香りの散歩道|蕺草(どくだみ)の花
白い蕾が、
茎の先で、すっと空を向いていた。
濃い緑に囲まれながら、
まだ開ききらない白が、
雨上がりの光を静かに受けている。
——
今日の香り:白い蕾
白い十字の花は、
何度も見てきたはずだった。
けれど、咲く前の蕾を、
こんなふうに眺めたのは
初めてかもしれない。
「どくだみの蕾って、
こんなに可愛らしかったのか」
思わず足を止めていた。
葉をちぎると、青臭さの奥に、
もうひとつ別の匂いが潜んでいる。
鼻の奥が、きゅっと狭くなるような、
あの強い香り。
昔の人が薬草として重宝した理由を、
言葉より先に、身体が理解してしまう。
半日陰の湿った場所で、
地下茎を伸ばしながら広がっていく。
踏まれても、
抜かれても、
また静かに葉を増やしていく。
それなのに、
蕾は驚くほどやわらかい。
どんな花でも、蕾を見ていると、
まだ見えていない時間まで
抱えているように感じる。
植物は、
ただ命を繋ごうとしているだけなのに、
そこに願いや意味を重ねてしまう。
そんな人間の心も、
どこか愛らしいものなのかもしれない。
白い蕾は、
何も語らないまま、
静かに光の中に浮かんでいた。
