世界の最低賃金と日本の賃金の現状を考える
2025年10月29日、ドイツ政府が最低賃金を大きく引き上げることを発表しました。2027 年からドイツの最低賃金は時給14.6ユーロとなり、1ユーロを 177 円で計算すると2,584円になります。これは日本の最低賃金を大きく上回る水準で、日本が国際的に見ても賃金が低いと言われる背景が改めて意識されるところです。
そこでこの記事では、足元で世界の最低賃金がどうなっているのかについて、詳しく解説したいと思います。
ドイツの最低賃金
ドイツの最低賃金は現在時給12.82ユーロですが、2026年1月から13.9ユーロに、そして2027年1月からは14.6ユーロへと段階的に引き上げられます。わずか1年余りで14%以上の大幅な引き上げで、世界的に見ても強い調整と言えるでしょう。
日本の最低賃金
一方、日本の最低賃金は2025年10月に引き上げが行われ、全国平均で105円アップの1,121円になりました。都道府県別では、最も高いのが東京の1,226 円、最も低いのが高知県・宮崎県・沖縄県の1,023円となっています。引き上げ前は秋田県が951円と最も低い水準でした。

全都道府県で最低賃金が1,000円を超え、上昇基調にはありますが、それでもドイツなどと比べると水準の差は大きく、東京でさえドイツの半分以下という状況にあります。
欧州諸国の最低賃金
続いて他国の状況を見ていきます。
・フランスは2025年10月時点で11.88ユーロ、日本円にして2,103円です。ドイツより若干低い程度の水準です。
・イギリスは2025年4月に最低賃金が引き上げられ、12.21ポンド、1ポンドを200円で計算すると2,442円となり、現在ではドイツより高い数字です。ただし来年以降はドイツに抜かれる見込みです。
・カナダは州ごとに最低賃金が異なります。最大人口を抱えるオンタリオ州は17.2カナダドルで、1カナダドル110円換算で1,892円。ブリティッシュコロンビア州は17.85カナダドル、1,963円となります。
オセアニア諸国の最低賃金
・オーストラリアは2025年7月以降の最低賃金が24.95豪ドルで、100円換算だと2,495円。イギリスより高く、先進国の中でも上位に位置します。
・ニュージーランドは2025年4月から23.5NZドルとなり、88円換算で2,068円です。
アジア諸国の最低賃金
・韓国は現在1万30ウォンで、2026年1月から1万320ウォンに引き上げられる予定です。1ウォン0.108円で計算すると1,114円で、日本の全国平均をわずかに下回ります。ただし日本の一部地域では韓国より低いところもあり、10年前には考えられなかった状況と言えるでしょう。
・台湾は2026年1月から190台湾ドルから196台湾ドルに引き上げ予定で、1台湾ドル5円換算で980円となり、日本よりも低めの水準です。
アメリカの最低賃金
アメリカも州により大きく異なります。ニューヨーク州は2025年から16.5ドルで、1ドル153円換算で2,524円。カリフォルニア州では一般労働者で16.5ドル、飲食業では20ドルとなり、3,000円超えとなります。
北欧・スイスなど高水準の国々
北欧に目を向けると、スウェーデンは130クローナで、1クローナ16.29円換算で2,117円。デンマークとノルウェーは法定最低賃金はありませんが、デンマークでは労働協定により110クローナ(2,626円)が実質的な最低賃金となっています。
さらに高いところではスイスがあります。スイスは州により最低賃金制度の有無が異なりますが、その中でジュネーブ州は24.32スイスフランで、1フラン192円換算で4,669円と、ほぼ異次元の水準です。
日本より低い国
一方、所得水準の低い国では最低賃金が定められていない、あるいは月給制で比較が難しい場合もあります。とはいえ日本より低いところとしてはスロバキアがあり、4.69ユーロ(830円相当)という水準です。経済的に豊かとは言えない国との差が3割程度しかないというのは、少し考えさせられる部分です。
日本の賃金が伸び悩んだ理由
こうして世界の最低賃金を見てきましたが、先進国の中で日本が相対的に低くなっていることが改めて分かります。もちろん円安の影響もありますが、それ以上に賃金上昇率が他国に比べて緩やかだったことが大きいと言えます。
ただし、最低賃金だけを無理に引き上げれば良いという話ではありません。経済成長率に見合わない賃上げは企業経営を圧迫し、かえって経済にマイナスとなる可能性があります。本来は経済成長と賃金上昇を両輪で進めていく必要があります。
伸び率の違いが生む「30年の差」
例として、1996年の東京の最低賃金は664円でした。そこからの伸び率は平均すると年2.07%ほどです。仮に毎年3%で上がっていれば現在は1.611円、4%なら2,153円、5%なら2,869円となっていた計算です。年数が積み重なることで大きな差が生まれ、これが福利効果の典型例と言えます。
中小企業だけの問題ではない
最低賃金引き上げによって中小企業が立ち行かなくなるという議論もありますが、必要最低限の賃上げができない企業は淘汰されるべきだという考え方もあります。ただ、私自身はこの問題について中小企業だけが責められるべきではないと考えています。
新陳代謝が起こりづらい環境には、金融機関の体質も影響しているからです。銀行では貸し倒れが起きると担当者が大きなペナルティを受ける文化があり、そのため失敗を恐れてリスクを取らない企業にばかり資金が流れます。政府も金融機関を守る体制を長年続けてきたため、こうした構造が日本の低成長・低賃金の一因となっている側面もあるでしょう。
日本にゾンビ企業がいるとか言われるのは、金融機関のせいでもある。減点方式の銀行で、融資先が潰れると、担当者はもうサラリーマン人生終わり。だから絶対潰さない
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) October 28, 2025
今後の課題
世界の最低賃金を幅広く見てきましたが、日本は先進国の中ではかなり低い位置にあるのが実情です。今後は経済成長とともに、より高い伸び率で賃金を引き上げていく必要があるでしょう。
ご参考
円安が進行している今の状況では、むしろ日本にいた方が豊かに暮らせるのではないか、という声もあります。
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