57. 文学茶釜
執筆中の楽しみは茶を嗜むこと。いつも弟子たちが淹れてくれる。私にも弟子なるものたちがいて、それはそれでかわいいものである。
なぜ喫茶にハマったのかというと、世にも珍しい、そして小説家たちにとってパワーアイテムになりそうな『文学茶釜』なるものを手に入れたから。それはなんぞや?教えて進ぜよう。
文学作品の頁を茶葉大に切り刻み、茶の要領で淹れることができる、これが文学茶釜。上手いこと書いてある頁は旨い茶になる。いつも弟子たちにこれはと思う作品を選ばせ淹れてもらうのである。
「いい文が書けた。一服するとしよう」今日の担当は一番弟子。「茶を頼む、おぬしのセンスを見せてくれ」今までで一番の私の自信作です、と言って出された茶を口に含む。薄い、ほとんど味がない。「何の作品を淹れたか言うてみ」「私の大好きな先生の『○○○○』です」もう一口啜る。ぬるくなって渋くもないのに涙が滲む。私はもう一度ペンを執り、背筋をピンと伸ばした。
