ニュージーランドの出国者増加と経済低迷の原因
ニュージーランドの統計局が発表したデータによると、2024年1月から11月までにニュージーランドから出国した人の数が12万7,800人となり、前年から28%増加し過去最高を記録しました。世界的には移民の流入が注目されがちですが、ニュージーランドでは国を出ていく人の数も増えています。
移民と社会保障制度
経済以外の面についても考えますが、文化の異なる移民を大量に受け入れれば、様々な問題が生じてくるのは言うまでもありません。世界の先進国の多くは、少子高齢化で社会保障制度の維持が難しくなってきています。
この出国者数の増加には、ニュージーランド経済の低迷が大きく影響しています。ニュージーランドドルは日本の為替取引でもよく知られていますが、経済の詳細な解説は少ないかもしれません。そこで、この記事ではニュージーランド経済について詳しく解説します。
出国者の割合と特徴
2025年1月23日に発表されたデータによると、12万7,800人の出国者は、ニュージーランドの人口約500万人に対して2%を超える規模になります。日本に例えると約240万人に相当し、名古屋市の人口と同じくらいの規模です。このため、ニュージーランドにとってはかなり大きな動きと言えるでしょう。
ニュージーランド(New Zealand)
人口
約500万人(2023年12月ニュージーランド統計局)
ただし、人口が大幅に減少しているわけではありません。移民の流入も続いており、概ね相殺されている状況です。興味深い点として、この出国者のうち50%以上がニュージーランド国籍を持つニュージーランド人であることが挙げられます。つまり、ニュージーランドでは、自国民が出ていき、その分を移民が補うという形で人口が維持されています。
ニュージーランド経済の低迷
では、なぜニュージーランド人は自国を離れるのでしょうか。その背景には、ニュージーランド経済の低迷があります。近年の経済状況を振り返ると、インフレの影響を除いた実質GDPの推移は以下のとおりです。
2020年:前年同期比-1.4%(新型コロナの影響)
2021年:+5.7%(回復)
2022年:+2.4%
2023年:+0.6%(伸びが鈍化)
そして2024年に入ると、第1四半期は前期比+0.3%、第2四半期は-1.1%、第3四半期は-1.0%と、2四半期連続のマイナス成長となり、リセッション(景気後退)に陥っている状況です。第4四半期のデータはまだ公表されていませんが、引き続き弱い動きが続くと予想されています。
オーストラリアとの比較
参考までに、隣国オーストラリアの状況は以下のとおりです。
2020年:前年同期比-2.1%(新型コロナの影響)
2021年:+5.5%(回復)
2022年:+3.9%
2023年:+2.0%(伸びが鈍化)
2024年の第1四半期は前期比+0.2%、第2四半期は+0.2%、第3四半期は+0.3%と、オーストラリアも経済の伸びが鈍化しているものの、ニュージーランドよりは良い状態を維持しています。
このため、ニュージーランド人が仕事を求めてオーストラリアへ出稼ぎに行くケースが増えているとされています。イギリスの旧植民地である両国はともに英語を話すため、国境を越えて働くことが比較的容易であり、日本の状況とは異なる点が特徴的です。
ニュージーランド経済の詳細
ニュージーランドのGDPを詳しく見ると、民間消費は第2四半期が-0.1%、第3四半期が-0.3%と、2四半期連続でマイナスとなっています。また、失業率は2022年第3四半期には3.2%でしたが、2024年第3四半期現在では4.8%まで上昇しており、労働市場の悪化が個人消費の弱さにつながっていると考えられます。
さらに、企業の設備投資を示す総固定資本形成は第2四半期が-0.7%、第3四半期が-2.9%と、6四半期連続のマイナスとなっています。これはリーマンショック時と並ぶ長期的なマイナスの継続であり、経済の停滞が深刻であることを示しています。
農業と貿易収支の影響
ニュージーランド経済は、酪農品、食肉、羊毛、木材などが輸出の50%を占め、農業が最大の外貨獲得産業となっています。しかし、近年は慢性的に貿易収支が赤字の状況が続いています。
環境政策の影響
ニュージーランドでは、前政権(労働党政権)が環境重視の政策を推進してきました。例えば、牧畜業を許可制にしたり、家畜の排泄物に含まれる窒素の排出量に制限を設けたりと、農業に対して厳しい規制を実施していました。
特に、2025年から導入予定だった「家畜のメタンガス排出量に応じた課税(いわゆる“げっぷ税”)」は、農業界に大きな影響を与えるとされていました。しかし、2023年11月の政権交代により、この税は導入されないことが決まりました。それでも、過去の環境政策が農業経済に与えた影響は無視できません。
ニュージーランドの金融政策
この経済低迷の要因として、ニュージーランドの中央銀行がインフレ対策のために政策金利を5.5%まで引き上げたことが挙げられます。現在、政策金利は4.25%となっていますが、長期間の金融引き締めが経済の下押し圧力となっています。
今後の見通し
ニュージーランド経済は低迷が続いていますが、2月に予定されている中央銀行の金融政策決定会合で0.5%の利下げが見込まれています。これにより、政策金利による経済の下押し圧力は和らぐと考えられています。
しかし、今のところ大きな改善の兆しは見えておらず、今後もニュージーランドを離れる人が多い状況が続く可能性があります。ワーキングホリデーでニュージーランドに渡る日本人も毎年2,000人程度いるとされており、そうした人々はニュージーランドの経済状況を十分理解しておく必要があるでしょう。
ご参考
挑戦する勇気を
完璧な英語力を身につけてからでないと海外で通用しないと思うかもしれませんが、行動しなければいつまでも海外に出ることができません。もちろん、努力を怠らず準備することは必要ですが、最終的には「思い切って挑戦してみる」ことも大切ではないでしょうか。
サイトマップ(目的別)はこちら
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

