「ちゃんとしなきゃ」の正体は、責任感じゃなかった |仕事術|心理学|自己理解
「ちゃんとしなきゃ」。
この言葉を自分に言い聞かせてきた回数は、もう数えられません。
仕事でミスをしたくない。
わかりにくいと思われたくない。
「あの人、ちゃんとしてるな」と思われていたい。
それは社会人として当たり前の意識だと思ってきました。
でも最近、ふと気づいたことがあります。
「ちゃんとしなきゃ」の中身を冷静に見てみたら、
責任感で動いていた部分は、思ったより少なかったんです。
上司へのメール1通に、30分かけていた話
金曜の夕方、オフィスは少しずつ静かになっていく時間帯でした。
隣の席では同僚が「お先に失礼します」と帰り支度を始めている。
僕はまだ画面に向かっていました。
上司への報告メール。
進捗の共有と、1つの確認事項。
3行で済むような話です。
なのに手が止まる。
敬語はおかしくないか。
主語と述語のつながりは自然か。
この順番で書いて、わかりにくくないか。
読み返して、直して、また読み返して。
「これでいいか?」と自分に聞いても、OKが出ない。
同僚が同じ内容をさらっと5分で送っているのを横目で見て、「自分はなぜこんなに時間がかかるんだろう」と思っていました。
別に過去に大きなミスがあったわけでもない。
怒られた記憶があるわけでもない。
ただ、「雑な人だと思われたくない」「ちゃんとした内容を送りたい」。
その気持ちが、たった3行のメールを30分の作業に変えていました。
「ちゃんとしなきゃ」を分解してみた
メールに30分かけた自分に嫌気が差して、そもそも「ちゃんとしなきゃ」の中身を考えてみたことがあります。
口癖のように使っている割に、中身が漠然としすぎている。
分解してみると、3つに分かれました。
クオリティを守る意識。
仕事の品質を一定以上に保ちたい。
誤字脱字はないか、論理は通っているか。
これは健全な責任感です。「ちゃんとしている人」だと見られたい気持ち。
雑な人間だと思われたくない。
気遣いができない人だと失望されたくない。
これは責任感というより、周囲の目への意識です。「ダメだ」と思われることへの防御。
ミスがバレたら信頼を失う。
わかりにくいと思われたら、能力が低いと判断される。
これはもう、怖さに近い。
メールに30分かけていた自分を振り返ると、1つ目はそこそこできていました。
内容自体はちゃんとまとまっていた。
問題は2つ目と3つ目です。
「わかりやすくしたい」という気持ちはたしかにある。
でも正直なところ、それ以上に「ダメなやつだと見られたくない」が先行していた。
送信ボタンを押せなかったのは、品質が足りなかったからじゃない。
「失望されるかもしれない」という気持ちが消えなかっただけです。
「ちゃんとしたい」にも種類があるらしい
心理学者のヒューイットとフレットは、完璧主義を3つの類型に分けています。
1つ目は「自己志向型」。
自分で自分に高い基準を課すタイプ。
2つ目は「社会規定型」。
周囲が自分に完璧を求めていると感じるタイプ。
3つ目は「他者志向型」。
他人に完璧を求めるタイプです。
要は、大事なのは1つ目と2つ目の違いです。
自己志向型:「もっと良いものを作りたい」で動く。
前向きなエネルギーにもなる社会規定型:「周りの期待に応えなければ」で動く。
失望されることへの防御
僕のメール30分問題は、まさに社会規定型でした。
「自分がもっと良い文章を書きたい」ではなく、「相手にちゃんとしていないと思われたくない」で手が止まっていた。
ちなみに、この社会規定型は世代を追うごとに増えているという研究もあります。
SNSで他人の「ちゃんとした姿」が可視化される時代、「失望されたくない」の圧は増す一方なのかもしれません。
メールだけじゃなかった
これ、メールだけの話じゃありませんでした。
資料作成でも、「わかりやすく伝えたい」はずなのに情報を削れない。
「足りない」と思われるのが怖いから。
皆さんも心当たりはないですか。
「丁寧にしたい」と思って始めたはずの作業が、いつの間にか「粗を見せたくない」に変わっている瞬間。
振り返ると、「相手のためにわかりやすくしたい」と「自分がダメだと見られたくない」は混ざっている。
そして厄介なことに、後者が前者の顔をして紛れ込んでいる。
今は「これはどっちだ?」と一回だけ確認している
これに気づいてから、心がけていることが1つだけあります。
メールや資料の手が止まったとき、「今の自分は品質を上げようとしているのか、失望されないようにしているのか」と一回だけ確認することです。
品質の話なら、手を動かし続ける意味がある。
でも「ちゃんとしていると思われたい」が動機になっているなら、それは品質を上げているのではなく、不安を埋めているだけです。
不安は埋めても埋めても消えない。
正直、最初のうちは全然うまくいきませんでした。
「これは防御だな」と気づいても、結局そこから15分かけて直してしまう。
気づくことと止められることは、別の話でした。
でも、ひとつだけ変わったことがあります。
「自分はダメだから時間がかかるんだ」と思っていたのが、「ちゃんとしていると思われたい、だから慎重になっている」に変わった。
能力の問題じゃなくて、防御の問題で、これはある程度仕方ない話。
そう思えるだけで、自分の中で割り切りができました。
もう一つ、結構変わったのは完璧を目指さずに、途中でも一回出すと最初に決めてしまうことです。
メールなら「5分で送る」。
資料なら「10ページ以内」。
上限を先に決めると、「もっとやらなきゃ」のループに入りにくくなります。
正直、今でもメールに時間をかけすぎることはあります。
すぐには変わらない。
でも、「ちゃんとしなきゃ」の中身が全部責任感だと思っていた頃よりは、少し気が楽になりました。
最後までお読みいただきありがとうございました!
この note では、仕事の中で感じる「うまくいかない」を、データ分析者の視点で一つずつ分解しています。
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