見出し画像

紫陽花(あじさい)

朽ち果てた
紫陽花の向こうに咲く
秋桜
ここに 夏はない

朽ち果てた
紫陽花はかつて
空色
青藤色
わすれな草色
あるいは
桃花色
であったかもしれない

だが それはもう 
かつての色彩をもたぬ
朽ち果てた花であった

誰も
目を止めることのない
話し掛けることもない
忘れられた花であった

それは
朽ちてゆく女であった

かつて
母であったことも
女であったことも

少女であったことも
処女であったことも

かつて
誰かに心を奪われ
胸を躍らせていたことも

何もかも
忘れ
朽ちていくのを
ただ 待っていた

乾いた風の中
煩雑さの繰り返し
からからに乾いて
朽ちていた


夏など来るはずも
なかった

だが或る時
通りすがりの男が
足を止めた

その見ず知らずの男は
朽ち果てた花を見て
言った

なんて美しい くるみ色
その男は くるみ色を
好きだという

女は信じられなかった
そして 男の言葉の中に
かすかな嘘が紛れているのに
気付いた

女は信じられなかった
やがて 自分の体の中に
かすかな潤いが満ちていくのを
知った
 

女は男を信じてみたくなった

その日から
男と女は しばらくの間
一緒に夜を過ごした

忘れていた夏が
やって来たのだ 

男は 女の中に見えるものが
自己愛だとは
気付かなかった

女もまた
男の中に
自分のカケラを探した

それは遅れて来た夏だったのかもしれず
ただの通りすがりの夕立だったのかもしれず

男は女を愛していたのかもしれず
男は自分を愛していたのかもしれず

女は男を愛したのかもしれず
女は男に愛されたかったのかもしれず

確かめる術もなく
それらは全て 消えてしまった


2022年11月に金澤詩人賞に応募した作品です^_^
候補作でした😅💦
ざんねん

創作を再開して最初の公募でした
今は詩の応募はしていません

Photo by snafu_2020さんのステキな写真を使わせて頂きました。^_^