頼ることは、奪うことじゃなかった。「頼るのが下手」な僕が後輩から学んだこと |人間関係|頼る|心理学
人に頼るのが、昔からずっと苦手です。
一人で抱えてしんどくなっても、「大丈夫です」のほうが先に口から出てしまう。
今日は、そんな僕が「頼るのがうまい後輩」を横目で見ていて気づいたことを、書いてみます。
「仕方ないなぁ」と、手が止まっていた
水曜の午前中だった。
自分の作業に集中していたら、チャットが軽く鳴った。
5つ下の後輩からだった。
「すみません、この集計のやり方、ひろもさんのを一回だけ見せてもらえたりしますか」
画面の向こうには、途中まで自分で作りかけた資料が貼ってあった。
全部やってください、ではない。
「一回だけ」「見せてもらえたら」。
僕は自分の作業の手を止めて、「あー、いいよ」と返していた。
正直、その日は忙しかった。
なのに、なぜか嫌な気持ちにはならなかった。
それどころか、そのあとちょっとだけ、その後輩のことが気になるようになった。
あいつ、ちゃんとうまくできたかな、とか。
頼られたのに、なぜか得した気分だった
頼られた=自分の時間を奪われた、のはずなのに、なぜかこっちが得したような感覚が残っている。
これには、ちゃんと名前のついた説明がある。
人は、誰かに手を貸すと、その相手をかえって好きになる。
「ベンジャミン・フランクリン効果」と呼ばれるものだ。
だとすると、僕はあの後輩に「手間」を渡されたはずなのに、受け取ったのは手間だけじゃなかったことになる。
じゃあ、あの頼み方の何がうまかったんだろう。
そこが、妙に引っかかった。
僕は、この真逆をやっている
考えてみると、僕は頼るとき、あの後輩とはだいぶ違うことをしている。
頼むこと自体が、できないわけじゃない。
仕事でなら、「ここだけお願いできますか」と振ることもある。
ただ、口に出す前に、いつも少しだけ身構えている。
押し付けがましくないか。
くれくれ言っているように聞こえないか。
そういうことを一度考えてから、ようやく頼んでいる。
たぶん僕は、頼る=相手から何かを奪うこと、だと思っている。
だから、奪う分だけ申し訳ない、と身構える。
ずっと、その一面しか見ていなかった。
「助けられ力」を、分解してみる
あの後輩の頼み方を、分析者のクセで分解してみました。
コツが3つ。それと、もう一つ"前提"がある気がします。
一つ目は、頼み方に"テイカーのにおい"がしないこと。
「どうすればいいか教えて」だけだと、どこか"くれくれ"に聞こえることがある。
何でもかんでも人から取っていく、テイカー気質のにおい。
頼まれても不思議と協力してしまう人と、仕事を押し付けてきてなんだかムカつく人。
あの差は、たぶんこのにおいが出ているかどうかなんだと思う。
二つ目は、相手をさりげなく立てていること。
あの後輩の「ひろもさんのを一回見たい」は、取りにきているというより、こっちのやり方に価値を認めてくれている感じがする。
頼まれたほうは、否定されるどころか、ちょっと立ててもらった気になる。
三つ目は、助けやすいサイズに切って渡していること。
全部お願いします、でもない。
自分で全部抱えます、でもない。
「ここだけ」に切ってあるから、受けるほうのハードルが低い。
そして、コツとは別に、もう一つ。
そもそも「頼る」という行為には、最初から味方している前提がある。
さっきのフランクリン効果です。
頼られた側は、損するどころか、なぜかその人のことが少し気になってしまう。
これは本人が何かしたわけじゃない。
頼られた時点で、勝手にそうなる。
並べてみて思ったのは、僕にできているのは三つ目くらいだ、ということでした。
仕事で「ここだけお願い」と切るくらいはする。
ただ、それでも毎回、少しは気を使っている。
一つ目も二つ目も、そもそも発想すらなかった。
頼ることは、奪うことじゃなかったのかもしれない
一番ひっくり返されたのは、その"前提"のほうでした。
僕はずっと、頼る=相手から奪う、だと思っていた。
でも、頼られた側がむしろ得した気分になるのなら、頼ることは「あなたを頼りにしています」という信頼を、相手に渡している行為でもある。
奪っているんじゃなくて、渡してもいる。
頼るのが下手な人は、たぶん、奪う面しか見えていない。
だから、渡せるはずのものまで、全部自分で抱え込んでしまう。
もちろん、あの後輩がそこまで計算してやっているとは思えません。
むしろ、何も考えずに自然にやっている。
そこが、ずるいというか、正直うらやましい。

で、真似できたかというと
理屈が分かった気になったので、この前、少し意識して人に頼ってみました。
自分ひとりだと時間のかかる作業を、「ここだけお願いできますか」と振ってみる。
これは、できる。
実際、やってもらえた。
ただ、あの後輩みたいに、すっと身構えずに頼めたかというと、そうでもない。
頼む前に、やっぱり一度考えてしまう。
押し付けに聞こえないかな、と。
「迷惑かな」が完全に消えたわけじゃなくて、音量が少し下がっただけ、という感じでした。
頼めないわけじゃない。
でも、あの"におい"のなさは、まだ真似できていない。
完全に頼れるようになったわけじゃない。
でも、頼ることの見え方は、前より少しだけ変わった気がします。
奪うだけじゃない、と思えるだけで、次はもう少し言えるかもしれない。
……たぶん。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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今回は「助けられ力」の話でしたが、以前「そもそも人に頼れない」ことについて書いた記事もあります。
根っこは、たぶん同じところにあります。
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