【観音霊験記 西国巡礼】第一番紀州那智山/和泉式部

『観音霊験記 西国巡礼第一番紀州那智山 和泉式部』

観音霊験記 西國順禮 第一番 紀州那智山
ふたらくや 岸うつ波は 三熊野の
那智のお山に ひゞく滝つ瀬
※ 「ふたらく」は、補陀洛、補陀落。観音菩薩が降臨する霊場のこと。

和泉式部
西國三十三番は御代々の天子も御崇敬ありて、行幸もありしなりに、後白河院は三十三度御参詣遊ばさる。此時、権現の御神歌に
〽 うろよりも むろに入ぬる 道なれば
是ぞ佛の 御國なるべき と
※ 「うろ」は、有漏。仏語、煩悩のある状態。
※ 「むろ」は、無漏。仏語、煩悩のないこと。

此外に一首の灵哥あり。和泉式部参詣のおりふし、麓にて障のありければ
〽 晴やらぬ 身のうき雲の たなびきて
月のさはりと なるぞかなしき と詠じて伏たる。
其夜の夢に
〽 もとよりも ちりにまじはる 神なれば
月のさはりは 何かくるしき と
権現の御返歌あるゆへに、心よく参詣を遂。
ふしぎの灵験は文學をはじめ、挙てかぞへ難し。委くは予が観世音畧傳図繪に出せり。
※ 「灵哥」は、霊歌。
※ 「障」は、ここでは月経のこと。
※ 「畧傳」は、略伝。
※ 「図繪」は、図絵。
※ 参考:『西国三拾三所観音霊験記図会』(国立公文書館デジタルアーカイブ)
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