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みちラジから渋滞情報の抱える課題について考えてみた (2. 渋滞情報の課題編)

書きたい事が多すぎて、非常に長い記事になってしまったので、前後編に分けて掲載します。

『みちラジ』の紹介自体は前半に記載していますので、前半記事をご参照下さい。




3. 社会インフラとしての渋滞情報

さて、前半の記事では、みちラジについて語ってきましたが、ここからは視点をガラッと変えて、渋滞情報全体について触れたいと思います。


3-1. 渋滞情報の発信媒体

渋滞情報を入手する手段として、私が知る限り以下のようなものがあります。

・ 本線上の電光掲示板
・ ハイウェイラジオ
・ AM/FMラジオの定時放送
・ PA/SAの電子掲示板
・ ドラとらやiHighway、みちラジ、mew-tiのような高速道路事業者のアプリやサイト
・ JARTIC(日本道路交通情報センター)のサイトや電話サービス
・ VICS (FM多重、電波ビーコン(ETC2.0)、光ビーコン)
・ Yahooカーナビやカーナビタイムの渋滞情報マップ
・ Yahooカーナビやカーナビタイム、Google Mapなどのプローブ情報

こうして見ると、意外とたくさんありますね。

ただ、これらの情報をデータソースや発信母体に主軸を置いて整理してみると、もう少しシンプルになります。

【高速道路事業者からの一次情報】
・ 本線上の電光掲示板
・ ハイウェイラジオ
・ PA/SAの電子掲示板
・ ドラとらやiHighway、みちラジ、mew-tiのような高速道路事業者のアプリやサイト

【JARTIC(日本道路交通情報センター)からの提供情報】
・ JARTIC(日本道路交通情報センター)のサイトや電話サービス
・ AM/FMラジオの定時放送
・ VICS (FM多重、電波ビーコン(ETC2.0)、光ビーコン)
・ Yahooカーナビやカーナビタイム、ATISの渋滞情報マップ

【民間事業者の独自情報】
・ Yahooカーナビやカーナビタイム、Google Mapなどのプローブ情報

【高速道路事業者からの一次情報】は、有料道路・高速道路のサービスを提供する事業者として、サービス品質 (早く、快適に移動が出来る) と安全 (事故を防ぐ、二次被害を防ぐ) を担保する為に、義務・責任として提供している情報と言えます。

【JARTIC】については、『公益財団法人 日本道路交通情報センター』という正式名称からも分かるとおり、『道路交通の安全と円滑化に資する』(抜粋)という公共の利益 (公益) を目的とした情報提供であり、社会インフラとしての情報となります。

【民間事業者】については、地図アプリや交通情報アプリ自体をサブスクリプション販売する事による利用料収入 (ナビタイムやATISなど) のほか、アプリやサイト利用時に表示する広告での収入、交通に関するデータを事業者に販売する事による収入など、渋滞・交通量情報を商品として提供する事で利益を得る事を目的としています。


こういう整理をすると、日々、渋滞情報提供に関して感じているモヤモヤの理由が何となく見えてくる気がします。

3-2. 渋滞情報に感じるモヤモヤ感とその理由

私が主に、渋滞情報を知りたいと思って調べるタイミングは次の3つです。

1. 出掛ける前に混雑する日・時間・ルートを確認し、渋滞にハマらず快適に出掛けたい

2. 進行方向に渋滞がある為、迂回すべきか?休憩すべきか?といった、次の行動を決める材料にしたい

3. 今ハマっている渋滞がいつ終わるのか / 何分遅れで到着出来るのか知って心理的安全性を担保したい / 先方に連絡をするか判断したい

では、それぞれのシーンで、道路を走っているユーザではなく、各事業者視点ではどのようなマインドになるのか、整理してみたいと思います。なお、あくまで私個人の感想ですので、そこは割り引いて読んで下さい。


1. 出掛ける前に混雑する日・時間・ルートを確認し、渋滞にハマらず快適に出掛けたい

【高速道路事業者】
交通集中が起こると渋滞が発生し、事故のリスクが高まる。事故が起こると事故処理のコストは掛かるし、社会的な批判も浴びやすいので、マイナス要素しかない。
なので、渋滞予測を出して、なるべく交通量とリスクの両方を分散させたい<良くない事が起こる前に事前に予防したい>

【JARTIC】
渋滞や事故が発生すると社会インフラが麻痺してしまうので、これを阻止するのが使命。
その為には渋滞の研究・分析を行い、渋滞予測をする事で、社会に貢献したい (+ある程度の収入を得たい) =<研究や情報発信により社会に貢献し、運営に必要な収入も多少は得たい>
(※公益財団法人なので、あくまで研究を含めた運用費として利用される、という意味での収入)

【民間事業者】
渋滞予測を踏まえた正確な到着予測時刻の提供と迂回ルート案の提供により、他社サービスとの差別化を行い、自社サービスを多くの人に利用してもらって収益を上げたい<機能と利便性を上げて差別化し、とにかく利用者を増やして収益を得たい>


2. 進行方向に渋滞がある為、迂回すべきか?休憩すべきか?といった、次の行動を決定する材料にしたい

【高速道路事業者】
先ほど書いた通り、渋滞はリスク、事故はコスト。渋滞発生箇所に交通が集中すると事故を誘発するので、なるべく来て欲しくない。
なので、一般道を走行中の車やこれから出発しようとしている人に対し、高速道路に乗らない事を推奨する事で、リスクの分散を行いたい。
また本線走行中の車に対しては、事故を起こさないよう警告を行い、少しでもリスクを減らしたい<事故のリスクを最小限に抑える事が最優先>

【JARTIC】
渋滞中の情報を収集する事で、研究・分析データとして蓄積したい。また、民間事業者 (テレビ・ラジオ・アプリ) に対する情報提供を行う事で、ある程度の収益を確保したい。その為には渋滞の状況など、メディアに提供出来る情報 (尺があまるので) の収集が必要 = <研究目的+BtoBで情報提供し、収入(運営費)を得たい>

【民間事業者】
迂回ルート案を提供し、とにかく利用者が早く目的地に着く事を目指す<アプリ利用者のユーザ体験(UX)向上が目的>


3. 今ハマっている渋滞がいつ終わるのか / 何分遅れで到着出来るのか知って心理的安全性を担保したい / 先方に連絡をするか判断したい

【高速道路事業者】
事故処理が最優先。現場の情報はあくまで進捗管理。事故が長引くと、新たな事故を生むリスクが高まるので、対外への情報提供よりも、とにかく早く復旧させる事を優先したい。既に渋滞にハマっている車には、とにかく事故を起こさず、ここを通過してもらう事を願う<情報提供よりも、事故処理が最優先>

【JARTIC】
研究材料として、事故処理の情報 (経過時間と進捗・ステータス) は必要。民間事業者 (テレビ・ラジオ・アプリ) に対する情報提供のネタとしても必要 = <#2と同様、研究目的+BtoBで情報提供し、収入(運営費)を得たい>

【民間事業者】
迂回ルート案を提示する事で、とにかく利用者が早く目的地に着く事を目指すが、ICやJCTを通過済で逃げ道がない場合は為す術がない。よって渋滞中の進捗については興味がない。
渋滞マップで渋滞の長さを見せる事しか出来ない為、特に能動的に動く事はしない。広告型であれば、アプリ利用やサイト訪問者が増えて広告収入は増えるかもしれないが、走行中が前提なので、大っぴらに宣伝は出来ない<ナビは為す術なし。広告型は#2の延長で利用してもらう事を願う>




とまあ長々と書いてしまいましたが、このように、事業者ごとに情報発信の目的は大きく異なります。これが何を引き起こすかというと、発信する情報の内容とターゲットが変わります。


これがそのままユーザの利便性・UXに直結する訳ですが、上に書いたとおり、道路を走るユーザの要望をすべて満たすサービスがどこにもありません。


例えば#1の場合は、比較的皆さんやる気を出している分野なので、情報量も豊富で、GWや年末年始のように、発信も積極的に行っている為、比較的良いと思います。

ところが#2と#3の場合は、状況が変わります。

例えばナビアプリについては、#2だけは頑張りますが、迂回ルート先を失って#3の状態になった瞬間、情報提供がほぼ止まります。(ATISやYahooカーナビなどの渋滞マップの提供については話は別ですが)

また、JARTICは情報は持っていても、VICSという自社媒体か、民間事業者向けの情報提供に終始し、使いやすいWebサイトやアプリといった、いまどきのユーザ体験にマッチするような使いやすさや分かりやすさには (結果的には) 重きを置いていません。

VICSでユーザ向けに直接情報提供は行っていますが、情報量や場所の制約が大きく、#2までは効果を発揮しますが、#3になった途端、ほとんど役に立ちません。

道路事業者に至っては最悪で、#2については、とにかく「こっち来んな」状態です。情報発信のメインターゲットとしても本線よりも一般道に目が向いていると思います。#3については恐らく、渋滞にハマっている車の存在は脅威で迷惑なものでしかなく、情報提供よりも、早く渋滞を解消したいという思いの方が強いと思います。




これを踏まえてユーザが享受出来る渋滞情報のサービスと品質を考えてみると、以下のようなまとめとなります。

1. 出掛ける前に混雑する日・時間・ルートを確認し、渋滞にハマらず快適に出掛けたい

一番みんなが頑張る分野なので、ユーザはしっかり利用しましょう。


2. 進行方向に渋滞がある為、迂回すべきか?休憩すべきか?といった、次の行動を決定する材料にしたい

民間事業者が頑張ってくれるので、活用しましょう。また道路事業者やJARTICは情報を持っていますが、目立つ所には開示してくれていないので、自分で頑張って取りに行きましょう。なので、ひとりで運転している人は調べる手段が限られるので辛い。


3. 今ハマっている渋滞がいつ終わるのか / 何分遅れで到着出来るのか知って心理的安全性を担保したい / 先方に連絡をするか判断したい

この情報に興味を持っているのは渋滞にハマっている人たちだけであり、事業者の皆さんはユーザ体験にはまったく興味がないので、X(Twitter)やYoutubeでも眺めて情報が流れてくる事を願いましょう。これもひとりで運転している人には辛い。




という訳で、長くなってしまいましたが、社会インフラとしての渋滞情報について取り上げてきました。

こうして見ると渋滞情報というのは、実際に高速道路を走るユーザではなく、他のところに目が向けられているのがよく分かるかと思います。


これは私個人の意見であり必ずしも正解ではないと思いますが、少なくともこういう見方が出来るのは事実だと思います。

つまりは、実際に高速道路を走るユーザに対する情報提供は少なくとも何かしらは不足しており、この点疑問を持ったり、この状況が自分にとって不利益を生むと気付く事業者が現れない限りは、ユーザの不満が解消される事はないでしょう。悲しいですが、これが現実のようです。


ただしそういう意味で言うと、『みちラジ』は、実際に高速道路を走るユーザに向けた機能が比較的豊富であり、NEXCO中日本さんはこの点に興味関心を持って、実際に行動してくれている、数少ない事業者なのかもしれません。そういう意味では未来は少し明るいかもしれません。


4. まとめに代えて

という訳で、今回は『みちラジ』の紹介を皮切りに、渋滞情報の提供の在り方について問題提起を書かせて頂きました。非常に長くなってしまいすみません。

今回は主張が強すぎる気がするので、胸焼けしている人もいるかもしれません (そんな人はここまで辿り付いていないかもしれませんが・・・・・・)

さて、いつもであればここで記事の内容をまとめるのですが、今回はお願いというか、渋滞情報提供の未来について少し書いて、まとめとしたいと思います。




この記事を書いていてずっと頭に浮かんでいたのが、鉄道事業者の運行情報アプリの存在でした。

あまり地方在住の方にはイメージが付かないかもしれませんが、東京など過密スケジュールかつ複数路線が入り組んでいる地域にとって、このアプリは鉄道利用者の生命線とも言えます。

鉄道も高速道路も社会インフラという意味では同じなので、運行情報の提供についても、高速道路と同じような構図で語る事が出来そうです。


ところが不思議なことに、鉄道においてはJARTICのように表だって情報を集約する公益財団法人はありません。(※あくまでリアルタイム情報の提供という意味で)

代わりにそれを担っているのが、首都圏の場合はJR東日本となります。

JR東日本は一次情報の発信元でありながら、接続する私鉄の情報も含めた運行情報を、自社のJR東日本アプリで提供しています。

情報量やスピードに差はありますが、このアプリひとつですべての鉄道運行情報の速報情報が入ってくるので、詳細は各事業者のアプリやサイトに飛んで調べる事も出来ます。

ここでポイントなのが、まとまった情報の提供を行っているのが、BtoCの民間事業者 (といってもJRですが) であるという点です。自社情報だけでなく、迂回ルート案も含めた情報の提供の質が、自社に対するクレームに直結するからこそ、ユーザ体験を重視したサービス提供に繋がっているのだと思います。

鉄道は振替輸送という仕組みがあり、自社サービス提供に支障があった場合に、他社サービスを利用出来る契約が用意されているのと、その為の情報共有の仕組みがそもそも必要だったという事情はあると思いますが、それを踏まえてもユーザ体験を考えた、素晴らしい仕組みだと思います。


となると、悪いのはJARTICか?というと、そういう訳ではありません。高速道路は日本全国繋がっている事や、情報提供の為に、昔は多額のインフラ投資 (VICSとかITSとか) が必要だったという事情もあると思います。

一方で、その在り方が現代のニーズと技術に見合っているかと言われると、首を傾げざるを得ません。ただ、JARTICの目的が公益であり、公益はマスに目を向ける事が求められる為、ユーザ体験という個人個人に目を向けろという事自体に無理があるのかもしれません。


そうなると道路事業者か民間事業者が頑張るしかない訳ですが、民間事業者はサービス利用に課金を求める為、サンデードライバーなど、ごくたまにしか使わない人は、そもそも利用しようと思わない訳です。 (1日利用券とか欲しいですが、費用対効果に合わないんでしょうね) 

となると道路事業者が、となりますが、鉄道事業者のような契約や仕組みがない限り、他社情報を取り上げたり、他路線へ誘導するメリットがない為、自社メディアでの自社情報提供が限界なのだと思います。

ただそうなるとユーザが不便を強いられる訳で、そうするとアプリ利用者が減るという悪循環になる訳です。悩ましいですね。


せめてものお願いとしては、道路事業者の皆さまには、『みちラジ』のように『自社管理分の情報提供』だけでも充実してもらい、とりあえずユーザは『複数アプリを同時に立ち上げておけば、情報には事欠かない』というレベルまで持っていって欲しいです。

そうすれば次のステップとしてAPI接続とか、民間事業者が統合サービスを作るなど、第2ステップ・第3ステップの足がかりとなるかと思います。

繰り返しとなりますが、今回の『みちラジ』の取り組みはとても素晴らしいものでした。

是非この取り組みが早々に横展開され、一番優先されるべき『道路の利用者』(=サービス利用者) が不便を強いられないような仕組みの構築を、まずは何卒、何卒よろしくお願いします。


おまけ:今回のシビックRS。
大雨の中でも安定した走行でした。
KeePerコーティングで水弾きもバッチリ


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