43. 額に入った夕暮れ
あなたは部屋に一つ額を飾るとしたら何を入れるだろうか?私の祖母の部屋には見事な夕焼けの写真が飾ってあった。それはどこかの街の夕焼けの写真で、見事なと言ったのはそれが一般的な夕焼けのイメージより赤みが強かったからだ。写真は古く全体的に輪郭がぼやけていた。それもあって色味だけが強調されて印象に残った。このことは私の人生において「美しさと怖さは同時に存在し得る」という考えを持つに至った要因の一つとなる。
ある時祖母を車椅子に乗せ故郷の海岸線を歩いていた。夕焼けが水平線と海面そして祖母の顔を彩る。「キレイだね、おばあちゃんの部屋の写真には負けるけど」私は何気なく口にした。「あれは私の故郷が戦火に見舞われた時の」夕陽が眩しいのか何かを思い出したのか目を閉じそう答えた。そうか、あの写真に感じた怖さの中の美しさは祖母の平和を願い続ける気持ちだったのかと私は少し腑に落ちた気がし、今日の夕焼けを忘れないようにしようと思った。
