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【職人図鑑】彩画職人部類(1)冠(かむり)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『彩画職人部類 上

冠 かむり
それ冠の濫觴ハシマリは、人皇第四の帝 懿徳天皇、天地人の三冠を制たまひ、無後 天武の帝の御時に至て、男女はじめて髪を結ふ事をなす。是より、漆塗の冠を用ひて、禮儀定れり。今の紗冠・烏帽子もこゝに起源といふ。

※ 「濫觴ハシマリ」は、物事の起こり、始まりのこと。揚子江のような大河も源はさかずきうかべるほどの細流にすぎないという孔子の言葉に由来するそうです。濫觴らんしょう
※ 「懿徳天皇」は、第四代天皇。安寧天皇の第二皇子。大日本彦耜友尊おおやまとひこすきとものみこと
※ 「無後」は、誤読しているかもしれません。
※ 「天武天皇」は、第四十代天皇。飛鳥浄御原宮あすかのきよみはらのみやで即位し、八色やくさかばねの制定や国史の編纂など、律令制を整備されました。
※ 「紗冠」は、漆紗冠しつしゃかんのこと。紗に漆を施した冠。
※ 「うす額」は、薄額うすひたい
※ 「透ひたひ」は、透額。

又、文武帝の頃より、厚額、うす額、透額を制す。透ひたひは、其頂に纎月のごとく羅をもて張る。世に月額ともいへり。十五歳以上の童子、爰に壮気を浅させん事を謀ると、かしこくも君が代のおんめぐみ仰ぐも恐あり、百官儀々として是をいたゞく。

※ 「文武天皇」は、第四十二代天皇。藤原宮ふじわらのみやで即位し、大宝律令の制定など、律令体制を確立されました。
※ 「纎月」は、三日月みかづきのこと。纎月せんげつ。参考:『作文必要記事論説文例 巻之上(纎月)』
※ 「羅」は、薄い絹織物のこと。
※ 「月額」は、月代つきしろのこと。昔、男子が冠の下の髪(前髪の生えぎわ)を半月型に剃りあげたこと。月額つきびたい。参考:『大日本国語辞典 巻3(つきしろ)(つきびたひ)』
※ 「爰に」は、ここに。
※ 「壮気」は、若々しく盛んな意気のこと。
※ 「浅させん事」は、勢いが失せないようにの意。せる、せる。

烏帽子は類品算ふるにいとまなし。中にも風折ゑほし、在五中将業平をはじめとすといふ。

※ 「在五中将業平」は、在原業平ありわらのなりひらのこと。平安時代初期の歌人。


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漆紗冠しつしゃかんについて

天武天皇十一年 一千三百四十二年
男女始て髪を結び、漆紗冠を着する制あり。因て無位の人は皆、紗冠を戴く。爾来、冠帽を製するに漆を用ゐること歳月に多し。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『工芸志料 増訂
聖徳太子と二王子

太子は漆紗しつしや冠を被り、朱華はねず色のきぬを召し、白袴に、烏皮履くろかはのくつを穿かれ、笏を執り給ふ御姿である。漆紗冠と朱華色の服色とは天武朝の制定にかゝる。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『歴世服飾図説 上
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『万葉集全釈 第5冊
天武天皇十三年制定諸臣文官
浅紫(大小紫冠)朝服図
文武天皇大寶元年制定諸臣文官
赤紫(二位三位)朝服図


風折烏帽子かざおりえぼしについて

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『和漢三才図会 上之巻
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『古今百風吾妻余波 第1篇
出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本歴史参考図



※ 参考 漆紗冠:『黒川真頼全集 第4歴史編・風俗編(漆沙冠)』『黒川真頼全集 第3美術篇・工芸篇(漆冠)』『中学日本史 上(風俗の一変)』『日本帝国美術略史稿(聖徳太子御影)』『黒川真頼全集 第5制度篇・考証篇(御冠沿革考)』『美術辞典(かんむり)』『百家随筆 第1(小野道風像冠服考)』『日本服飾史書誌情報(奈良朝及その前後二)』『日本染織商工史 上巻(大化の新政と織物司)』『日本風俗画大成 第9』『日本歴史教授用備考(聖徳太子御畫像)』『尋常小学国史の活用 第2分冊(聖徳太子)』『日本社会事彙 上(風折烏帽子)』


筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。
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