41. 哀愁の燻製
うちの部長渋沢は自慢の部長だ。話しぶり身のこなし服装ととにかくシブイ。部下の失敗も燻し銀(後で彼のおかげと気づく)の手回しで救ってくれる。
部長が僕たちを自宅へ招待してくれた。長年働いてきて初めてだ。「アンティークの燻製器を買ったんだ。若者の間でもスモークするのが流行ってるんだって?みんなでひとつどうかな」
緊張を隠しつつチャイムを鳴らす。プライベートの部長もシブイ、家を案内してくれる。英国調の庭世界の調度品並ぶ玄関地下にシアタールームがあり居間には暖炉まで。
居間の大きな窓から外へ、件の燻製器を拝む。既に食材が仕込んであり燻されている。「味をみてくれないか」と取り分けてくれる。ウニや白子ビターチョコなどにスモーキーなウィスキーを合わせたりするのだろうか。渡された皿には柿栗山菜がのっていた。渋すぎる...。僕たちは買って来た浮かれた食材を隠し、注がれたタンニンの濃いワインを辛酸を嘗めるようにちびりとやった。
