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正しいアドバイスほど、部下の『余白』を奪う |マネジメント|管理職|部下育成

「あの上司、いちいち口を出してきてしんどい」
そう思われる側に、僕は今、片足を突っ込んでいる気がします。

部下を持つ立場になって、自分でも戸惑っていることがあります。
部下との距離感です。
どこまで口を出して、どこから任せるのか。
その線が、いまだに引けません。



「先に握手(合意)しておかないと、後で手戻るよ」

夕方、フロアの席がぽつぽつ空きはじめたころでした。
部下が、ノートパソコンを抱えて僕の席までやってきます。

「ちょっといいですか、例の分析なんですけど」
画面をこちらに向けて、途中まで組んだ集計を見せてくれました。
「この切り口で進めてます」

僕は、その数字を目で追いました。
——その瞬間、頭に、先にリスクの方が浮かびました。
このまま進めると、後で必ず引っかかる。

気づいたら、口が動いていました。

「その切り口で進める前に、考えうる切り口を洗い出して、メリデメを並べて、クライアントと握ってからにしよう」

そこから先も、口が止まりませんでした。
「先方が何も言ってこないからと言って、OKというわけではない、先に握手(合意)しておかないと手戻りする」
——と、立て続けに、こまごましたことを並べ立ててしまいました。

部下は、少し間を置いてから言いました。
「あー……確かに、そうですよね……」


帰り道で、ふと引っかかった

その日の帰り道、なんとなく引っかかっていました。
「あーまたやってしまった。細かく言いすぎたな」と。

言ったこと自体は、おおむね間違っていなかったと思います。
あのまま進めていたら、たぶん手戻りしていました。
リスクは現実だし、僕の指摘は的確だったと思います。

でも、あの「あー……確かに、そうですよね……」のトーンが、頭に残っていました。
自分が部下だったころ、ああいう先回りの上司を、内心うっとうしいと思っていなかったか。

『正しいんだから、いいだろう』
『でも、これって、自分が嫌だった"あの上司"じゃないか』
頭の中で、二つの声が綱引きをしていました。


僕の口出しは、誰のためだったのか

分析者の癖で、自分の動機を一度ばらしてみることにしました。
なぜ、あんなに細かく言ったのか。

表向きの理由は、はっきりしています。
部下のためのリスクヘッジです。
手戻りで部下が困らないように、先回りして潰しておく。

でも、考えていくうちに、別の声に気づきました。
「自分が"そのリスクに気づけなかった"と、後で言われたくない」
部下が失敗したとき、上司の僕が見落としていたと思われるのが、こわい。

……どっちなんだ、と思いました。
部下を守りたいのか、自分を守りたいのか。
正直、自分でもうまく区別がつきません。

世間では、こういうのを「マイクロマネジメント」と呼ぶようです。
「優秀な人ほど、人を育てるのが下手だ」とも言われます。

でも、僕は優秀なわけじゃない。
ただ、年次が上なだけです。
長くやっていれば先が見えるのは当たり前で、それは才能じゃなくて、経験の差でしかない。

問題は、その先に見えてしまうものを、部下にどう渡すか。
つまり、距離感の方なんだと思います。
そこを、僕はまだ間違え続けています。


「考える余白」は、「答えを隠すこと」じゃない

じゃあ黙って任せればいいのか、というと、それも違う気がします。

最近は、こうしようとしています。
まず、一度は考えさせる。
「君は、どの切り口が要ると思う?」と、問いを返してみる。

返ってくる答えはいろいろです。
詰まってしまうこともあれば、見当違いのこともあるし、こちらの想定どおりのこともある。

でも、どの場合でも、頭ごなしに正解を渡すことはしないと決めています。
まず「なるほど」と一回受けてから、「僕はこう考えてる。理由はこうだよ」と、自分の意見も並べる。

教える、というより、意見交換みたいにしたいんです。

なぜ、そこまでするのか。
昔、逆のことをされて、しんどかったからです。

毎回こちらに問いをぶつけて、さんざん答えさせる上司がいました。
それで最後は、「そこをもっと考えていかなあかんなぁ」とだけ言って、ふっといなくなる。

たぶん、あの人自身も答えを持っていなかったんだと思います。
僕に丸投げした挙句、返ってきた答えがしっくりこなかっただけ。
それを「考えが足りない」という言葉で、こちらの宿題にして去っていく。

あれは、伴走じゃなくて尋問でした。
問いだけ投げて、答えを言わない。
残るのは「で、結局、自分は正しかったのか」が分からない、ただ問い詰められた感覚だけです。

自分のやり方が正しいのかは分かりません。
でも、ああはなりたくない。

部下に渡したいのは、自分で迷って、考えて、たどり着くための時間です。
それが「余白」なんだと思います。

答えを隠して放っておくこととは、違う。
余白は、空白じゃない。

それでも難しいのは、さじ加減です。

どこまで考えさせて、どこで答えを渡すのか。
早く答えを言いすぎて余白を奪うか、引っ張りすぎて尋問になるか。
僕は毎回、そのどちらかに外しています。

任される側だったあなたは、どんな上司が"ちょうどよかった"でしょうか。


まだ、答えは出ていない

結局、あの日の僕の口出しが「部下のため」だったのか「自己防衛」だったのか。
僕はまだ、答えを出せていません。
この距離感に、きれいな正解は、しばらく見つからない気がします。

今の僕にできるのは、せいぜいこれくらいです。
口を開く前に、半秒だけ立ち止まって、「これ、余白を奪ってないか」と自問する。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

実は、僕は管理職になってから、まだ1年も経っていません。
こうして部下との距離感に戸惑っている、なりたての記録を、これから不定期で書いていこうと思います。
答えの出た自己啓発ではなく、迷っている最中の記録です。

普段は、仕事の中で感じたことや考えたことを、データ分析者の視点で書いています。
今日の話に心当たりのある方は、ぜひ他の記事も覗いてみてください。

以前、「管理職は罰ゲームなのか?」という記事も書きました。
今日の話に関連する内容ですので、もしよかったらこちらもぜひ。

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それではまた次の記事で。


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