の国債買入れの減額はすでに織り込まれているため、円安は止まらないでしょう。日銀は追い込まれていると思います。
 また、動きがあればアップデートしていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考(日本銀行が2009年に発行した調査研究の一部抜粋)

円キャリートレードの超過収益の発生は、新たな投資家を次々と呼び込み、投資通貨の増価と調達通貨である円の減価をもたらし、それがまた、トレードの収益拡大を自己実現化させるという循環につながった。しかし、キャリートレードの超過収益は、「カバー無しの金利裁定式」からの乖離によって発生するものであり、収益が拡大するほど、投資通貨の急落リスク(円の急騰リスク)を溜め込んでいく性質がある。その意味で、キャリーポジションの拡大は、いわゆる「金融の不均衡」の拡大の一形態と解釈することもできる。

日本銀行HP(2009年6月4日)

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