見出し画像

不登校のきっかけは漢字ドリル? もう学校行かなくていいよ、とやっと言った日 はじめてのnote

未熟な親が、やっと学校行かなくていいよ、と息子のりょーたに言った日のことをはじめに書こうと思う。ここから不登校の日常が続いていくことになったから。

りょーたが小4のとき、ほとんど叫ぶように言ったことばがある。私が無理に学校に行かせて追い詰めた結果だ。5月の夕方の自宅、ぐちゃぐちゃの漢字ドリルを前にしていた。

「ぼくでいるんが嫌なんや。別の誰かになりたい。消えてなくなりたい。何をやってもうまくできない。クラスのみんなに変な目で見られる。先生もぼくをきらってる。ぼくだけが皆と違う。ぼく以外だったら誰でもいいから。死んだらいいの?お願い!」

こんな悲しい言葉あるだろうか、と思った。私にとっては自分の命よりずっと大切なりょーた、それなのに彼は自分が嫌いで消えたいんだ。

「そんなこと…、なんで?」こんな言葉しか出てこず、必死で息子の手を握ったけど、握り返してはくれない。すーっと身体が冷えた。

ならばせめて小さいときみたいに、わーんと私の胸で泣いてほしかったのに、彼にゆっくりと手をほどかれた。ああ、届かないんだ、と絶望した。りょーたが死んだらどうしよう。

りょーたはその春に転校したばかりだった。家族で何度も話し合って決めたことだ。前の学校では、同じクラスの子どもから暴力があった。先生たちも相手のご両親も、解決したと思っていたはずだ。謝罪のあとすっきりした顔をしていた。しかし私たちにとっては、全く違う。りょーたはすっかり置いてけぼりでの解決だった。

だからよけいに新しい学校で頑張っていたけど、不器用で空気を読めず空回りしたのだろう。はじめはなんとなく、次第にはっきりと仲間外れにされ、先生との折り合いも悪かった。

りょーたが叫んだその前の晩、彼はクラスメイトや先生に認めてほしかった、褒めてほしかったんだと思う。漢字のドリルに何時間もかけ、宿題以外のページも仕上げていった。正座して字を書く彼の少し肩の上がった背中を、私はキッチンから見ていた。それは前の学校では「すごい!」と褒められることだ。

しかし、次の日ドリルを見た先生は、乱雑に消しゴムで宿題以外のページの字を消し「もう。こんな面倒なことしないで」と皆の前で言って、投げてドリルを返してきたそうだ。

電話で先生に尋ねると、授業で書き順や読み方を勉強してから、自宅でドリルをする、という漢字の学習の流れが乱れるので、指導させていただきました、と少し得意そうにも聞こえる声で答えた。

とめ、はらいも生真面目に書いたドリルの字が半分ほど消されていた。ページはぐちゃぐちゃだ。先生が消しゴムを使ったときによれてしまったのだろう。消しカスが挟まっていて、ポロポロと落ちた。胸がつまった。

このドリルの出来事はただのきっかけだったとは思う。きっとほかにも私の知らない色んなことがあったのだろう。

でもこのことは、りょーたを失うかもしれないと感じた記憶とないまぜになって忘れられない。必死に握っても反応せず、だらんとたれた手の重さ。

私のその恐怖を、知らないでしょう、先生。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集