メディアが報じないソマリアの建設ラッシュ
アフリカと聞くと、内戦、クーデター、難民といったニュースばかりが目立ちますが、そうした中で最近、ソマリアで建設ラッシュが起きているということはメディアではほとんど報道されていないと思います。
ソマリアといえば、内戦や海賊といったイメージが強いかもしれません。しかし、その首都モガディシュでは、この5年間で6,000以上の建物が新たに建設され、街並みが大きく変わりつつあります。この記事は、ソマリアで今、何が起きているのか、ポイントを絞って解説します。

内戦と海賊のイメージ
ソマリアといえば、1990年代の内戦にアメリカが介入し、悲惨な戦いを経て撤退したことが映画にもなりました。その記憶が残っているという方も多いと思います。あの当時、ソマリアは完全に無政府状態に陥り、「世界で最も危険な国」とまで言われていました。部族間の対立によって都市は荒廃し、2000年代にはイスラム過激派が台頭。2010年頃までは戦闘が絶えない状況が続いていました。
そして、もう一つのイメージが「海賊」です。ソマリア沖を航行する商船を襲撃して身代金を要求する海賊が横行し、日本からも自衛隊が派遣されたという話はご存知の方も多いでしょう。現在も治安が完全に改善されたわけではなく、イスラム過激派による反政府活動や、1991年に一方的に独立を宣言したソマリランドなど、地域ごとの複雑な状況が残されています。
各地において引き続きテロが発生しています。ソマリア(同国北部の「ソマリランド」を含む、以下同様)への渡航はどのような目的であれ止めてください。既に滞在されている方は直ちに退避してください。
歴史的背景と現在のソマリア
ソマリアは19世紀後半にヨーロッパ諸国による植民地支配を受け、イギリス、フランス、イタリアがそれぞれの地域を統治していました。今「ソマリランド」と呼ばれている地域は元々イギリスの植民地であり、モガディシュなど南部はイタリアの植民地でした。
現在のソマリランドは国際的には承認されていない「未承認国家」となっており、独自に統治を行っているものの、国際社会ではソマリアの一部とされています。
首都モガディシュでの変化
そうした中で今、建設ラッシュが起こっているのがソマリアの首都モガディシュです。約200万人が暮らす都市で、1990年代以降の内戦によって街は壊滅的な被害を受け、無政府状態が長く続いていました。
ソマリア連邦共和国(Federal Republic of Somalia):人口
1,760万人(2022年:世銀)
2004年に暫定政府が設立されたものの、治安は不安定なままで、干ばつや貧困にも苦しんでいました。しかし、2020年以降に入ってからは6,000以上の建物が新たに建設され、内戦の面影は徐々に薄れつつあります。さらに、2024年には5万戸以上の住宅建設計画も発表されました。
海外のソマリア人による自立型復興
では、なぜソマリアがここまで変わってきたのか。大きな転機となったのは、2012年に選出されたハッサン・シェイク・モハムド大統領の登場です。それまでの暫定政府は海外支援頼みで自立できなかったのに対し、モハムド政権は自立型の国家運営を目指しました。
特に注目すべきなのが、海外に渡って成功したソマリア人実業家を呼び戻す政策です。モガディシュの多くの建設プロジェクトは、中国などからの融資ではなく、こうした実業家たちの民間資金によって行われています。
アフリカでは、中国による「借金漬け外交」が問題視されており、ソマリアの隣国ジブチやエチオピアも多額の対中債務を抱えています。そうした中で、モハムド政権が安易に中国に依存せず、自国出身の投資家を活用して成長を促した点は注目に値します。
今後も中国は新たな融資を行う余裕が乏しく、既存融資の回収が優先される展開が続く見込みです。この影響で、アフリカなどの新興国は別の融資先を探す必要が生じますが、それが叶わなければ債務不履行(デフォルト)に陥る国も出てくるでしょう。
経済成長と女性の社会進出
こうした取り組みによって、2010年には27億ドルだったソマリアのGDPは、2023年には117億ドルへと、4倍以上に拡大しました。インフレを除いた実質成長でも非常に高い伸びを示しています。
また、建設ラッシュは社会にも新たな変化をもたらしています。ソマリアはイスラム教の国で、伝統的に男性優位の社会でしたが、人手不足を背景に、女性が建設現場やインフラ系の仕事に就く機会が増えており、中には大規模プロジェクトの責任者に抜擢される例も出てきています。
それでも残る課題と格差
ただし、これでソマリア経済が完全にバラ色になったかというと、もちろんそう単純な話ではありません。治安が改善されてきたのはモガディシュなど一部の都市だけで、地方では今なお政府の統制が届いておらず、海賊や過激派の活動も続いています。
さらに、建設ブームによって経済が活性化している一方で、不動産価格が高騰し、事実上の立ち退きによって住まいを失う人も出ています。4万人以上が住む場所を追われたという報道もあり、治安の悪い地域へと移住を余儀なくされている現実もあります。
品質への懸念と腐敗の影
また、建設業界には「セメントに塩分濃度の高い砂を使っている」といった指摘もあり、建物の耐久性が疑問視されています。こうした問題はアフリカ諸国でよく見られるものですが、ソマリアは腐敗指数が非常に高い地域でもあり、品質管理や安全性の面でまだまだ課題は山積しています。
自立を目指すソマリアの未来
しかし、かつて無政府状態だったソマリアがここまで変化してきたという点、そして他国の支援に安易に依存せず、自国の人材と資金によって経済再建を進めている点は、今後も注目すべき動きだと思います。

ハムザ・ソマリア連邦共和国外務・国際協力省次官による藤井外務副大臣表敬
今回ご紹介したように、まだまだ問題は山積していますが、ソマリアという国が新たな道を模索していることは間違いありません。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考
下記の記事はアフリカの経済社会に関するデータの基礎的な解説です。そのような基礎的なことは分かっているよという方もおられるかもしれませんが、意外と知らないものもあるかもしれません。確認の意味でも、是非ご覧いただけたらと思います。
1.国の数
2.人口
3.GDP
4.アフリカの原油埋蔵量世界シェア
5.アフリカの鉱物資源生産量世界シェア
6.難民の数
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