【蔦谷重三郎×喜多川歌麿】画本虫ゑらみ③松虫×蛍/ばつた×蟷螂など
江戸時代後期に出版された喜多川歌麿の絵に狂歌をつけた歌合せです。序文は狂歌師の宿屋飯盛(石川六樹園)と思われます。出版は蔦谷重三郎。
描かれている植物の名前を見出しにしました。この植物かな?と思うものを記載しましたので間違っているかもしれません。どうぞご容赦くださいね。🌿
🪲
稗と蓼

松虫 土師掻安
蚊屋つりて 人まつ虫は なくはかり
なにおもしろき ねところしやない
蛍 酒楽齋瀧麿
佐保川の 水も汲ます 身は蛍
中よしのはの くされゑんとて
※ 「土師掻安」は、はじのかきやす。参考:『狂歌万載集才蔵集選』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「なくはかり」は、鳴くばかり。
※ 「ねところしやない」は、寝所じゃない でしょうか。
※ 「酒楽斎瀧麿」は、しゅらくさいたきまろ。吉野庵酒楽。参考:『江戸文学研究』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「佐保川」は、奈良の春日山の石切峠から流れる川。江戸時代には「南都八景」のひとつに「佐保川の蛍」が挙げられていました。
※ 稗 『本草図譜38(ひえ)(いぬひえ)(おほあは)(もちあは)(くろあは)(もろあは)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「蓼」 『本草図譜17(たで)(みずたで)(はなたで)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
甜瓜と大豆と豇豆

はつた 意気躬黒成
おさへたる はつたと思ふ 待夜半も
たゝつま戸のみ きち/\となく
蟷螂 浅草市人
くつかへる 心としらて かま首を
あけて蟷螂の おのはかりまつ
※ 「はつた」は、飛蝗。参考:『大日本国語辞典 巻4』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「つま戸」は、妻戸。
※ 「くつかへる心としらて」は、覆る心と知らで でしょうか。
※ 「あけて」は、上げて。
※ 「蟷螂」は、かまきりのこと。
※ 豇豆 『本草図譜 40』(国立国会図書館デジタルコレクション)
玉蜀黍

ひくらし 百喜齋森角
人目よし ちよつとこのまに 抱ついて
せはしなきねは ひくらしかそも
くも つふり光
ふんとしを しりよりさけて ねやの巣へ
よはひかゝれる くものふるまひ
※ 「ひくらし」は、蜩。
※ 「つふり光」は、頭光。つむりのひかる。狂歌四天王のひとり。参考:『名人逸話』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「ふんとし」は、褌。
※ 「しりよりさけて」は、尻より下げて。
※ 「ねや」は、寝屋、閨。
※ 「よはひ」は、夜這い と思われます。
撫子と桔梗

赤蜻蛉 朱楽管江
しのふより 声こそたてね 赤蜻蛉
をのかおもひに 痩ひこけても
いなこ 軒端杉丸
露はかり 草のたもとを ひきみれは
いなこのいなと 飛のくそうき
※ 「赤蜻蛉」は、赤とんぼ。
※ 「朱楽管江」は、あけらかんこう。
※ 「しのふより」は、忍ぶより。
※ 「をのかおもひ」は、己が思い。
※ 「痩ひこけても」は、痩いこけても。恋との掛け言葉になっています。
※ 「いなこ」は、稲子。
※ 「露はかり」は、露ばかり。
露草

虵 千枝鼻元
かきおくる 文もとくろを まき帋に
つもる思ひの たけはなかむし
とかけ 問屋酒舩
きらはるゝ うらみや色も 青とかけ
葛葉ならねと 這まとふらん
※ 「虵」は、蛇。
※ 「とくろ」は、とぐろ。
※ 「まき帋」は、巻紙。「まき」は、とぐろを巻くと巻紙の掛け言葉になっています。
※ 「なかむし」は、長虫。蛇のこと。巻紙の長さと長虫の掛け言葉になっています。
※ 「とかけ」は、蜥蜴。
※ 「問屋酒舩」は、といやのさかふね。参考:『新撰和漢書画一覧 続』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「青とかけ」は、青蜥蜴。
※ 「葛葉」は、恨みにかかる枕詞。参考:『大日本国語辞典 巻2』(国立国会図書館デジタルコレクション)
※ 「這まとふ」は、這まどう。
※ 参考:『稀籍考(絵本 蟲撰)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖
