ハニワときどき土偶のはなし。
「ハニワの展覧会? ……あれ? トーハクでもらったチラシと違う? 近代美術館でもやるの?」
同時期に同じ題材を扱うふたつの展覧会が開催ということで最初は混乱しましたが、コレは両方行くのが筋というもの。
十月からやってたにも関わらず色々あって観に行くのがとても遅くなってしまいました。
トーハクのほうは今週日曜に終わっちゃうんですが、今回の記事はふたつの展覧会に行ってきたレポとなります。
本記事では展示品名を除いて埴輪を「ハニワ」と表記します。
そもそも「ハニワ」と「土偶」の違いとは?
近代美術館のほうは展覧会の名称に「ハニワ」と「土偶」が入ってるので、まず両者がどういうものなのか調べました。
下図はWikipediaの記載を超ざっくりとまとめたものです。いらすとやの素材レベルでもハニワのあっさり具合と土偶のデコラティブさが判りますね。

意外だったのは「土偶イコール人型の土人形」だということ。言われてみれば土偶と聞いて思い出すモノはポーズの違いこそあれどヒトの姿をしてますね。

ゆえにハニワも「埴輪土偶」として土偶の一種と見なされた時期があったようです。おそらく人形ハニワを指す言葉なんでしょうが流石に無理があると思う。
まずはハニワと古墳時代を知ろう!
「特別展 はにわ」

まずはハニワのことを学んだほうがいいだろう、と思ってトーハクの「特別展 はにわ」に行きました。
チケットが日時指定ではないことから「そんなに混雑しないでしょ」と普段よりゆっくりめに家を出たんですが、現地で目にしたのはトーハクの敷地内に入るための長蛇の列!

(帰るときに撮影)
表慶館のほうでハローキティ展を開催していたので、そっち目当ての人が非常に多かったもよう。会場に入るの60分待ちとか言ってたもんな……。
一方ではにわ展側にも入場20分待ちの列ができており、自分の見通しの甘さを痛感。平成館2階のロッカー取れるかめっちゃ心配した。
平成館の特別展は2階のロッカーを確保できるか否かで快適度が段違いだからなぁ。
案の定自分が会場入りした時点では全てのロッカーが埋まってたんですが、幸いすぐに空いたんで上着とトートバッグを突っ込んで最低限の装備で鑑賞できました。
今回気になったのが第一会場入り口。

いつもは画像左上の入り口から開始なんですが左下からだったんですよね。
普段は第一会場抜けて第二会場入る前に特設ショップにぶち当たるんだけど、この配置だと第二会場抜けたらショップなんでそういう改善したのかな。
その割には音声ガイドレンタルはいつも通り画像左上だし、そもそもエスカレーターと大階段を囲むように通路があって好きなタイミングで特設ショップに行ける時点で意味の無い取り組みに思える。次の特別展では元通りの配置になって欲しいです。
前回の特別展には行ってないんで、夏の時点から「こう」だったのなら無理かな……。
展示室内には関連地図や関連地図があり、代表的なハニワだけでなく古墳時代の日本についても解説があります。


トーハクくんのモデル「埴輪 踊る人々」

野原古墳出土
右はトーハクくん(本名:東 博)だろ、と思ったら案の定モデル元だった。
近年の研究では馬子の可能性が高いらしい(古墳時代後期の作品なんで簡略化されてる)んですが、踊ってると考えたほうが楽しいかな。
このハニワたち、第一会場に入ってすぐのところに展示されてるんですがみんなが写真撮ってて、ここで初めて「特定の展示物以外は撮影自由」なことを知りました。
ちなみに禁止対象は仁徳天皇陵からの出土品です。納得なんだけど「埴輪女子頭部」は撮りたかった……ポストカードも売ってなかったし……。
デカァァァァァいッ説明不要!!

メスリ山古墳出土
ハニワは古墳に埋められるのではなく古墳の上に置かれます。刺繍ブローチの縁取りのビーズのごとく並べて配置されるのが円筒埴輪なんですが、物事には限度があると思います。
ちなみに展示室の誘導が一部円筒埴輪でした。凝ってるな。

挂甲の武人がいっぱいコレクション

相川考古館(重文)
千葉・国立歴史民俗博物館
東京国立博物館(国宝)
シアトル美術館
天理大学附属天理参考館(重文)
今回の目玉がコレなことに現地で初めて気付きました。
つい最近(最近ではない)国宝展で見たばっかりだよなァと思ってたんですが、そのトーハクの武人が国宝に指定されて今年で50年だから企画された展覧会だったんですね。
集められた5体の武人は全て群馬県出土。同じ工房で製造された可能性があるとのことですが、ディテールはそれぞれ異なります。
工房に「ハニワカタログ」があって、「矢は背中に背負わせてください」「カブトのひさしはもう少し深めで……」「ちょっと予算が少ないんで装飾をはぶくことはできますか?」とか顧客が要望出してたら楽しいなぁと空想。

パーツ毎に化学分析して再現した彩色復元もあります。これも今回の目玉のひとつですね。

高槻市今城塚古墳出土
人形ハニワは他にもたっくさん! あるんですが、キリが無いので敢えてひとつ選ぶとすれば「捧げ物をする女子」。ワキの造りがやけに凝ってるんですよ。
意外とリアルな動物ハニワたち
ハニワと言えばトーハクくんのようにデフォルメされたイメージがあるんですが、武人とか顔こそのっぺりだけど挂甲は写実的なのがけっこう多い。

誉田御廟山古墳(応神天皇陵古墳)出土
特に動物ハニワはリアルに感じたものが多いです。いかにもなハニワ顔なのにフォルムがよく特徴を捉えてたりする。そして鳥系は多くが顔じたいホンモノにそっくり。

辺田平1号墳出土

保渡田八幡塚古墳出土

大日塚古墳出土

白枡遺跡出土
魚形のハニワをなぜ古墳に置こうと思ったのかコレガワカラナイ

石薬師東古墳群63号墳出土
馬形埴輪は馬具や装飾がしっかり作り込まれててたてがみもフサフサ。反面、どの馬もなぜか尻尾が短いです。たてがみをフサフサにできるなら尻尾もフサフサにできそうなのに、なんで? 古墳時代の馬は尻尾を短くカットする習慣でもあったの?
ハニワ最新モデルはこれだ!

はにわ展で最後に取り上げるのは伏見桃山陵の 「御陵鎮護の神将」と同じ型で作られた、いわば複製ハニワです。
ってか明治・大正の世にハニワ作ってたんですね!? 室町時代あたりまでの鎧武者スタイルなのにハニワ顔は守るあたりにこだわりを感じる。
近現代におけるハニワと土偶の意義とは?
「ハニワと土偶の近代」


はにわ展観賞から日を改めて東京国立近代美術館の「ハニワと土偶の近代」を観に行きました。
今度は開館20分前に現地に着いたんですが、私が来たころにようやく入館待ち列が形成され始めましたね。列もそんなに長くなかったんでコインロッカーでゆっくり身支度する余裕がありました。
こちらも基本的に展示品の撮影が可能なんですが、撮影禁止の絵画や彫刻がちょくちょくありました。
頼むから撮影可能と撮影不可能を一堂に会さないでくれ。うっかりしそうで怖い。

ゆるっと可愛い「埴輪群像図」

展示は「好古」から「考古」への過渡期の時代から始まります。
蓑虫山人は学会に発掘報告もしていたようですが、「埴輪群損像図」は学問的資料というより古代ゆるキャラ大集合って感じがします。
この絵柄で包装紙とかノートとかの紙モノがあったら欲しいですね。
ただいまハニワ製作中「埴輪」

既にハニワの彩色が知られていたってのも凄いし、トーハク所蔵の挂甲の武人や水鳥形埴輪らしきモノが描かれてるのもすごい。
というか上野にはこの頃来たんでしょうね。
この絵が描かれる少し前、伏見桃山陵の造営と吉田白嶺の新作ハニワが新聞を賑わせていたそう。ハニワを題材にした歴史画はトレンディな題材だったわけです。
吉田白嶺と言えば、はにわ展で言及されていた「御陵鎮護の神将」ですね。さっそくはにわ展と繋がるとは驚き。

何を参考にして造形したか細かく書いてある
「明治天皇御大喪儀寫眞帳」(1912年12月)
ハニワVS土偶

実は花器
展示順としては後半ですが、岡本太郎による陶器作品。岡本太郎は圧倒的土偶(縄文土器)派なんですが、土偶は創作モチーフというより「伝統文化との対決」という活動指針。岡本太郎にとって縄文的なものイコール理想の姿なんですね。
花器である「顔」は伝統的な生け花との対決なんでしょうが、出来上がった作品は解説文にすら「むしろハニワっぽい」と書かれてしまうフォルムなのが皮肉というかなんというか。

こちらの「犬の植木鉢」もハニワ顔してますよねぇ。

お次はこの展覧会で私が一番好きだなと感じた版画。向かって左が現代女性で右が「ハニワの巫女」です。巫女の目線がこっち向いてるのが可愛くないですか?
現代女性がなんかイジワルそうなのは「いったいどうした!?」って感じですが。

作者の斎藤清は国際的な木版画家。ハニワだけでなく土偶の作品も手掛けています。中道派かな?

展覧会を見た限り、わかりやすくハニワ派なのは猪熊弦一郎っぽい。こっちはこっちで目が細いからか解説に「土偶にも似ている」って書かれちゃってるけど。
お前こんなところに……!? 豊富な資料類

(展示品詳細は画像参照)
この展覧会、近現代の画家・彫刻家の作品よりも目を惹くのが膨大な量の資料。

佐藤蔀「考古図譜より 大の人形の図 正面」(1887年頃)
国宝展に特別出演してた遮光器土偶の絵もありました。

(展示品詳細は画像参照)

(展示品詳細は画像参照)

アサヒ写真ブック「埴輪の美しさ」(1956年)
「日本の美 はにわ展」(ブリヂストン美術館)切り抜き記事(1958年)
そしてトーハクのはにわ展で見たばかりのハニワの写真がバンバン出てきます。見覚えあるハニワ探しだけで時間溶ける溶ける。

(展示品詳細は画像参照)

感慨深かったのは先日お亡くなりになった谷川俊太郎氏の詩がフィーチャーされてたこと。詩集、ちゃんと読むべきだな。
一応ホンモノもあるよ

※どこで出土したかは書いてなかった
原材料に「土」とだけ書いてあるの面白すぎる
少しですがこちらにもホンモノのハニワがあります。「盾持男子」は様式として両腕を省略するってはにわ展のほうで学びました。

(展示品詳細は画像参照)
描く意義が変化した土師部

ハニワと土偶の近代で最後にご紹介するのは羽石光志の「土師部」。都路華香の「埴輪」とシチュエーションこそ同じですが、この絵の背景には終戦後GHQによって武者絵が禁止されたという事情があります。
第二次世界大戦後、(敢えてこの一文を用いますが)「天皇を中心とした神の国」という「歴史」が喪われました。その穴を埋めたのがハニワや土偶といった考古資料、それらを発掘する当時の老若男女とくに子供の存在だったようです。
購入したグッズ


両展覧会とも基本的に撮影可能タイプだったので、ポストカードよりグッズの比重が高くなりました。


はに丸コラボグッズと野帳は両方にあったのでつい買っちゃいましたね。

終わりに
はにわ展は実際の「ハニワや古墳時代」そのものを、ハニワと土偶の近代は「近現代の人々がハニワ・土偶とどう関わってきたか」を学ぶための展覧会でした。
近代美術館のほうもハニワのほうが比重が高いと感じましたが、土偶が日本美術界に台頭してくるのは戦後からだそう。
この投稿タイミングで言うのもアレですが、両方見るならやはりはにわ展を先にするのがおすすめ。近代美術館のほうが終了が遅いですし、「これハニワ展で見た」の大量発生はやはり楽しいです。

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