デ・キリコ展で奇妙なマヌカンたちに出会ったはなし。
漫画「ギャラリーフェイク」は大昔に読んだきりですが、ミステリークロックをはじめ「いつか実物を見てみたい」という欲求を何個も植え付けられました。
デ・キリコの絵画もそのひとつです。

春から東京都美術館で開催している「デ・キリコ展」、観たい観たいと思いつつもなかなか行けず、夏になってようやく観賞できました。
展示構成
自画像・肖像
形而上絵画
イタリア広場
形而上的室内
マヌカン
1920年代の展開
伝統的な絵画への回帰:「秩序への回帰」から「ネオ・バロック」へ
新形而上絵画
デ・キリコと言われて思いつく、暗い空・奇妙なオブジェ・マヌカンが登場するのは「形而上絵画」の章から。
形而上絵画とは「実際には見ることができないもの(現象・景色)を描く絵画」だとWikipediaには記載されています。シュルレアリスムとは違うらしい。
音声ガイドによれば形而上絵画ではヒトもモノのひとつとして扱われるため、デ・キリコの絵画では無個性のマヌカンが様々な役を演じている。
撮影は全面的に禁止。まだデ・キリコの作品はパブリックドメインじゃないし詰んだ……(記事の見栄え的な意味で)。
特設ショップを抜けると撮影スポットがあります。
基本的に日時指定予約ですが、都美術館の特別展なんで枠ごとに少しずつですが当日券販売もあり。
個人的見どころ
閃いた。写真が撮れないなら公式SNSの紹介ポストを出せばいいじゃない。
改めてまとめると好きな絵画はマヌカン系が多いな(小並感)。
ギャラリーフェイクに登場したのもマヌカンの絵だった記憶があります。
予言者
マヌカンが登場する初期の絵画。一つ目に見えるところが「予言者」っぽい。
「予言者」に変身した #マヌカン が、
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) December 5, 2023
海を渡って ニューヨーク近代美術館 から
やってきます!✈
同館に所蔵されてから、初の来日です🇺🇸🇯🇵
謎めいた予言者は、
何を語ろうとしているのでしょうか💭💭
ぜひ会場でそのささやきに耳を傾けましょう😌👂#デ・キリコ展#キリコ展#東京都美術館 #MoMA pic.twitter.com/Dbl9nr96EU
マヌカンがやってることはどうやら風景画の下書きなんですが、この「一つ目」
ヘクトルとアンドロマケ
同名の作品は複数展示されており、デ・キリコのお気に入りモチーフだったのかなぁ、と思います。
注目して欲しいのは2つめのポストのマヌカン。
🖼️《ヘクトルとアンドロマケ》
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) August 12, 2024
トロイアの勇将ヘクトルとその妻アンドロマケは#デ・キリコ がたびたび取り上げた主題のひとつです。
表情も個性もない #マヌカン として描かれたふたり。
どんな感情やストーリーを読み取るかは
観るひとに委ねられています👀#東京都美術館 #デ・キリコ展 pic.twitter.com/Z8BzkGJHg5
🖼️《ヘクトルとアンドロマケ》
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) March 27, 2024
トロイの攻防からの一場面🎨
愛する妻のアンドロマケに別れを告げ
戦場に赴くトロイの勇将ヘクトル⚔️
相思相愛の二人が #マヌカン に変えられて
描かれています👤👤#デ・キリコ展 #キリコ展 #東京都美術館 pic.twitter.com/65wOFygOxy
1つめはいかにも無機物の集合体っぽいですね。2つ目はアンドロマケの肢体がすごく肉感的。
展覧会を通して感じたのは、マヌカンは「機械的」とは限らないこと。むしろツルッとした仮面を被ったようなマヌカンが多く、なるほどマヌカンはデ・キリコにとって「演者」なんだな、と思いました。
神秘的な考古学者たち(マヌカンあるいは昼と夜)
じっさいの絵は全体的にもっと色温度が低いです。
これ、マヌカンの絵のなかでも特にSFっぽい雰囲気なんですよ。このままハヤカワの表紙になっても驚きません。
展覧会に出品された作品のなかでいちばん好き。
🖼️《神秘的な考古学者たち(マヌカンあるいは昼と夜)》
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) August 1, 2024
胴体に対し脚を小さく描く#デ・キリコ 独特の座像は
大聖堂のゴシック彫像を見て思いついたとか。
確かに、下から見上げている感覚になる。
向かい合うマヌカン2人、
ここでも表情は一切読めません…🤔#東京都美術館 pic.twitter.com/7x9Ao9R85U
形而上的なミューズたち
デ・キリコ展のメインビジュアルを務めてるやつです。
窓の外を見るに「形而上的室内」「マヌカン」の他に「イタリア広場」も入ってるのでは?
🖼️《形而上的なミューズたち》#フェッラーラ 時代最後の代表作の一つ。
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) July 30, 2024
この時期に取り組んだ二つの主題、
「形而上的室内」と「マヌカン」が
組み合わさった作品です。
室内にいる2体のマヌカンの周りに
定規📐のようなモティーフ、
そして窓の外には塔のある街並みが見えます🏘️#東京都美術館 pic.twitter.com/YBoEcIIvSv
ミューズと題されてるだけあって(大きな洞と三角定規に目をつぶれば)手前のマヌカンは整った頭部形状をしています。
彫刻作品群
公式が「見どころ」と言ってるだけあって、機械的なマヌカンも写実的な馬も興味深い。
さいきん絵画を観に行ったら彫刻が面白かった、ってケースが多いなぁ。
#デ・キリコ展 で見どころの
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) July 13, 2024
ひとつとなっている彫刻作品。
こんな彫刻も作っていたのか!と
驚いた方もいるのでは?
「美しい彫刻は、常に絵画的なのである」と
語った #デ・キリコ。
絵画作品でおなじみの主題が立体化され
輝いています✨
© Giorgio de Chirico, by SIAE 2024#東京都美術館 pic.twitter.com/V4exHC5l8s
緑の雨戸のある家
どうやらドールハウスではないらしい。
🖼️《緑の雨戸のある家》
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) February 20, 2024
天井の低い部屋の中に
建物や岩、木々など
本来は外にあるはずのものが置かれています👀
これは #デ・キリコ が1920年代から
新たに取り組んだ主題のひとつ。
かわいいような、不穏なような…
みなさんは何を感じますか?🤔#デ・キリコ展 #キリコ展 #東京都美術館 pic.twitter.com/7g3oXofMQZ
私は素直に「かわいい」と思ったクチです。色合いもデ・キリコの絵画にしてはパステル調ですし。
岩場の風景の中の静物
で、伝統的……?
タッチは確かに「ふつうの絵画」って感じなんですが、背景が岩山とか斬新すぎる。
🖼️《岩場の風景の中の静物》
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) May 1, 2024
「形而上絵画」で芸術家たちに衝撃を与えた#デ・キリコ ですが、1920年代からは
伝統的な絵画へ回帰していきます💫
本作はバロック期の絵画に傾倒していた
1940年代の作品。
古典絵画のモティーフを活用しながら
独特の雰囲気を醸し出していますね🤨#デ・キリコ展 pic.twitter.com/kCX06FZSyp
この絵に限らず、伝統的な絵画に回帰したはずの作品からどうしても「奇妙さ」を嗅ぎとってしまうのです。
本記事では取り上げませんでしたが、自画像や肖像画もどこか不穏なんですよね。
オデュッセウスの帰還
新形而上絵画の作品。室内の海でボートを漕ぐオデュッセウスが描かれています。
🖼️《オデュッセウスの帰還》
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) February 6, 2024
部屋の中に海...
しかもオデュッセウスがそこで舟を漕いでいる…
そして対照的に配置された椅子、壁にある風景は
左右で全く異なる雰囲気です🤔
このちぐはぐで唯一無二のイメージに
釘付けになってしまいますね 🫠#謎 #デ・キリコ展 #キリコ展 #東京都美術館 pic.twitter.com/QIL4B4ICOC
オデュッセウスと言えばトロイアから故郷イタケーへの長い長い旅路をうたった叙事詩「オデュッセイア」で有名ですが、大冒険もしょせん「自分の人生」という範囲でしかないのだろうか、と感じました。
特設ショップ

今回は気に入った絵のポストカード、コラボ缶バッジ、輸入品のきれいな紙を買いました。
オリジナルグッズの目玉はやっぱり人気イラストレーター・ヒグチユウコさんのコラボ缶バッジかな? 「不安を与えるミューズたち」をモチーフにしたイラスト台紙が本体かもしれない。
陳列はされてなくて、レジに半券を見せる必要があります(裏に購入済チェックされる)。
《不安を与えるミューズたち》
— 【公式】デ・キリコ展 (@dechirico2024) December 12, 2023
どこかで見たことがないでしょうか?👀
実はこれらの #マヌカン は #アンディ・ウォーホル の作品に登場したことがあるんです🎨#デ・キリコ の芸術を大絶賛したウォーホル❤️🔥
天才同士、通じ合うものがあったのでしょう💫#デ・キリコ展#キリコ展#東京都美術館 pic.twitter.com/MBLsTYo3fg
フォトスポット


おわりに
いちばんの発見は「マヌカンは機械的・無機的な描かれ方で統一されているわけではない」ことでしょうか。
ここでは取り上げませんでしたが、内蔵をさらけ出したかのように腹部に様々なモチーフを抱えたマヌカン、ルノアールのようなタッチで描かれたマヌカンなど実にバリエーション豊かです。
東京展は木曜に終わりますが、来月からは神戸展が始まります。
暗い空と不思議なオブジェ、マヌカンが織りなすデ・キリコの世界にご興味がありましたらぜひ足を運んでみてください。

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