「おいしいごはんが食べられますように」高瀬隼子(著)/甘いお菓子が食べたくなくなる物語
4月に入り、丸善のランキングに返り咲いていたので、朗読を聞いてみた。
登場人物
二谷: 主人公の男性社員。要領が良く飄々と世を渡っていく。入社7年目
芦川:二谷の恋人の社員。体が弱く皆が守ってあげたくなる感じ。入社6年目
押尾: しっかり者の女性社員。芦川が休むとしわ寄せを被る。入社5年目
その他:支店長他数名いるが物語の中では空気的な位置付け
3人はとある食品ラベル製造会社埼玉支店で働いており、職場という閉鎖空間での人間関係が描かれている。
芥川賞受賞会見(2022/07/20)
雑感(ネタバレあり)
読者としてファーストインプレッション
【こんな職場で働いていなくて良かった】
・二谷さん、支店毎に女性に手を出すのは止めましょう
・芦川さん、お菓子を作る暇があったら仕事してね
・押尾さん、退職するときだけカッコいい
三時のおやつ、手製のお菓子にぞろぞろと集まってくる支店の従業員。
だけど深夜残業や休日出勤もある。そんなどうしようもない人たちの職場物語。
素人小説家の印象
登場人物の描写は細かく誰もが何を考えているのか(何も考えずに生きているのかも)分からないままの人たち。
宴会(職場新年会)でのグダグダ騒ぎのあと、数名で二次会に行き新たな展開がある物語もあるが、そのようなシーンはなく人間関係は空疎なまま。
細かく描写されている人物の中身はよく言えばドライ。悪く言えば物語を通じて心情に移ろいは感じられない。話が始まってから終わるまでに誰も何も変わらない。
話の中で、誰かの何かが変わってほしいとは思う(物語だし)。ある意味、究極の日常系職場作品なのかも知れない(何も変わらないという意味で)。
登場人物が職場や居酒屋で何かを口にしているシーンは多いけれど、どの場面も美味しくなさそうで、仕方なく食べている様に感じられる。
「食事がおいしくない」から、「おいしいごはんが食べられますように」と、シニカルなタイトルを付けたのかも知れない。
芦川が(残業する同僚を差し置いてサッサと帰宅するのに)自宅から手作りのお菓子を持って来るエピソードが続き、二谷が食べることを嫌う流れに上手く持って行く(2人は一応付き合っている、二谷は転勤が決まり別れる気満々だが)。
半分濡れ衣を着せられて退職せざるを得なくなった押尾だが、物語の最後にイベントを発生させるのかと思えば、すんなりと退場。
物足りなさを感じたが芥川賞(純文学系新人賞)作品は、こんな感じの物語もあることを思い出した。
受賞してから2年、途切れなく作品は出されているようだ。

と思っていたら、本人は分かっていたようす
芥川賞受賞以上に凄いことはきっともう自分の人生で二度とないでしょうし、「おいしいごはんが食べられますように」ほど売れる著書も今後出ないだろうから、きっとこれがピークだと思うのです。でもそれをあまりに自覚すると哀しいし動揺しそうだから、考えないようにして整理している感じです。
文士になるとエッセイの依頼やインタビューは多いようだ。
エッセイ「こわいものをみた」noteで連載中
MOH
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