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59. サンタ酸

 「クリスマスイヴか」仕事を早めに終え、妻と子どもたちがパーティーの始まりを今か今かと待ってるだろう我が家へと急ぐXの足取りはいつになく軽い、どころか浮いているように見えた。子どもたちが大きくなるまでこの幸せなイベントは毎年続くものと思っていたし、事実それはその通りになった。
 子どもたちを立派に育て上げ、これからまた夫婦水入らずの生活を楽しむつもりだったのにあいつ...。二人の間に何があったのか?憶測がとても追いつかないほどの憎悪が渦巻いていた。
 「何がクリスマスだ」元妻に明け渡したマイホームの屋根へと上がり、幸せの象徴だった煙突から中を見下ろした。「メリークリスマス」薪を割る人間がいなくなって久しい暖炉に届くくらいの声を落とす。何だろうと下から覗き込む元妻の顔から全身に、顎髭にたっぷりと染み込ませたサンタ酸が滴り落ちると同時に悲鳴が昇ってきた。酸は口髭に達し、彼は舌舐めずりすると煙突を逆さまに落ちていった。

#毎週ショートショートnote #サンタ酸

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