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若い杜氏が背負うもの|香りの向こうに、人がいる #11

任されるということは、
どこから始まるのでしょう。

それは、
準備が整ったときなのでしょうか。
それとも、まだ足りないと
感じているときなのでしょうか。

はっきりとした境目はなく、
気がつけば、その場所に立っている。
そんな形で
始まることもあるのかもしれません。


まだ足りないという感覚


ある蔵で、
若くして酒造りの中心に
立つことになった人がいます。

経験が十分にあるわけでもなく、
すべてを理解しているわけでもない。

むしろ、
自分がどこまでできていないのか、
何が足りないのかを、
よくわかっています。

その感覚を抱えたまま、
それでも前に立つことになりました。

任されるということは、
自信がついた先に
あるものではないのかもしれません。


立つということ


その日、
いつもと同じ場所でありながら、
少しだけ違って見える瞬間が
あったのかもしれません。

蔵の空気。
人の気配。
交わされる言葉の少なさ。

そこにいる人たちの視線が、
静かに集まっていることに気づく瞬間。

何かを求められたわけではないけれど、
その場にいるだけで、
自分がその中心に立っていることを
感じる瞬間です。

そのとき初めて、
「背負う」ということの重さに
触れるのかもしれません。


引き受けるということ


逃げることも、
断ることもできたのかもしれません。

けれど、その場に残ったのは、
「離れてはいけない」と
感じていたからなのかもしれません。

まだ足りないまま、
不安を抱えたまま、
それでもその場所に立ち続けることを
選んでいたのではないでしょうか。

任されたというよりも、
ただその時間を、自分のものとして
静かに引き受けていたのでしょう。

背負うということは、
何かを持つということではなく、
その場にとどまることを、
選び続けていくことなのかもしれません。


今日の一杯の問い(1分でできること)


あなたがこれまでに、
「まだ早い」と感じながらも、任されたことはありますか

そのとき、どんな気持ちでそこに立っていたでしょうか。

小さな実践(1分)をしてみましょう。

・自信がなかったときの感覚を思い出してみる
・それでも引き受けた理由ではなく、そのときの空気を感じてみる
・いま、その経験をどう受け止めているかを見つめてみる

うまく言葉にできなくても大丈夫です。
ただ思い出すだけでも、十分です。

人は、任されたときに初めて、
その重さと向き合うのかもしれません。



背負うということは、
自信があるからするのではなく、
逃げずにその場に立ち続けることを
決めることなのかもしれません。


「香りの向こうには、必ず誰かがいる。」

その一杯が生まれるまでの時間に、
そっと思いを馳せてみたいのです。

今日も静かに、
一杯の向こうにいる人の気配を感じています。


次回は、「自分の味を信じる」



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