見出し画像

【語源】日本釈名 (42) 虚字(一・二・三・四・十・百・千など)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本釈名 3巻 [3]

「とむ」とは「つむ」の意。「タカラをつむ」なり。

「けだし」とは「気出イキダし」と云意。發語のコトバなる故、「いきをはじめて出す」意也。此外の説、用へからず。又、「けだし」とは「器のふた」と云意といへり。古書におゐていまだみず。俗のみだりに云出せるひが事なるべし。

※ 「ひが事」は、僻事ひがごと。間違っていること。

「むしろ」は「もし」の意也。「むしろ」とは「ねかふ」ことば也と、字書にあり。「もしかくあらば」といふ意也。「ろ」はつけ字也。「神ろぎ」「神ろみ」の「ろ」の字のごとし。「たうとき事」を古語に「たうときろ」ともいへり。『萬葉』に見えたり。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本釈名 3巻 [3]

ホトンド

「ほとり」也。「ちかき」意。下の「と」はつけ字なり。「所」の意歟。

※ 「歟」は、ここでは疑問の意。か。

あやめ

文理モンリ」也。「あや」は「文」也。「め」は「理」也。すちめのめ也。あやめもしらずなど、古哥にもよめり。

※ 参考:『秋田叢書 第8巻』(国立国会図書館デジタルコレクション)

ある

ナル」の轉語也。「ナシ」は「むなし」よりいづ。

※ 「轉語」は、転語。

「かるがゆへ」とは「しかるがゆへ」なり。上を略せり。又、「カルガユヘ」と云事を『日本紀』に「かれ」と云。其故は、「るが」のかへしは「ら」也。「ゆへ」のカヘしは「ゑ」也。右の二音を合すれば「らゑ」也。「らゑ」の反しは「れ」也。故に「かれ」とよむ、二合かへし也。

又、『源氏物語』に「故」と云べきを「け」といへるは、「かれ」のカヘシは「け」なり。今に遠鄙エンヒの人は。、「故」といはずして「け」と云。

テイレハ

「といへれは」と云意を略せり。もろこしの書の内天子の勅詔チヨクゼウ臣下の奏書に多く「者」の字を用ゆ。日本にて「ていれは」と訓ず。上の文をかけたる字也。近代日本の俗、まなびそこなひて、下の句の上におけるあり。あやまりなるべし。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本釈名 3巻 [3]

ヒトゴロフ

「ひ」とは「ひとしき」也。「ころふ」は「クラブル」也。「くらぶ」と「ころべ」と通ず。「物をひとしくくらへる」を云。

「そも/\」とは「さくも/\」と云を略して、「さ」と「そ」と通音なれば、唇音にてとなへよきまゝに「そも/\」と云なり。「そも」とばかりいへば、語勢ゴセイみじかくて、其意のびさるゆへに「そも/\」と云。からの文に「あく/\」など同じ事をかさねていへる意也。「抑」の字、からの文には發語のことばにも、上を轉じて語をカヘすことばにも用ゆ。『論語』に「求タル 之ヲ 抑 与タル 是ヲ」といへる。「抑」の字は、● ス 語ヲ ことばなり。

孟子に「抑王ヲコス 甲兵ヲ 」とは發語也。日本には、もはら發端の言に用ゆ。

イマタ

「い」は發端の詞。『直指抄』に出たり。「待」よりいでたることばなり。

ハシメ

「はし」は「端」也。物のはじめは「はし」にあり。「め」はうつほ字也。

※ 「うつほ字」は、空字。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本釈名 3巻 [3]

ツイテ

「つい」は「つぎ」也。「て」は「出」也。「つぎ/\に出る」意也。

キタナシ

 キタ也。段々分明なるはよき事なり。無キタはあしき事也。『直指抄』

※ 参考:『俚言集覧 上巻 明治32 あ−け 増補』(国立国会図書館デジタルコレクション)

「ひと」は「人」也。萬物の内、人を第一とす。故に「一」を「ひと」ゝ訓ず。「つ」はうつほ字なり。

『直指抄』に精要記を引て曰、「ふたつ」とは「器のふた」なり。「つ」はうつほ字也。はこのふたをひらけば、ふたつとなる。

※ 参考:『広文庫 第17冊』(国立国会図書館デジタルコレクション)

又云、「三」は「身」也。天地と人身と合て、ナル 三才ト 也。

又云、「世」なり。今案、是、「地」「人」「三身」そなはりて後は「世」あり。故、「三」の後を「よ」と云。

「と」は「外」也。「九」は数のキハマリにて、「十」は数の外也。「を」は空字也。又、「とをる」意か。一より十にいたるは「とをる」也。

廿ハタチ

「はた」は「ふた」也。「ふ」と「は」と通ず。「ち」は十年也。「とし」の反は「ち」也。「三十ミソチ」「四十ヨソチ」など云。「ち」の字の如し。「ふたととし」也。

モゝ

物々モノ/\かずおほき」意。又、「もろ/\」を略せり。

チゞ

「ちゞみよる」意。数のおほきを一にちゞめて千とする故なり。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『日本釈名 3巻 [3]

「よろ」はよる多くの数、一による也。「つ」はやすめ字なり。

モトロゲ

「まだら」なり。「またら」と「もとろ」の三字、音相通ず。黒白相まじはるを云。「け」はつれ字なり。「やはらけ」などの「け」と同じ。

雪のハダレ

「まだら」也。音相通ず。雪のむらきへして、またらなるなり。

アマサヘ

「あまりてさへ」也。

なゝめ十の内、五六は對してたうけ也。七よりさがるゆへに、くだりておつるを「なゝめ」といふ。日の西へかたふくをも、日西になゝめ也と云。いまだ不 斜とは、さかんなるを云。

ワカレ

「我彼」なり。「われかれとなる」は「わかるゝ」なり。

まだら

黒白黄赤などまじれるを云。梵語に雜色を曼荼羅マンダラといふ也。『飜譯名義』に見えたり。「まだら」は梵語を用て和語とする也。

※ 「飜譯名義」は、宋代の梵漢辞典『翻訳ほんやく名義集みょうぎしゅう』のこと。

シカウシテ

「しかくして」也。「しか」は「如此」也。「如此して」と云意。上につらなることば也。「しかも」は「しかれとも」也。中を略せり。「しかも」は上を轉ずるコトバ也。

※ 「轉ずる」は、転ずる。



筆者注 ●は解読できなかった文字、□は欠字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖