65. 雪和尚
その山の頂には、毎年一月末日に雪が降り積もる。不思議なことに山の周囲や麓には一切降らないという。頂上にはぽつと一軒の古寺があり、老いた住職が一人で暮らしていた。物音といえばたまに獣の鳴き声がするばかり、なんとも侘しい世界であった。
そんな和尚にも、過ぎし日に好意を寄せた女性がいた。控えめな女性(ひと)で、時折何かの節にほんのりはたくおしろいがとてもチャーミングで、和尚の口から出るいつものお経にもグッドメロディがついたものだった。
美人薄命とはよくいったもので、彼女もそのカルマにしっかりと掴まれてしまっていた。若かりし和尚が街に下りて彼女とデスコなど行き、のぼせた気分とともに山頂の寺に戻ったその時分、麓の街で女性は逝ってしまった。
後日それを聞いた和尚は、それから彼女の誕生日の夜には堂でお経を唱え、その一文字一文字が雪となってふわりと寺の周りに積もるのであった。まるであの女性の控えめなおしろいのようであった。
